親の住まい、これからどうする? 施設探しや住み替えのタイミング・選び方をプロが解説(後編)

親の住まい、これからどうする? 施設探しや住み替えのタイミング・選び方をプロが解説(後編)

2024年6月28日、リクシスは、第18回『全国ビジネスケアラー会議』を開催いたしました。
これから高齢社会がより一層加速し、仕事と介護の両立が当たり前の時代がやってきます。本オンラインセミナーは、高齢化の流れが加速する日本社会において、現役世代として働きつつ、同時にご家族の介護にも携わっている「ビジネスケアラー」の方々とその予備軍となる皆様に向けたセミナーです。

今回のテーマは「親の施設探しや家の住み替えのタイミング・選び方」。

親の介護のことを考え始めると、今後の住まいについて考えなければならない段階があるかと思います。
高齢化社会になっていくことで、施設での空きがないという話もよく耳にしますよね。
そんな中で、これからの親の住まいについてどう考えればいいのか、どんなタイミングで探した方がいいのか、探すポイントはあるのかについて悩まれている方も多いのではないでしょうか。
今回は入居サポート歴20年、これまでに3,000人以上の相談を担当されている大和ライフネクスト株式会社の鳥居さんからプロの視点でご解説いただきます。

この記事では、

  • 介護保険施設と老人ホームの種類とそれぞれの特徴
  • 住まいを決めるための見学で見るべきポイント
  • 老人ホーム選びのコツ

などのテーマでまとめています。

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①親の住まい、これからどうする? 施設探しや住み替えのタイミング・選び方をプロが解説(前編)

②親の住まい、これからどうする? 施設探しや住み替えのタイミング・選び方をプロが解説(後編)⇐このページのテーマ

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登壇者プロフィール

鳥居 孝行(とりい・たかゆき)
大和ライフネクスト株式会社 プレシャスライフデザイン課
精神保健福祉士

老人ホーム入居のサポートに携わって20年。精神保健福祉士の資格と老人ホーム勤務の経験を活かし、入居後の生活を見据えた老人ホームを提案。これまで3,000人以上の相談に対応。

 

住まいの種類

実際に施設入居を考えた時、どんな住まいの種類があるのでしょうか。
それぞれご紹介していきます。

 

介護保険施設の種類と特徴

介護保険法の中で「施設」と定められているのは、特養・老健・介護医療院の3つしかありません。
この3つの施設は、学校で例えると「公立校」と言えるでしょう。

施設に入ることの最大のメリットは、本人の収入によって月額利用料が軽減されるシステムがあるということです。
収入がある方でも、有料老人ホームほど高くなることはありません。非常に安く入ることができます。

特養(特別養護老人ホーム)
要介護3以上の方が待機することができます。
安く長く使える公的施設なので、待機者が約25万人もいる状況です。待機している順番で入れるわけではなく、介護度や介護できる方の有無、居住歴、住環境などのポイント制で入れるかどうかが決まります。月額利用料の目安は9〜13万円。

老健(介護老人保健施設)
病院に入院などをして自宅に戻るまでの間にリハビリが必要な場合に入居できる施設です。有料老人ホームを探すまでの一時的な利用で入居するという方もいらっしゃいます。
原則として3ヶ月入居することができます。月額費用は8〜14万円。

介護医療院
医療行為が必要な方が、介護保険を使って入れる施設です。
病院の縮小傾向から転換してきた施設なので、非常に数が少なくて埋まっているところも多いです。月額費用は9〜17万円。

 

老人ホームの種類と特徴

有料老人ホームは介護保険法では施設でなく「住まい」、いわゆる在宅の扱いになります。
住まいという観点になりますので、月額利用料は、住む地域や提供するサービスによって変わっていきます。月額利用料の他に入居金が必要になり、入居金で数千万というところもあります。
学校に例えると「私立校」です。

介護付有料老人ホーム
人員の配置・設備の基準・運営基準などの決まり事をクリアし、都道府県の事業施設を受けている老人ホームです。都心部で計画的に作られることが多く、首都圏を離れるとほとんどありません。

住宅型有料老人ホーム
届け出を出して運営されている老人ホームなので、運営されている会社によって変わってきます。元気な方がいらっしゃるところもあれば、特定の病気の方を集めているところもあったり、重介護に対応しているところもあったりします。

サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)
高齢の方が賃貸の住まいを更新することが難しいという問題から、国土交通省の管轄で2011年にできたバリアフリーの住まいです。登録型になっています。
事業者ごとに違いはあるものの居住性は優れています。住宅型よりも元気な方が多いイメージです。

介護付と住宅型・サ高住の違いは、レストランに例えると定食とアラカルトのようなものです。
介護付は要介護度に応じて、毎月定額で介護保険サービスをまんべんなく利用することができます。
住宅型とサ高住は、自分に必要な介護保険サービスを選んで利用することができ、利用した分だけ金額を払います。

 

住まいを決めるのに見学は必須

有料老人ホームには必ず見学をするようにしましょう。1か所ではなく、できれば数か所見学してほしいと伝えています。
最初は「必要ない」と言っていた方も、実際に見学すると「違いがありますね」と言う方がほとんどです。

 

見学のポイントは「分かりにくい部分」

見学は「ハード」より「ソフト」を重点的に確認するようにしましょう。
ハードとは見学の対応や建物の綺麗さ、月々の利用料など目に見えるわかりやすい部分、ソフトとはスタッフの人員配置、リハビリ体制、利用料以外の必要など目に見えず分かりにくい部分を表しています。

ハードだけを見て決めてしまう方が多いのですが、入居後に大切になってくるのは意外とソフトの部分ということが多いです。
例えば、月々の利用料が安く見えていても、施設によっては光熱費やおやつの費用が別に発生するなど利用料以外の費用がかかってしまう場合もあるのです。
また、有料老人ホームは常駐するスタッフの人数ではなく、労働時間でスタッフを数えていて、週40時間働くスタッフを1とカウントします。パート勤務や複数施設を巡回するスタッフもいます。施設見学の際、施設内にスタッフが多くいるように見えても、いつでも同じスタッフ、同じ人数がいるというわけではありません。

 

「入居者の雰囲気」や「入居後の生活」を探りましょう

老人ホームを選ぶ時に大切なのは、本人が入居後に生活するイメージができるかということです。
そのためにも、他の入居者の雰囲気を探ることがとても大切になってきます。

私たちは、下記の4つを施設に確認することで、生活のイメージを掴んでいます。

  • 入居者の1日の生活の流れは?
  • 入居者の平均介護度や男女比は?
  • 身体状況や認知症状によるフロア分けはある?
  • 食堂のイスの数は?

施設によっては、元気な方は3階、認知症の方は2階、医療行為が必要な方は1階などとフロアを分けているところがあります。
フロアの空き数は全体の数を伝えていても、空いているフロアが認知症の方のところだけということも。元気な状態の方がそのフロアに入ったとしたら、ご自身のイメージする生活や周囲とのコミュニケーションにギャップが生まれてしまう可能性があります。

食堂で車イスからイスに座り直す施設もありますが、車イスのまま食事をする施設もたくさんあります。
食堂のイスが極端に少ない場所だと、車イスの方が多い可能性が高いなとイメージしています。

 

月額利用料と必要な費用

有料老人ホームでパンフレットなどによく書かれているのは、月額利用料です。これは固定費で必ずかかってくるものですが、これにご本人の状態によって変動する費用がプラスされます。
介護保険自己負担額、医療費、日用消耗品費などの必要な費用や、その他要望に応じてかかる必要が発生することを理解しておきましょう。

また、入居金プランと月払いプランと選べるところもあります。入居金プランは、家賃を5年分くらいまとめて前払いをしているようなイメージです。
5年で償却していくので、それ以上入居していても追加の金額が発生しません。長期的には入居金プランの方がお得になるのが最大のメリットです。

 

老人ホームあるある

老人ホームに関する誤解やギャップをご紹介いたします。

サ高住には元気な方ばかり入っていると思っている
実際は75歳以上が約90%で、要介護認定を受けた方が75%以上です。意外と介護度が高い方が住んでいらっしゃいます。
運営会社は要介護度が高い方に入居してもらうことで利益が多く生まれるため、そのような実態になっています。

24時間看護師常駐のところを選べば安心と思っている
24時間看護師常駐のところには、医療行為を必要とした方が多くいらっしゃいます。
確かに安心ではありますが、元気なうちから入居すると入居後の雰囲気や生活リズムが合わない可能性もあります。
本人の状況に合った老人ホームを選ぶことが大切です。

近所に新しく建った老人ホームに入ろうとする
新築であっても、部屋はそんなに広くなかったり、自由には生活できなかったりするケースがあります。
近くだからといって良いわけではないので、本人の状態やニーズに合ったところを見つけることがもっとも重要です。

 

老人ホーム選びのコツ

コツは3つあります。

  • 本人とのコミュニケーション
  • パンフレットだけ集めない
  • 第三者のアドバイスを活用

本人とのコミュニケーションは特に重要です。
本人が入りたがっていないのでどう説得したらいいかという相談を多く受けますが、説得をするのは難しいでしょう。
無理に説得をするのではなく、たくさん話すことで、ご本人の小さな納得を積み上げていくことが大切です。

有料老人ホームは外出・外泊もできますし、自由度が高いところもたくさんあります。知り合いの方の中には老人ホームから在宅復帰された方もいらっしゃるほどです。
「施設に入ったら二度と戻れない」というような、本人の逃げ道を断つような話し方はせず、「だめだったらいつでも止められるよ、家に戻ってきてもいいよ」と話すと良いでしょう。

ご家族のゆとりをつくるためにも、罪悪感をもたずに継続的なものだけでなく、例え一時的であっても老人ホームを利用してみても良いかと思います。

 

プレシャスライフ相談室について

大和ライフネクスト株式会社のプレシャスライフ相談室は、老人ホームをご紹介して14年目を迎えました。おかげさまで多くのご相談をいただき、概ね全国区でご紹介することができるようになっています。

老人ホームのご紹介というとタイミングにならないと相談してはいけないように思われがちですが、よろずのご相談でかまいません。
「どう探したらいいの?」と言った些細なお悩みからでもご相談いただけます。また、老人ホームのご入居以外にも、シニアライフのお困りごとに対応するようなサービスを提供しています。

私たちはたくさんの情報を与えるよりも、整理して絞ってあげることが重要な仕事かなと思っています。
契約まで進まなかったとしても大丈夫ですので、メールなどでお気軽にご相談いただければ幸いです。

 

参加者の皆さんへのメッセージ

介護のきっかけは突然やってくるもので、1ヶ月〜1ヶ月半で施設を探さなければならず焦ってしまう方がほとんどです。
今日は、そんな時の備えになればいいかなと思ってお話をさせていただきました。

有料老人ホームは時と共に利用しやすいものになりました。
一時的にレスパイトとして使うこともできますので、利用しながら介護者の負担を減らしていくということが自然な時代になっています。
施設にいれてしまったという罪悪感はもたずに、仕事と介護の両立をしていただければと思います。

本日はありがとうございました!

⇒「親の住まい、これからどうする? 施設探しや住み替えのタイミング・選び方をプロが解説(前編)」につづく

この記事の監修者

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