人生100年時代と言われる現代は、誰もが認知症と生きる時代です。
今生まれた人の1/3が99歳まで生き、95歳以上になると79.5%が認知症になるといわれています。
最新の研究では、各年齢ステージにおいてどのような要因が認知症の発症率に影響するかが明らかになっていますが、認知症の発症リスクを未然に下げられる確率は35%程度です。
認知症の発症を完全に予防することはできません。
誰もが認知症と生きるこの時代では、認知症にならないように、というよりも、認知症になった人も自分らしく生きられるような暮らしを目指して本人も家族や周囲の人も意識を変えていく必要があるのでしょう。
一足先に認知症になって日々を暮らしている方々が、認知症と診断された人がこれからをよりよく暮らしていくヒントにしてほしい、と願って作られたガイドがあります。ご参考までに。
「本人にとってのよりよい暮らしガイド 一足先に認知症になった私たちからあなたへ」(平成30年 東京都健康長寿医療センター)
とはいえ、できれば認知症にならずに暮らしていきたいという高齢の方のや、高齢の親にできるだけ長く元気でいてほしいというご家族の思いは否定できるものではありません。
今回は、高齢のご家族の認知症予防・重度化防止のために有効とされているサービスをご紹介します。
各年代ステージにおける認知症発症率を左右する因子の図からも分かる通り、予防のために気を付けるべき要因は年代により異なります。
高齢期においては、喫煙習慣や糖尿病、運動不足やうつ、社会的孤立が発症リスクを増加させる要因です。
こういったリスク要因への対処として、中年期からの生活習慣病予防に加えて、適度な運動、バランスの良い食事、知的活動の継続、積極的な他者との交流が 高齢期の認知症予防に有効とされています。
特別なことではなく、健康増進のために当たり前に行うべき行動が認知症予防に向けた取組みになるのです。
長寿科学振興財団がまとめた資料では、認知症の予防効果が期待される日常生活の因子として、以下の項目が例示されています。
暗算、漢字の書き取り、本の朗読、日記を書くことなどで記憶力は鍛えられます。
また、囲碁や将棋、麻雀など、誰かと共に行うゲームも良いとされています。こういった対人ゲームは、相手の表情を読んでコミュニケーションを取ったり、手順を先読みしたりすることがあるため、一人で行うもの以上に高度な知的刺激が得られます。それだけでなく、駒を動かすような細かな手作業も含まれることが認知症予防に良い点の一つです。
URL | https://www.kumon-lt.co.jp/ |
内容 | 認知機能維持改善、認知症予防のために介護施設や介護予防教室で取り入れられている非薬物療法 |
URL | https://www.nintendo.co.jp/switch/as3ma/ |
内容 | 東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授監修の脳トレゲームソフト。 指やタッチペンを使った様々なタイプの脳トレを楽しんで継続できる仕掛けが多く含まれ、オンラインの脳トレ大会でトレーニングの成果を発揮することも可能。 |
「脳のはたらきに良い」ものとしていくつかの栄養素が注目されてきましたが、現時点では単一の栄養素の効果よりも、バランスよく多様な食品を摂取することが認知機能低下を防ぐということが指摘されています。
高齢期の食事や栄養に関して気をつけなければならないのは認知症予防だけではありません。健康を維持するための栄養の基本と、しっかりと栄養を摂るために利用できるサービスについてはこちらにまとめています。
高齢者の健康維持のために利用できるサービス 栄養編
運動は様々な研究で認知症発症のリスクを減らし、認知機能の低下を防ぐ最も重要な要素とされています。
特に、有酸素運動の実施とアルツハイマー病発症予防との関連は、縦断研究により多くの知見が報告されています。
単一の運動内容よりも、ウォーキング、サイクリング、水泳、ゴルフなど複数の運動を組み合わせて行うほうが認知症の予防効果が高いことも明らかになっています。
URL | https://www.ncgg.go.jp/hospital/kenshu/kenshu/27-4.html |
内容 | 認知症予防施策として多くの介護施設や認知症予防教室で取り入れられているトレーニング方法 簡単な計算などの認知機能トレーニングと運動を組み合わせたエクササイズを行う |
ご高齢の方が運動を継続するために利用できるサービスの一覧はこちら。
社会的孤立は高齢期の認知症発症リスクのひとつに挙げられています。
また、もう一つのリスク要因である高齢者うつも、社会的役割が小さくなっていくことが原因の一つです。
ボランティア活動などで新たな役割を持ってもらうことや、個々人の趣味を生かして他者との交流を促すこと、家族のコミュニケーションを増やすことが、社会的孤立への対処として有効です。
高齢者の社会参加を促し、継続してもらうために利用できるサービスの一覧はこちら。
(参考)
公益財団法人長寿科学振興財団 「認知症の予防とケア」2019
https://www.tyojyu.or.jp/kankoubutsu/gyoseki/ninchisho-yobo-care/index.html
厚生労働省「認知症予防・支援マニュアル(改訂版)」2009
https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-1h_0001.pdf
記事監修者プロフィール
佐々木 淳(ささき・じゅん)医療法人社団悠翔会理事長・診療部長
社会福祉法人三井記念病院内科、消化器内科、東京大学医学部付属病院消化器内科等を経て、2006年に最初の在宅療養支援診療所を開設。2008年に医療法人社団悠翔会の理事長に就任。2021年より内閣府規制改革推進会議専門委員に任命される。現在は、日本全国に合計21のクリニックを展開して、約7000名の在宅患者へと24時間対応の在宅総合診療を行っている。
a.tamemoto