
「早めに相談したほうがいいですよ」
そう言われることは、なんとなくわかっている。でも、心の中ではこう思っていませんか。

まだ介護は始まっていない。
親も一応、日常生活は送れている。
たしかに心配はあるけれど、“相談するほどのこと”なのかは微妙。
もっと大変な人が使う窓口なんじゃないか。
自分はまだその段階ではないんじゃないか。
この感覚、とても自然です。
実際、多くの40代・50代のビジネスパーソンが同じところで立ち止まります。
「困ってからでいいよね」
「何か起きたら考えよう」
でも、いざ何かが起きたときは、ほとんどの場合“急”です。
だからこそ大事なのは、“重くなる前の軽い相談”。
包括は、深刻な状況の人だけの場所ではありません。
むしろ、「なんとなく気になる」段階の人こそ対象です。
実際に多い相談は、驚くほど“軽い”ものです。
遠方で一人暮らしの親。 今は元気だけど、もし介護が始まったら何からやるのか知りたい。
最近少し物忘れが増えた気がする。 でも受診を嫌がりそう。どう切り出せばいい?
親が地域で孤立しないように、何か場はないか知りたい。
まだ制度も使っていない。
介護認定も受けていない。
でも、不安はある。
ここで一つ大事なことがあります。
相談とは、「助けを求めること」ではありません。
相談とは、「情報を手に入れて、自分の選択肢を増やすこと」です。
今すぐ何かを決める必要はありません。
ただ、状況を俯瞰してもらい、道筋を知るだけでも意味があります。
「でも準備って、何をするんですか?」
ここが一番イメージしにくいところですよね。
準備というと、書類を書いたり、制度を申請したり、親を説得したりすることを想像しがちです。
でも本当の準備は、もっと地味で、もっと静かなものです。
まずできるのは、「知ること」。
これを知っているだけで、いざというときの初動が変わります。
検索から始めるのか。
「あそこに電話すればいい」とわかっているのか。
その差は大きい。
そしてもう一つは、「自分の前提を整理すること」。
これは親の問題というより、自分の人生設計の整理です。
この整理があるだけで、支援体制を組むときにブレにくくなります。
多くの方が知らないのが、「介護=家族がやる」ではないということです。
地域にはすでに、たくさんの資源があります。
地域包括支援センターという総合相談窓口。
ケアマネージャー。
配食サービス。
見守りサービス。
通いの場や健康教室。
これらは、要介護になってから突然現れるわけではありません。
事前に知っておくことで、「全部自分で背負わなくていい」と気づけます。
準備とは、抱え込まないための情報収集でもあります。
仕事と介護の両立で一番つらいのは、「どちらも中途半端になる感覚」です。
だからこそ、早い段階で大切なのは、こう問いかけることです。
自分はどう働きたいのか。 キャリアをどう続けたいのか。
介護に合わせて仕事を変える、ではなく、
自分の働き方に合わせて介護体制を考える。
この視点を持てるかどうかで、その後の負担が変わります。
相談の場では、制度の説明だけではなく、こうした考え方の整理もできます。
「うちの親、絶対に他人を入れたがらないんです」
この声はとても多いです。
だからこそ、“始まってから”ではなく、“始まる前”が大事です。
いきなり介護サービスの話をすると拒否されやすい。
でも、健康教室や趣味の場ならどうでしょう。
いきなりケアマネージャーではなく、
まずは地域のイベントに顔を出す。
いきなり見守りではなく、
まずは家族での連絡頻度を増やす。
小さな外部接点をつくること。
これも立派な準備です。
包括に相談することは、「もう介護が始まります」と宣言することではありません。
ただ、自分の中のモヤモヤを言葉にしてみるだけ。
それだけで十分です。
何も起きていない今だからこそ、冷静に考えられる。
親とも感情的にならずに話せる。
自分のキャリアも守りながら整理できる。
相談は、問題の証明ではありません。
未来の自分をラクにするための、静かな一歩です。
「これって相談していいのかな」
そう思った瞬間が、ちょうどいいタイミングです。
抱え込まず、軽く聞いてみる。
それが、いちばん上手な包括の使い方です。

佐々木 元勝(ささき・もとかつ)
理学療法士、元デイサービス管理者
新卒で理学療法士免許を取得してから約10年以上、介護現場に身を置き、現在までに介護される人・介護する家族さん達延べ3000人以上の方々と関わる。また、地域住民向けに「介護に関すること」「健康な体作り」等のセミナーを50回以上開催。介護や認知症をもっと身近に感じてもらうためのワークショップを開催している。自身の経験を元に電子書籍も2冊出版。
「超簡単 管理者・リーダーのための介護業務を整理する5つの方法」
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