
買い物は、活気のある生活を保つために特に重要な行為のひとつです。
食べるものを選び、日用品をそろえ、暮らしを整える。
家の中の環境も、自分の気分も、買い物を基軸に始まると言ってもいいかもしれません。
そのため、買い物の様子が変わったら要注意。介護の一歩手前の状態かもしれません。
たとえばこんな変化です。
買い物が難しくなるのは、意欲だけの問題ではありません。
日常の中で必要な「判断」と「移動」が重なっているからです。
まず影響するのが、判断力です。
こうした判断は、年齢とともに少しずつ負担になります。
その結果、
といった状態が起きやすくなります。
次に壁となるのが、移動です。距離や坂道といった道のりのほかに、特に見落とされやすいのが帰り道の負担です。
買い物をした重い荷物を持って歩くことは、高齢者にとって大きな負担になります。そのうえ、行きと比べて、帰りは体力を消耗しています。
そのため、「スーパーまでは行けるけれど、帰りがつらい」というケースは珍しくありません。
さらに、体調や疲れによって外出が億劫になることもあります。
その結果、
といった悪循環につながります。
こうした変化は、特別なことではなく、歳を重ねる生活の中で自然に起きてくるものです。
要介護認定を受けることができれば、ヘルパー(訪問介護)による買い物の支援を受けることもできます。
ただし、実際の依頼ではいくつかの制約があります。
買い物の醍醐味のひとつは「自分で選べること」にあります。
そう考えると、「介護サービスで全てが解決できる」というわけではないのが現実です。
買い物は単なる用事ではありません。
こうした行動は、運動・気分転換・人間関係の維持にもつながっています。そこで、まずは「できるだけお店での買い物を続ける」という視点から、役立つ方法を2つご紹介します。
まずは、買い物にも便利な「シルバーカー(手押し車)」です。
こうしたシルバーカーは、素人で選ぶよりも、福祉用具専門員などの専門家に相談する方が、構造上の安全性が高く、また、使う方の姿勢や歩き方に合った使いやすいものを選定してもらえます。
また、利用には、介護保険サービスの一つである福祉用具レンタルを利用するという選択肢もあります。レンタルであれば、購入後の処分に悩む必要もありません。
買い物が難しくなってきたと感じたら、まずは地域包括支援センターに相談し、介護保険サービスを利用できる状態かどうかを確認してみましょう。
移動スーパー(移動販売車)は、トラックで商品を運び、地域を巡回する仕組みです。特に地方を中心に、全国の地域スーパーと提携した「とくし丸」やコンビニの移動スーパーが活躍しています。
あらかじめ必要なものを伝えておくと、次の巡回時に用意してもらえることもあります。ご近所の人が集まる場にもなるため、自然と会話も生まれます。
買い物の負担を減らす方法として、宅配サービスの利用も広がっています。特に次のようなものは、宅配との相性が良いです。
これらは高齢者本人だけでなく、介護する家族の負担軽減にもつながります。
Amazonや楽天などは、若い世代だけでなく、幅広い年齢層に利用が広がっています。「高齢だから」と思わず、まずは使ってみることから始めると、案外便利さに気づくかもしれません。難しい場合は、家族が代わりに注文することで、離れて暮らしていても生活を支えることができます。
イオン・西友などの大手スーパーは、ほとんどが配達サービスも行っています。いつもの店にあるこだわりの商品や、すぐに欲しいものは、大手スーパーの配達サービスをうまく活用すると便利です。
ツルハドラッグ、くすりの福太郎、レディ薬局などは、全国の店舗で「お買い物便 とどけ~る」という配達サービスを提供しています。日用品や介護用品の購入に便利で、高齢者には特典を用意しているところもあり、お得に使える可能性もあります。
宅配と聞くと、生協を思い浮かべる方も多いでしょう。実際に、多くの高齢の方が生協を利用されています。ネットスーパーと違った利点があるため、本人の状態やできること、やりたいことに合わせて使い分けてみてください。
■生協の特徴
■ ネットスーパーの特徴
▶ 買い物代行のサービス検索はこちらから
地域によっては、ボランティアやシルバー人材センターが、比較的安価に買い物のサポートを行っていることもあります。
こうした情報はインターネットに載っていないことも多いため、地域包括支援センターや社会福祉協議会に直接相談してみましょう。思いがけない情報が得られることがあります。
買い物ができなくなってきたことにより、特に毎日の食事に困った場合には、宅配弁当を利用するという選択肢もあります。
まずはお試しから利用できるところもあるので、味見から気軽に始めてみてください。
毎食ではなく週に数回取り入れるだけでも、生活のリズムや体調を整えることができます。
▶ 配食 民間サービス一覧
▶ 食材の調達 民間サービス一覧
「買い物が少し大変になってきた」
そんな生活の小さな変化から介護が始まることは多いものです。
そのとき大切なのは、
家族がすべてを代わりに担うのではなく、
介護という言葉にとらわれすぎず、今あるさまざまなサービスや仕組みをうまく組み合わせていくことです。
できることは続けながら、必要なところを補う。
そのような視点で少しのアイデアや工夫を重ねていくと、
暮らしは無理のないかたちで整っていきます。
▶ 正答率59% 介護はどこから始まるか? 見るべきは病名ではなく暮らしのつまづき。
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岩瀬 良子(いわせ・りょうこ)
介護支援専門員(ケアマネジャー)/介護福祉士
京都大学卒業。病院・施設・在宅など多様な現場に従事し、英国ホスピス視察などを経て「地域ケア」と「納得のいく看取り」を探求・実践する。
現在はその知見を活かし、「仕事と介護の両立」に関する個別相談やQ&A対応、専門記事の編集を担当。現場のリアリティと専門知識に基づいた、正確で温かみのある情報発信を行っている。
【執筆協力】中央法規出版『生活援助従事者研修 公式テキスト』