
わかっちゃいるけど、できないよね。
「もっと親と話しておいた方がいい」
「元気なうちにいろいろ聞いておいた方がいい」
そう思いながら、気づけば数週間。
忙しさを理由に、つい後回しになってしまう。
ここで、ひとつ問いです。
親との信頼関係を築くなら、
“量”でしょうか? それとも“頻度”でしょうか?
長時間じっくり話すことなのか。
それとも短くてもこまめに接することなのか。
介護前の準備として考えるなら、答えははっきりしています。
大事なのは「量」よりも「頻度」です。
親とのコミュニケーションというと、
「ちゃんと時間をとらなきゃ」と思いがちです。
年に数回の帰省で、まとめてゆっくり話す。
それももちろん大切です。
でも、信頼関係という視点で見ると、
もっと効いてくるのは“接触の回数”です。
植物に水をあげるとき、
バケツいっぱいの水を一度にかけるより、
コップ一杯の水を毎日少しずつあげるほうが、根は安定します。
人間関係も同じです。
心理学には「単純接触効果」という考え方があります。
人は、接する回数が増えるほど、相手に安心感や親しみを感じやすくなるというものです。
長電話を年に数回より、
「元気?」の一言を週に一度。
この小さな積み重ねが、
じわじわと安心を育てていきます。
そしてこの“安心”こそが、
いざというときの土台になります。
介護の話は、デリケートです。
お金のこと。
住まいのこと。
認知症の不安。
施設という選択肢。
普段ほとんど連絡を取っていない状態で、
突然こうした話題を切り出すのは、とても難しい。
でも、日常的にやり取りがある関係なら、
「ちょっと聞いてみたいんだけど」と言いやすい。
親のほうも、
「この子は気にかけてくれている」と感じていれば、
本音を話しやすくなります。
制度の知識も大事です。
地域包括支援センターのことを知っているのも大事です。
でもその前に必要なのは、
“話せる関係”かどうか。
頻度は、その関係を静かにつくっていきます。
とはいえ、毎日電話するのは現実的ではありません。
大事なのは、無理なく続く形です。
たとえば、
「今日は寒いね」
「出張で○○に来てるよ」
「この前の体調どう?」
特別な話題はいりません。
写真を一枚送るのもいいでしょう。
ランチでも、空の写真でも、孫の様子でも。
ポイントは、
“用事があるときだけ連絡する関係”にしないこと。
相談のためだけに連絡が来ると、
親もどこか身構えます。
何でもないやり取りがあるからこそ、
大事な話も自然にできる。
スマホ一つで、十分です。
完璧な会話はいりません。
一言でいい。
コップ一杯の水でいいのです。
仕事と介護の両立は、突然始まります。
でも、信頼関係は突然はできません。
量を求めると、重くなります。
「ちゃんと話さなきゃ」と思うと、動けなくなります。
でも頻度なら、軽い。
今日、ひとこと。
今週、ひとつ写真。
それだけでいいのです。
親との信頼関係は「量」?それとも「頻度」?
もし迷ったら、
まずはコップ一杯の水を。
あなたのその一通が、
未来のあなたを助けてくれます。
佐々木 元勝(ささき・もとかつ)
理学療法士、元デイサービス管理者
新卒で理学療法士免許を取得してから約10年以上、介護現場に身を置き、現在までに介護される人・介護する家族さん達延べ3000人以上の方々と関わる。また、地域住民向けに「介護に関すること」「健康な体作り」等のセミナーを50回以上開催。介護や認知症をもっと身近に感じてもらうためのワークショップを開催している。自身の経験を元に電子書籍も2冊出版。
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