突然始まる親の介護と仕事マネジメント ～会社員が知っておきたい、職場コミュニケーションの上手なとり方を考えます～（後半）

2024年10月25日、リクシスは、第21回『全国ビジネスケアラー会議』を開催いたしました。
これから高齢社会がより一層加速し、仕事と介護の両立が当たり前の時代がやってきます。本オンラインセミナーは、高齢化の流れが加速する日本社会において、現役世代として働きつつ、同時にご家族の介護にも携わっている「ビジネスケアラー」の方々とその予備軍となる皆様に向けたセミナーです。

今回のテーマは「職場でのコミュニケーション」。

ビジネスケアラー予備軍の皆さんから「介護に対する理解に乏しい上司や同僚と接する場合、どうすればいいでしょうか」というような、職場でのコミュニケーションに関する不安をよくお聞きします。
介護が始まった時にどのように話せばいいかわからず、介護離職を決断してしまう方も少なくありません。
また、部下をお持ちのマネジメント層の方や人事の方から、ビジネスケアラーにどんなサポートが必要なのかわからないというご相談をいただくこともあります。

働きながら介護を続けていくことを考えた場合、職場とのコミュニケーションは非常に大切なものです。
介護をしている本人の個人的な問題ではなく、企業全体・社会全体で取り組んでいくべき課題になっています。
今回は、同時期にご両親の介護を約3年間継続されながらも仕事と両立されてきた水林さんから、ご自身の経験をお話しいただくとともに、チェンジウェーブグループ リクシス チーフケアオフィサーの木場と職場でのコミュニケーションの仕方などもトークしていただきました。

この記事では、

• 介護をしている家族へ周りができることは何か
• ビジネスケアラーが上司や同僚に求めることとは

などのテーマでまとめています。

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①突然始まる親の介護と仕事マネジメント ～会社員が知っておきたい、職場コミュニケーションの上手なとり方を考えます～（前半）

②突然始まる親の介護と仕事マネジメント ～会社員が知っておきたい、職場コミュニケーションの上手なとり方を考えます～（後半）⇐このページのテーマ
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登壇者プロフィール

水林 誠司（みずばやし・せいじ）
株式会社日立ソリューションズ
ネットワークセキュリティサービス部 グループマネージャー　

入社以来、ネットワーク(NW)とセキュリティを中心としたインフラSI業務に従事。現在はサイバーレジリエンスソリューションの拡販と、NWインフラやSASE等クラウドセキュリティ構築案件の提案からPM業務を推進中。

木場猛（こば・たける）
株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO（チーフケアオフィサー）
介護福祉士、介護支援専門員

ヘルパー歴22年以上 介護福祉士・ケアマネージャーとして延べ2,000組以上のご家族を担当。
東京大学文学部卒業。
高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ作成や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。
3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。
セミナー受講者数、延べ約2万人超。
【新書】「仕事は辞めない！働く×介護　両立の教科書」（日経クロスウーマン）

家族の介護の負担を減らす方法とは

木場：「事前にいただいた質問についてもご紹介させていただければと思います」

事前にいただいた質問①
要介護4の父を自宅で24時間サポートしている母が疲弊しています。
母のメンタルケアをしたいと思っていますが、
私自身、仕事も子供もあるので実家で手伝うのは難しいです。
何か少しでも母の心労を減らせる方法はないかと探しています。

【とうとう介護が始まった、そんな方へ】「これだけはやっちゃいけない」8年半の介護奮闘生活で気づいた、たったひとつのこと

木場：「介護している人の気持ちっていうので、他の回でお話しいただいた松浦様の例をご紹介させてください。

松浦様もご自身でお母様の介護をされたという方です。
同居していたので最初は自分がやればいいかなと思っていたのですが、少しずつトラブルの範囲が大きくなって“茹でガエル状態”になっていたとのこと。自分では『まだ大丈夫かな』『まだ頑張れる』と思いながら、気づいたら周りからも危ないと言われるような状況になっていたそうです。
自分では危ない状況になっているのに気づかないことがあります。松浦様の場合、最終的には周りの方がケアマネさんや地域支援包括センターに伝えてくれました。
そんな風に「アラートを上げる機能」は助けになるかなと思い、例としてあげさせていただきました。

水林さんが実際に介護なさっている時は、周りの人にやってもらって助かったということはありましたか？」

水林さん ：「私の場合は急に大変になったというケースなので、少し状況が違うかなと思うのですが、介護の専門職の方にはいつも助けていただいてます。

特に、母が倒れた時に入院した病院のソーシャルワーカーさんには感謝しかないです。
最初は介護の在り方や日本の医療の仕組みについて知識ゼロだったので、すべて教えていただいて自分の中で腹落ちして行動することができました。
自分で勝手に判断したり、親族の意見で判断するのではなく、プロの意見を聞くことができたのが良かったと思っています。
母がどう思っていたのかはわからないですし、ベストかどうかもわからないのですが、ベターな道は選ぶことができたのではないかなと」

子育てと介護が重なった時に何が1番大変だったか

木場：「水林さんの介護についても、質問をいただいています。子育てと介護が重なった時に、何が1番大変でしたか？」

水林さん ：「介護ではなくて病気の大変さかなと思うのですが、長い期間をかけてだんだん悪くなっていくものに慣れていないというのはありました。子育てはある程度期間が分かっていて、だんだんポジティブになっていくことがほとんどですから。

母が急に倒れて、気持ち的には医療を続けていけばだんだん良くなっていくと思いたいのですが、それが絶望的になっていく。事実なので受け止めなければならないのですが、抗おうとする気持ちがあって難しかったです。
そういう部分を相談員さん（メディカルソーシャルワーカー）に相談していました。「そうじゃなくて直したいんだ」という気持ちを何度も話して、寄り添っていただいたと感謝しています」

木場：「その時の気持ちを聞くことができて、この質問をして良かったなと思いました。
自分の両親の老いを受け入れるのが僕自身も難しいことだと実感していたので、水林さんも同じように抱えていることがあったのかと聞けて楽になりました。ありがとうございます。」

ビジネスケアラーは「休みたい」と思っているわけではない

木場：「職場のコミュニケーションについてもご質問をいただいています」

事前にいただいた質問②
会社内で上司に介護という言葉を出すと「自由に休みをとってください」と言われ、具体的な話をすると「いつくらいに施設に入れるつもりか」聞かれる。
「介護」に対する認識のずれ・誤解を感じます。

木場：「ビジネスケアラー当事者に聞いた『介護と仕事の望ましい関係はどれですか？』というアンケートがあるのですが、80%以上の方が仕事も頑張りたいと答えています。
ですが、管理職の方に『介護のために連続休暇を取る場合の考え』について聞くと、36.6%が介護に専念すべきと考えている。ここにもズレがありますよね。

ビジネスケアラーは休みたいと思っているわけではなく、仕事に影響が出ないように乗り切りたいと思っている、介護があっても自分の生活を成り立たせたいというのが前提ということを、周りの人も理解してほしいと思っています」

水林さん ：「2つの側面がありますよね。
まず上司の方が『休んでいいよ』と言うのは、悪気があるわけではなく親切心で、愛を持って言ってくれていることかと思います。私も母が倒れた時は休まざるを得ない状況でしたので、休ませてもらって良かったです。

ただ一方で、介護が中長期で続いていく場合は、休んでいいと言われると辞めないといけないのかなという誤解になってしまうこともありますよね。
介護を続けるためには、現役世代が働き続けないと乗り切れないということが、上司の方含め社会的にあまりに伝わっていない部分なのかなと思いました。

当社でもこういった取り組みは行っていきますし、みんなでちょっとずつ広げていって社会的な意識が変わっていくといいなと思っています。
そういうところにちょっとでも役に立てたらいいなと思って、今日も話しているというところもあります。

自分もマネージャーとして気をつけなければいけないなと思っているのですが、介護をしながら仕事ができるスキームを構築する為にお休みが必要なので、その時は休んでいい。その間は少し生産性が下がってしまうかもしれないけど、自分で働く力を取り戻してから、介護をしながら働き続けるようにするということが大事なのかなと思っています」

ビジネスケアラーが上司や同僚に求めていること

事前にいただいた質問③
介護しながら職場メンバーとの円滑なコミュニケーションの取り方について教えてほしいです。
「ビジネスケアラーを会社でサポートする」こと自体が中小企業ではまだ発想にもない状態。
介護は突然やってきてしまい、ビジネスケアラーがメンタル不調に陥るケースも多くありますが、日頃からどのようなコミュニケーションを取っていくべきか考えるヒントを頂きたいです。

木場：「日頃からどうコミュニケーションをとるか、介護になった時どう話すのかというところ、いくつかヒントになりそうな事例を出したいと思います」

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介護のプロでさえ感じる、両立の難しさと乗り越え方　～介護家族に寄り添う支援サービスの活用法～（後編）

木場：「ツクイの原様は、ご自身が介護の専門職なので自分でやろうと決めたのですが、常に親のことが頭から離れず、周りに迷惑をかけていると思って退職決断したそうです。
自分がきついっていうことを周りに言えなくて退職届を出した時、上司が止めてくれたので、その後会社のみんなと話して進めることができたとのこと。
難しいですが、まずは周りの人に話すこと、コミュニケーションをとることが大事だとおっしゃっていました」

働く世代のキャリア形成と親の介護〜仕事を諦めない遠距離介護の実践方法とは〜（前編）

働く世代のキャリア形成と親の介護〜仕事を諦めない遠距離介護の実践方法とは〜（後編）

木場：「もう1名、電通の山中様も、やはり一度辞めると伝えたそうです。その時に当時の上司が『切迫した状況で物事を判断してはいけない』という言い方で止めてくれた。完璧な言い方で止めていらっしゃるなと思いました。

その後も、キャリアについての考え方をよく聞いてくれたそうです。それが助かったと。
このお話を聞いた時、ビジネスケアラーは、介護についてアドバイスが欲しいわけではなく、職場での状況やキャリアについて目を向けて欲しいんだなと思いました」

水林さん ：「自分のチームのメンバーにビジネスケアラーがいるわけではないので想像になってしまいますが、ベースの考え方としては辞めない方がいいんですよね。
でも、あくまで当人の人生だから『どうしたいんだ？』というところをまずは聞くっていうのが本当に大事なことなのかなと思います」

木場：「こういう話を、何か困ったときだけじゃなくするのは、どうしたらいいでしょうか？」

水林さん ：「今リモートワークが増えている中で、コミュニケーションの重要性を再認識している企業が増えていますよね。仕事の話以外のコミュニケーションをとっていくにはどうするかということは、問題として認識されているので、あとはどう取り組むかだけかなと思います。

当社ではTeamsの中でいくつかコミュニティを作っているのですが、その中に介護も作っていて、大人気のコミュニティになっています。
『今こういう状況だよ』とか『こういうサービス使ってみたよ』とかを話しているのですが、もしまだやっていないようであれば、一度立ち上げてみても良いかと思います」

参加者の皆さんへのメッセージ

私の事例をお話しさせていただいて、それがどれだけ皆さんのお役に立ったのかなっていうのがちょっと心配ではありますが、いくつかの気づきがあれば良かったなと思います。
私も、母は残念ながら昨年亡くなってしまいましたが、父の介護を続けている中で、これからどんどん悩みが生まれてくるでしょう。
今、日本が超高齢化社会を迎えるという中で、私も勉強しながら自分の人生・父の人生・家族の人生が幸せになるように頑張っていきたいと思いますので、皆さんも一緒に頑張っていきましょう。

この記事の監修者

サポナビ編集部