今日の相談テーマ
親に合う介護施設をどう探す?
仕事と介護との両立準備について役立つ情報を、具体的な相談事例を元に、知っておくべき知識をお届けします。
相談事例
一人暮らしの父が要介護になりました。ゆくゆくは施設かと考えていますが、どうやって良い施設を探したらいいのでしょうか。
介護プロこばさんの回答
施設探しのタイミングにより「良い施設」の条件は変わります。
ある程度元気なうちに入所する場合は本人の過ごしやすさを優先できますが、自宅での生活に限界が来てから入所する場合は、必要な医療・介護体制と家族の事情(急変時に駆け付けられる立地であるかなど)を優先して探すことになります。
施設探しのタイミング
施設を探す方法や方針は、入居するタイミングにより変わります。施設入居を検討する時の本人の状態により、「今の生活を続ける」難易度が異なるため、そのために必要なケアが変わるからです。
まずは施設入居のタイミングがいつになりそうかを考えてみましょう。
施設入居のタイミングは、まず大きく2つに分けて考えます。
身の回りのことは概ね自分でできるような段階(70代前後・要介護2以下程度の想定)で入居するのか、けがや病気などで急に悪くなったり、要介護3以上で室内でも身体介護が必要になったりして自宅での暮らしが難しくなってから入居を検討するのか、という2つの場合です。ちなみに、実際に施設入居する人の相場は、要介護3で家の中の移動やトイレに介助が必要になる程度、80代以上がほとんどで、認知症の診断が出ている方が大半です。
では、この2つのタイミングごとに施設探しの方法と方針をおおまかに考えてみます。
ある程度元気なうちに探す場合
身の回りのことがある程度できるような段階で施設を探す場合は、比較的お元気な状態で入居後の生活が続きます。そのため、費用や立地だけでなく、施設の雰囲気や、イベントなど楽しみがあるか、外出などの自由度があるか、といった「本人の過ごしやすさ」が大きなポイントになります。
要介護になる前(自立)から軽度の方向けの施設には以下のようなものがあります。ケアハウス(軽費老人ホーム)は所得制限があり、特養などの公的施設は介護度により制限がありますので、多くはサービス付き高齢者住宅や有料老人ホームなどの民間施設を検討することになるかと思います。
民間施設の利用を前提に早めに探したい場合は民間の施設紹介・仲介業者である「施設紹介センター」が最も情報を持っていますのでご相談ください。
※WEBで施設の情報を見るだけで決めるのは難しいと思いますので、必ず見学まで同行してくれる施設紹介センターに相談しましょう。実際に施設検討する際にはご本人の体調や時間の制限があり、そう多くの施設を見学することはできません。見学には必ず同行してもらい、多くの施設を見ている相談員の方に見るべきポイントを確認してください。
自宅での生活に限界がきてから探す場合
徐々に困りごとが増えて自宅での介護に限界を感じてから施設を検討する場合や、ケガや急病で急に入所先を探す場合、まずは必要な介護・医療体制が受けられるかどうかが重要です。
まず必要な介護・医療体制を洗い出し、その体制が整っているかで絞り込みましょう。
入居期間の制限がある場合もありますので、ここでの判断は、ご家族やご本人が情報収集して考える、というよりは、担当のケアマネージャーや病院の相談員などのプロに相談し、ある程度候補を絞ってもらうことになります。
次に検討するのが、ご家族の事情です。
介護度が高くなるとどうしても急変のリスクは高まります。状況が急変したときにはご家族が呼び出されることもありますので、その可能性を考慮して施設の場所を選ぶなど、本人だけでなくご家族の事情が優先順位の高い検討ポイントになります。
介護体制や立地などを踏まえて候補となる施設が狭まってきたら、その中でぜひご本人と施設の相性も確認してください。
施設か在宅かという2択ではない選択肢
最後に、施設か在宅かという2択ではない選択肢についてもご紹介しておきます。
ひとつは小規模多機能型居宅介護と呼ばれるサービスです。
小規模多機能型居宅介護は、認知症でも在宅生活を続けられる選択肢として作られた、自宅への訪問と施設への日中の通い、宿泊の3つのサービスを本院の状態に応じて組み合わせて利用できる月額定額の介護サービスです。訪問・通所・宿泊とサービス内容が変わっても、同じスタッフが対応できるので認知症の方でも安心です。
もう一つは、住み慣れた地元での暮らしを続けたい方向けのサービスであるグループホームです。グループホームは5~9人の少人数で共同生活を行うシェアハウスのようなもので、新しいものを覚えるのが難しい認知症の方が穏やかに暮らせるよう、住み慣れた地域で共同生活をしながら、自立した生活を営むための小規模施設です。
ご参考までに、小規模多機能型居宅介護やグループホームといった選択肢もあるということを覚えておいていただければと思います。
この記事の監修者
木場 猛(こば・たける) 株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー)
介護福祉士 介護支援専門員 東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 国内ビジネスケアラーデータ取得数最多の仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ監修や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。 3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。
著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』
詳細はこちら>>