認知症早期発見のために知っておきたいこと〜「認知症予防の最前線と早期発見のポイント」セミナーから(2)〜

認知症早期発見のために知っておきたいこと〜「認知症予防の最前線と早期発見のポイント」セミナーから(2)〜

「家族が認知症のような気がするときに、初動はどうしたらいいだろう」

「加齢による物忘れのような気もするが見極める方法はないだろうか」

「本当は病院で検査を受けてほしいけど、切り出せない」

高齢の親御さんやご親族をもつ方からはこのようなお悩みをよく伺います。 今回、多くの認知症の患者さんやそのご家族とともに歩んでこられた愛知県豊橋市・福祉村病院副院長 伊苅弘之先生ご講演のうち、早期発見のポイントについてお話しいただいた部分の抄録をご紹介いたします。


  1. 認知症予防の現状と認知症の主な症状
  2. 早期発見のポイント←このページのテーマ
  3. 伊苅先生との質疑応答「こんな時はどうする?」

アルツハイマー型・嗜銀顆粒性認知症の初期は記銘力障害が特徴

まず、認知症の原因となる四大疾患を、大きく2系等に分けて見ていきます。

1つめは、アルツハイマー型、嗜銀顆粒性の認知症です。これらは、記銘力障害といって軽症の段階からちょっと前のことをすぐに忘れます。基本的な検査法をご紹介します。

①検査法:MMSE(エムエムエスイー)の一部適用

無関係な3つの言葉を覚えてもらい、1分ほど違うことをして、その後、3つの言葉を思い出してもらう

例:キャベツ、電話、らくだという言葉を覚えてもらう。

その後100から順に7を引き算してもらう。

間違えたところで、最初に覚えてもらった3つの言葉が言えるかを確認する。

アルツハイマー型や嗜銀顆粒性の認知症の場合、1分待たずとも、この段階で、3つとも言えません。認知症として初期の段階だったとしても答えられません。

②検査法2:ADAS(エイダス)の一部適用

横4〜5cm、縦7〜8cmのカード10枚に書かれている10個の単語を順に提示して、声に出して読みながら覚えてもらい、10枚終わったところで何があったかを尋ねる。

覚えているものをひとしきり言ってもらったら、再度、10枚のカードを見せて、声に出して覚えてもらい、何があったかを訪ねる。これを繰り返す。

健常者にやってもらうと、繰り返すうちに答えられる単語が2つ、3つ増えます。なんでこんな馬鹿馬鹿しいことをと思っていても自然と増えてしまうんですね。

ところが、アルツハイマー型認知症や嗜銀顆粒性認知症の方の場合は、繰り返しても覚えられる単語が、最初3枚だったら、その後もその後も3枚といった具合に、増えないんです。常に1回目なんですね。

日常生活で記銘力障害に気づくポイント

アルツハイマー型や嗜銀顆粒性のMCIレベルの時に見られる代表的な例です。

  • トランプの「神経衰弱」が弱くなる/できないからしたくなくなる
  • 好きなことや趣味を辞めてしまう
  • 町内の活動や役を辞めてしまう
  • 置き場所を変えてどこに置いたか忘れてしまう
  • お金や貴重品をなくしてしまう
  • あるのを忘れて同じものを何度も買ってしまう
  • 何度も同じことを言う、尋ねるを繰り返す

もし、こういうことがあればこのご病気の始まりじゃないかと気づいてください。

レビー小体型認知症では視覚的なゆがみが特徴

もう一つの系統はレビー小体型認知症やアルツハイマー型とレビー小体型認知症の合併症です。軽症の段階から視覚的にゆがむのが特徴です。アルツハイマーとの合併症でも、レビー小体型単体の時に比べると少ないながらも、後段で紹介するような症状が出てきます。

多少記憶が悪くなっているということが、ご自身で分かっているほか、ぼーっとしているときと調子がよいときの差が大きく、ぼーっとしていた時にビックリするような失敗をしてしまうこともあります。そして、やってしまった大きな失敗をご本人は覚えているので、ご自身の状態の変化に悩み、抑うつ的になります。

日常生活で視覚的なゆがみに気づくポイント

レビー小体型認知症のMCIレベルの時に見られる代表的な例です。

  • ジグソーパズルや塗り絵は嫌いになった
  • 細かい編み物や細かいことをするのをやめてしまう
  • 食事を作ってもらって食べる時にいちいちこれは何かを聞くようになる
  • 大きな文字はいいが、細かい文字は読みたがらない
  • 目が見にくいといい眼科受診を繰り返すが異常ないといわれる
  • メガネが合わないといい、いくつもメガネを作る
  • 大きさや柄を見分ける作業に時間がかかるようになる
  • 柄がわかりにくくなったり、衣類の厚みとかも分からないので衣類を選ぶのに時間がかかるようになる
  • 体の動きが悪くなるので、つまづきやすくなる

もし、こういうことがあればひょっとしたらレビー小体型認知症の初期の段階かもしれないと気づいてあげてください。

こういうような症状はご本人が訴えない限り、服を選ぶのに時間がかかるなとか、つまづきやすくなったのは年のせいだろうと考えてしまうこともあると思います。でもそうじゃない、レビー小体型認知症の初期である可能性もあるということも覚えておいていただきたいと思います。

なお、視覚のゆがみ以外でも、注意力や集中力が変動しやすくなる傾向があります。人はだれでもそういったところはありますが、レビー小体型認知症の時には特に差が大きくて、ぼーっとしているときには、コーヒーの中にお茶をいれてしまうというような失敗をしてしまったということも聞いたことがあります。

このように認知症とひとことで言っても、いろいろな病気があり、それぞれに特徴があります。早期発見のための気づきのポイントも異なりますので、今日のお話が皆さんのお役に立てば幸いです。

(2022年5月26日「認知症予防の最前線と早期発見のポイント」セミナーより)


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※AIRS®はがんであるか否かおよび認知機能が低下しているか否かの判断、並びに上記疾病の生涯に渡る発症リスクを予測するものではありません。

※AIRS®は診断・治療・予防に直接寄与するものではありません。

この記事の監修者

a.tamemoto

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