明日からできる!医師が解説する認知症予防セミナー~相談事例からひも解く、介護や認知症にまつわるリアル~(①MCI・認知症の見極めポイントと心がけたい生活習慣・前編)

明日からできる!医師が解説する認知症予防セミナー~相談事例からひも解く、介護や認知症にまつわるリアル~(①MCI・認知症の見極めポイントと心がけたい生活習慣・前編)

2023年12月8日、リクシスは、第12回『全国ビジネスケアラー会議』を開催いたしました。

これから高齢社会がより一層加速し、仕事と介護の両立が当たり前の時代がやってきます。本オンラインセミナーは、高齢化の流れが加速する日本社会において、現役世代として働きつつ、同時にご家族の介護にも携わっている「ビジネスケアラー」の方々とその予備軍となる皆様に向けたセミナーです。

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今回のテーマは「認知症」。

皆様からのご要望が多かったこのテーマ。

「認知症」と言ってもその症状には段階があり、認知症の一歩手前の状態とされる軽度認知障害(MCI)という状態があります。早期に発見し適切な対策をとれば、MCIから改善し認知症の発症を予防できる可能性があると言われています。

MCIと認知症の見極めのポイントや認知機能の維持に効果的だと言われている生活や習慣について解説いただくとともに、各社が展開する、ビジネスケアラーにとって頼もしい介護サービスについてもご紹介いたします。

この記事では、

  • MCIと認知症
  • 認知機能低下につながりやすい生活習慣
  • ご家族が気にかけた方がいいポイント
  • 認知機能維持に効果的と言われている生活習慣

というテーマでまとめています。

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①「MCI・認知症の見極めポイントと心がけたい生活習慣(前編)」⇐このページのテーマ
②「MCI・認知症の見極めポイントと心がけたい生活習慣(後編)」
③「会話deエクササイズnabetomoのサービスとは」
④「くらしと介護サポートのサービスとは」
⑤「Q&A編」

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登壇者プロフィール

伊苅 弘之(いかり・ひろゆき)医師 さわらびグループ福祉村病院副院長 医学博士日本老年医学会・日本老年精神医学会の専門医・指導医 

信州大学医学部卒業後、名古屋大学医学部老年科学教室に入局。記憶に関する基礎実験を行い医学博士を取得。1993年1月から1995年3月までアメリカ国立衛生研究所客員研究員。帰国後、名古屋大学医学部附属病院にて「ものわすれ、認知症外来」を5年間行う。1999年4月より高齢者のための総合的施設群(1,000人以上の高齢者が生活している)の中心となる福祉村病院に勤務。

 

 MCIと認知症


認知症は脳の病気で、だいたいは脳が萎縮していって認知機能が落ちていくという病気です。
脳のどの部分が萎縮していくかによって、出てくる認知機能の障害が変わってきます。

MCI(Mild Cognitive Impairment)とは、軽度認知障害のこと。
認知症とは違って、記憶が悪かったり判断力が落ちたりしていても、ある程度自分のことは自分でできて、社会生活や日常生活がほとんど援助なしでできる状態です。
認知症は、だんだん脳が萎縮していくことで認知機能が低下し、日常生活を送る上で人の援助・介助が必要になってきます。

健常者だって物忘れをすることがあるので、MCIや認知症の見極めをどうしたらいいのか悩みますよね。
記憶や判断力の検査は世界中の人の年齢に合わせて色々あって、健常者とMCI、認知症の線引きがある程度作られているので、専門の先生に聞いてみると分かります。

 

認知症初期に見られる代表的な症状

脳が縮んでいく認知症の症状は、大きく2つの系統に分けられます。
両方の症状が出る方も2割くらいいらっしゃいます。

 

最近の記憶ほどすぐ忘れる

特に直前のことや最近の記憶ほどすぐに忘れてしまうので、色々な問題が発生します。
また、現場の医師の方に聞くと、実年齢より若く見える方が多いそうです。


実際の症状例

  • ものがなくなると家族や他人のせいにする
  • 同じことを何度も尋ねたり、行動したりする。身体の動きは良い。
  • 人の話を聞かない、自分勝手な言動が目立つ
  • 認知機能の低下を認めようとしない(アルツハイマー型認知症、嗜銀顆粒性認知症など)

 

ぼーっとする時と普通の時との波が激しい

ある程度は日常生活を送ることができますが、見えるものが歪むので、妄想や妙な考えや行動を起こしてしまいます。そのため、時々とんでもないことが起きることも。
こちらの症状の方は、実年齢より老けて見える方が多いと聞きます。

 

実際の症状例

  •  動かないでぼーっとしていることが増える。細かい作業などをしなくなる
  • 現実にはありえないようなことを言う、非現実的な妄想に基づいて行動をしてしまう
  • 身体の動きが「固い」「遅い」「にぶい」になりやすい
  • 認知機能の低下をある程度認めてくれて説明や説得に応じてくれる(レビー小体型認知症など)

 

認知機能低下につながりやすい生活習慣

脳が縮んでいく病気は、基本的に原因が分かっていません。そのため、原因を取り除いたら脳が元に戻るということがないのです。
ですが、認知症になった方の生活を振り返ることで、どういう人が認知症になっていったかということを知ることができます。


まずは「脳への刺激が少ない」
方です。
日本も核家族化が進み、一人暮らしや老夫婦二人きりの生活をしている方が増えています。あまり会話がなかったり、同じ生活を繰り返したりすることは、脳にあまり良くありません。

 

もうひとつは「ストレスが大きすぎる」方です。
体の病気や環境の変化による心配事が大きいと、認知症になりやすいと言われています。
仕事一筋で趣味がない方などは、仕事を辞めてから認知症になってしまうこともあります。

 

家族が気にかけた方が良いポイント

親御さんが認知症になってしまわないか心配な方も多いでしょう。
ご家族として、気にかけるべきことやタイミングについてお伝えします。

 

一人暮らしや夫婦二人暮らしをしている場合

どうしても生活の中で刺激が少ないので、認知機能の低下が進んでしまう方が多いです。
こういう方は、たまに会いに来るお孫さんやお子さんのことを、とても喜んで話してくださることがあります。直接会って話す機会を増やすことがとても重要です。
無理な場合には、電話するだけでも違います。

 

配偶者や同居人が死亡したり入院したりした場合

急に生活環境が変わり、刺激が少なくなってしまいます。また、ストレスが急増してしまうこともあります。
例えば男性の方が奥様に何でも頼って生活をしていると、奥様が入院してしまった時に大変になってしまいます。もしそういう方がいらっしゃる場合、早めに様々なサービス利用をするなど、プロの力を借りる準備をしておくと良いでしょう。
ご家族が一緒に生活するのも良いですが、ご家族だけでできることは限られています。ヘルパーや通所サービスなどを利用して、人との関わりを増やす環境整備をしてください。

 

施設入所をすると悪化する?

「施設に入所すると悪化してしまうので家族で頑張ります」というお話をよく聞きますが、これは状況次第と言えるでしょう。

施設にも様々な特徴があります。また、人と人とのことなので相性もあるでしょう。
その方への対応がとても良くて合う場所が見つかれば、家にいるよりも良くなるということはあります。

逆に合わない施設に行くと悪化してしまうことも確かにあります。
例えば、軽い認知症の方が多い施設に重い方が入ってしまうと、スタッフの方もうまく対応できないということも。

しっかりと入所する施設を選ぶことができれば、必ず悪化するというわけではありません。

 

認知機能維持に効果的と言われている生活習慣

基本的には下記の2つが効果的と言われています。


良い刺激が多い

生きがいや喜びを感じる、やりたいことや頑張りたいことがあるということが、大脳にすごく良いと言われています。


ストレスが少ない

病気などで体調が悪い・不調を感じる、ご家族などのことで不安が多い、心が病んでいるといったことがあると、認知機能に良くない影響を与えると言われています。

 

具体的には下記のような行動を行うと良いでしょう。

①人と会話をするだけでも脳に良い刺激となる
②笑う(血糖値が下がるともいわれている)
③趣味や好きなことをする
④ボランティアなど社会参加する
⑤孫やペットと遊ぶ
⑥読んだり見たりしたものを要約して発表する(人に伝える)
⑦旅行や制作するなどの計画を立てて実行する
⑧新しいことを始める、チャレンジしていく
⑨コグニサイズを意識して行う(cognition:認知機能+exercise:運動=コグニサイズ)
 ※しりとりをしながら散歩をするなど、運動しながら頭を使う
⑩単純な計算を速く確実にできるように訓練する
⑪体調が悪いなら、それを改善してよい状態に近づける
⑫身体を鍛える、運動を心がける 

認知機能が落ちてきている方に「やった方がいいよ」と言っても、なかなかやらないことがあります。そういう時は、ご家族が一緒に行う、ご近所の方と一緒に行うなど、やり始める環境を作ってあげることが大切です。

体も認知機能も大脳も、使わないとどうしても衰えてしまいます。意識して使っていくと良いでしょう。


「MCI・認知症の見極めポイントと心がけたい生活習慣(後編)」に続く

この記事の監修者

makino

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