
味が極端に薄い。逆にやたらと濃い。
同じ料理が何日も続く。
親と久しぶりに一緒に食事をして、「なんか違うな」と感じたことはありませんか。
料理は、年齢とともに変化していく、認知力や記憶力といった脳の働きの変化が表れやすい行動です。
この記事では、その変化を見逃さずに捉えることで、介護の入り口に気づき、早めの準備につなげるためのポイントをご紹介します。
料理は日常生活に欠かせない家事のひとつですが、そこには想像以上にいくつもの工程が重なっています。
何を作るか考え、必要な食材を思い出し、買い物に行き、手順を組み立て、火加減を見ながら仕上げる。そして最後は片付けまで。
つまり、記憶や判断、段取り、そして安全への注意まで、さまざまな力が組み合わさって初めて成り立っています。
そのため、どこか一つに変化が起きると、料理全体に影響が出てきます。
その変化は、意外と日常の中に紛れて見えにくいものですが、以下のようないくつかのポイントに目を向けることで捉えることができます。
まず気づきやすいのが、買い物の内容です。
これは、「何を買うか覚えておく」「全体を見て判断する」といった力に変化が出ているサインです。
買い物は料理のスタート地点です。ここでつまずくと、料理の幅は自然と狭くなっていきます。
すると、食事の楽しみも少しずつ減っていくという悪循環が生まれてしまいます。
冷蔵庫の中は比較的確認しやすい場所でもあるので、なかなか帰省できない方も、一度は気にかけてみてほしいポイントです。
次に出てくるのが、調理そのものの変化です。
こうした変化は、「手順を覚えて実行する力」や「途中で確認する力」に影響が出ている可能性があります。
さらによく見ると、細かい動作にも変化が出ていることがあります。
こうした変化は、「何をどうするか」を頭の中で整理する力や、段取りを保つ力が少しずつ揺らいでいるサインです。
また、電子レンジや炊飯器など、これまで使えていた家電の操作に戸惑う様子が見えることもあります。
ボタンの押し方がわからなくなる、温めがうまくできない、といった場面です。
調理は、いくつものことを同時に進める、高度に複雑な作業です。
そのため脳の働きに少し変化があるだけで、一気にうまくいかない場面が出てくることがあります。
「あれ?」と思うような小さな違和感を、どうか見逃さないようにしてみてください。
見逃したくないのが、安全に関わる変化です。
こうした出来事が増えてきたときは、注意力や記憶の変化が影響していることがあります。
頻度が少なくても、「たまたま」で済ませずに対処を考えていくことが必要となります。
最後に、意外と見落とされやすいのが片付けです。
こうした変化は、「最後までやりきる力」や「生活の余力」が少しずつ減っているサインのことがあります。
料理は作るだけでなく、片付けまで含めて一連の作業です。
そのどこかが抜けていると、暮らし全体にも影響が出始める可能性があります。
料理の様子には、年齢とともに現れる変化のサインが、少しずつ、しかし確かに表れてきます。
こうした小さな違いに気づけると、早い段階で関わり方を考えることができます。
大切なのは、「できなくなったこと」を責めることではありません。
もしもこのようなサインに気付いたら、まずは地域包括支援センターに相談してください。
専門職から、やり方を変えたり負担を減らしたりするアイデアをもらうことで、今の生活を続けやすくすることができます。
介護は、ある日突然始まるものではなく、
暮らしの中のこうした小さな変化から始まっていくものです。
だからこそ、料理という日常の中にあるサインに目を向けることが、これからの準備につながっていきます。
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佐々木 元勝(ささき・もとかつ)
理学療法士、元デイサービス管理者
新卒で理学療法士免許を取得してから約10年以上、介護現場に身を置き、現在までに介護される人・介護する家族さん達延べ3000人以上の方々と関わる。また、地域住民向けに「介護に関すること」「健康な体作り」等のセミナーを50回以上開催。介護や認知症をもっと身近に感じてもらうためのワークショップを開催している。自身の経験を元に電子書籍も2冊出版。
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