
「運動しなきゃいけないのはわかっている。でも続かない。」
この言葉に、少しでも心が動くなら、あなたは正常です。
だから始める。
でも、三日坊主で終わる。
ここで多くの人はこう考えます。
「自分は意志が弱いんだ」と。
違います。
問題は意志ではありません。
問題は“設計”です。
運動を始める理由の多くは「自分のため」です。
どれも正しい。
でも正しいからといって、強いとは限りません。
人の脳は、未来よりも現在を優先します。
10年後の健康より、今この瞬間の快適さを選びます。
それらは「今」感じられる報酬です。
一方で、運動の成果は遅れてやってきます。
報酬が遠い。
だから続かない。
ここで脳内物質の話を難しくする必要はありません。
大事なのはシンプルです。
人は“すぐ報われるもの”を選びやすい。
未来の自分のため、という動機は、理性的ではあっても、情動的には弱いのです。
さらに問題があります。
「やらなきゃ」という言葉です。
この言葉には、義務感が含まれています。
義務は重い。
義務は消耗する。
義務は逃げたくなる。
やらなきゃいけないことは、できれば後回しにしたくなる。
これは怠けではありません。
人間の自然な反応です。
だから運動を「義務」にしてしまった瞬間、継続の難易度は一気に上がります。
では、どうすればいいのか。
答えは、動機をひっくり返すことです。
運動を「自己管理」から「貢献」に変える。
たとえば——
視点を少し外に向ける。
すると、運動は自己満足ではなくなります。
誰かを支える土台になる。
人は、自分のためよりも、誰かのためのほうが力を発揮しやすい生き物です。
「役に立っている」という感覚は、派手ではありませんが、持続します。
一瞬の快楽ではなく、じわっとした充実感。
これが、継続を支える土台になります。
長寿社会において、身体は単なる見た目の問題ではありません。
健康は、家族の負担に直結します。
仕事のパフォーマンスに直結します。
社会全体の持続可能性にも影響します。
体を整えることは、実は社会的行為です。
だから運動は、未来への投資というより、「今の責任」に近い。
ただし、ここで再び義務に戻ってはいけません。
大事なのは、
「やらなきゃ」ではなく
「支え続けたい」
という感覚です。
義務ではなく、意志ある貢献。
この違いが大きいのです。
動機を変えても、設計が間違っていれば続きません。
多くの人がやってしまう失敗。
理想的ですが、失敗率が高い。
そして失敗は「できなかった」という記憶を残します。
この記憶が、自信を削ります。
「自分は続かない人間だ」というラベルを貼ってしまう。
だから逆をやります。
最低ラインを、笑ってしまうほど低くする。
目的は鍛えることではありません。
続けることです。
最低ラインは絶対に下回れない高さに設定する。
できたら、「今日もやった」とカウントする。
これだけです。
小さな成功体験は、想像以上に強力です。
人は「できた」という記憶を積み重ねると、自分に対する評価が変わります。
そして不思議なことに、1回やると、もう少しやりたくなる日が出てきます。
でも、それはおまけ。
やらなくてもいい。
最低ラインを守れれば合格。
ここが重要です。
整理するとこうなります。
続くかどうかは、気合いではありません。
構造です。
動機を外向きにし、目標を極端に低くする。
この組み合わせが、長期的な習慣を生みます。
よく「健康は自己投資だ」と言われます。
間違いではありません。
でも、それだけでは弱い。
健康は、関係性の維持でもあります。
家族との関係。
仕事との関係。
社会との関係。
未来との関係。
その関係を長く保つための土台が、身体です。
だから運動は、自分だけの問題ではない。
そう考えたとき、意味が変わります。
スクワット1回でもいい。
腕立て1回でもいい。
階段を1段だけ使うでもいい。
それは小さすぎる一歩かもしれません。
でも、その一歩が明日も続けば、それはもう習慣です。
習慣とは、劇的な変化ではなく、地味な反復です。
そして反復を支えるのは、設計です。
「やらなきゃ」ではなく
「支え続けたい」
その視点に変えた瞬間、運動は重さを失います。
あなたの最低ラインは、今日どれくらいにしますか?
そこからすべてが始まります。

佐々木 元勝(ささき・もとかつ)
理学療法士、元デイサービス管理者
新卒で理学療法士免許を取得してから約10年以上、介護現場に身を置き、現在までに介護される人・介護する家族さん達延べ3000人以上の方々と関わる。また、地域住民向けに「介護に関すること」「健康な体作り」等のセミナーを50回以上開催。介護や認知症をもっと身近に感じてもらうためのワークショップを開催している。自身の経験を元に電子書籍も2冊出版。
「超簡単 管理者・リーダーのための介護業務を整理する5つの方法」
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