「最近元気がない親」にどう関わる?~“元気の種”は日常に。無理なく続けられる心遣いと関わり方~

「最近元気がない親」にどう関わる?~“元気の種”は日常に。無理なく続けられる心遣いと関わり方~

 

この記事でわかること

「最近元気がない親」にどう関わればよいか悩んでいる方に向けて、「このままでいいのかな」「何かしたほうがいいのかな」と迷いながらも、無理はさせたくない。

この記事では、そんなやさしい気持ちを抱えているあなたへ向け、無理をせず、日常の中で自然にできる声かけや関わり方のヒントをお伝えします。

親のためだけでなく、自分の気持ちも大切にしながら、ふっと心が軽くなる関わり方のヒントにしてもらえたらと思います。

 

親が「なんとなく元気がない」と感じたときに

「元気がない」ように見える理由は?

以前は頼もしく、背中で語るような存在だった親。そんな親が、最近どこか小さく見える気がする。最近は、気が付くと家でテレビの前でぼーっとしている時間も増えている。不調があるわけでもないけれど、ふとした表情が曇っていたり、張り合いがなくなってきたようにも見える。

そんな風に心配になることはありませんか?

年齢や年齢とともに体力や意欲がゆるやかに落ちていくのは自然な変化です。

特に退職後や家族構成の変化など、暮らしの環境が変わることで人づきあいや日々の役割が減り、気づかないうちに心のエネルギーがしぼんでしまうこともあります。また、明確な理由がなくても「なんとなく気持ちが沈む日」が増えるのも、年齢を重ねた人にとっては珍しくありません。

 

「気になるけど、無理はさせたくない」気持ちが揺れるのも自然なこと

生活はそれなりにできている。だからこそ、「何かを変えるほどではないのかも」と思う一方で、「このままでいいのかな」と、心の中に小さな“もや”が残る。無理やり何かを始めさせるのは違う気がするけれど、今のままでいいのかもわからない。

「もっと明るくいてほしい」と願う気持ちと、「無理はさせたくない」と思う気持ち。そのどちらも、親を思うやさしさから生まれているものです。

では、そのやさしさを伝えるにはどうしたら良いのかを次で紹介します。

 

無理なくできる声かけと関わり方のヒント

1.「できなくなったこと」より「できていること」に一声かける

元気がないように見えるときほど、「何ができなくなったか」に目が向きがちです。でもちょっと視点を変えてみると、「今でもできていること」が意外とたくさんあることに気づきます。

たとえば、毎日きちんとご飯を食べている。洗濯をしている。スーパーに買い物に出かけている。仏壇にお供えをしている。植木に水をあげている。そんな日々の営みの中には、変わらず続いている「元気の証」が詰まっています。

できていることは、当たり前ではないととらえ、「すごいね」「続けてるんだね」と受けとめてちょっと声をかけるだけで、しぼんでしまった親の心にエネルギーが補給されていくかもしれません。

 

2. 昔好きだった趣味や得意だったことの話を、何気なくふってみる

年齢を重ねても今を認めてもらえることは、いつでも、だれでも嬉しいこと。

「もう少し頑張ってみようかな」という気持ちが親の中に溜まってきたら、昔好きだった趣味や得意だったことの話を、何気なくふってみるのもよいきっかけになります。一緒に体験したことなどについて話すのもおすすめです。

反応が薄くても大丈夫。行動を促すのではなく、あくまで本人のペースを大切に。

例えば……「休日にあの川に釣りにいったよね」「よく作ってくれたコロッケ好きだったな」「商店街のあの店まだやってたよ、懐かしいね」など。

日常に潜む“ちょっとしたきっかけ”が変化を生むこともあります。日々の会話の延長に、こんなふうに、元気の種が見つかることもあります。

 

【実際のエピソード】短くていい。気持ちがつながることが心の栄養に

何気ない会話の中に、ふっと気持ちが動く瞬間があるものです。

あるとき、父がぽつりとつぶやいたんです。

「お前と行った、あのラジオ体操、まだやってるのかな」

その日はたまたま、近所の公園の掲示板に貼ってあった紙を見た帰りだったそうで、昔、私が小学生だった頃、朝の眠い体を引きずりながら一緒に歩いていった夏のことを思い出したようでした。

「あの頃はお前も小さくて、起こすのに苦労したよ」なんて、少し笑いながら話してくれました。

「覚えているよ。セミの声がすごかったよね」私がそう返すと、「懐かしいよな」とつぶやいていました。

 

数日後、「ちょっと見に行ってみようかな」と言いながら外出した父。戻ってきたとき、きちんと整えられた髪に軽やかな足取りで、私はなんとも言えない安堵を覚えました。

「子どもたちに挨拶されちゃったよ。元気、もらうな」とつぶやいた父の横顔が、今も心に残っています。わたしはただ「行ってきたんだね、よかったね」と笑って返しました。

それだけの短いやりとりでしたが、父の表情はどこか和らいで優しく見えました。

それ以来、日々の様子に大きな変化があったわけではありません。でも、小さな外出と、たまたまの会話が、父の中に何かを灯してくれたように思うのです。

無理に何かを「させる」必要はない。ただ、自然な流れのなかで起きたこの出来事は、親にとっても、私にとっても、大事なきっかけになりました。

 

「そのままで大丈夫」と思える関わり方を続けるために

大きな変化がなくても、「見守ること」には意味がある

「何かしなきゃ」と思わなくても、大丈夫です。今できていることを「それだけで十分」と見守るだけでも、親の心はふっと軽くなるものです。

声かけは、短くてかまいません。「よかったね」「ありがとう」「助かったよ」。そんなひとことが、今の生活に安心感をもたらし、「このまま、もう少し続けてみよう」という前向きな気持ちを引き出していきます。

たとえば、「今日、ちょっと外に出たよ」と言われたら、「よかったね、気持ちよかったでしょう」と返してみる。「ちゃんとご飯食べてるんだね」「そうやって続けてるの、すごいね」と、小さな日常を肯定する言葉が、心の栄養になります。

 

“元気の種”は、ふとした日常の中にきっとある

声をかけても反応が薄かったり、すぐには目に見える変化を感じないと思うことがあるかもしれません。無理に励まさなくても、正解を探さなくても大丈夫です。親自身のペースやタイミングもあるからです。

大きなことをしなくても、「ちゃんと見てるよ」「気にかけてるよ」というあなたの心を寄せた言葉や、変わらずそばにいるという思いは伝わり、それは必ず親のエネルギーになっていきます。

日常の中でじわじわと積み重なることで、親の中にある“元気の種”が、静かに芽を出していくかもしれません。
そんなふうに感じられる日が、あなたの心にも、そっと訪れますように。

 

この記事を書いた専門家

服部 陽子(はっとり・ようこ)

介護支援専門員、社会福祉士、産業ケアマネジャー1級

<経歴> 介護施設での相談職を経て、現在は在宅のケアマネジャーとして活動中。14年間の相談支援経験を通じて、「仕事と介護の両立」に悩む家族に寄り添い、“備え”の重要性を強く実感する。 現在は企業と連携し、ビジネスケアラー向けにセミナーや個別相談、職場環境づくりを行い、自分らしい“幸せな働き方”を叶えるための支援に取り組んでいる。

この記事の監修者

介護プロ編集部

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