小規模多機能型居宅介護とは、居宅サービスである「通い」「宿泊」「訪問」の3つのサービスを1つの事業所が提供する介護保険サービスのことです。
「宿泊や訪問は何回可能なの?」「グループホームとは何がちがうの?」「費用は?」という基本的なことを、この記事でお伝えしていきます。
小規模多機能型居宅介護とは、介護保険サービスのひとつです。
介護保険サービスには主に3つの種類がありますが、小規模多機能型居宅介護は「地域密着サービス」と言われています。
地域密着サービスとは、市町村が指定した事業所がその地域に住む方に対して行う介護サービスのこと。
要介護者が住み慣れた地域での生活を継続できるよう、2006年4月の介護保険制度改正にて創設されました。
小規模多機能型居宅介護の1番の特徴は、1つの事業所と契約するだけで、「通い」を中心として「訪問」や「宿泊」を状況に応じ組み合わせて利用できるということです。
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小規模多機能型居宅介護で受けられる「通い」「訪問」「宿泊」は、人数に制限はあるものの、利用回数の制限がありません。
要介護者やそのご家族の状況によって、適切なサービスを受けることができます。
どんなサービスを受けられるのか、よくある疑問に沿って確認していきましょう。
①通い(通所介護/デイサービス)
利用者が施設に通い、サービスを日帰りで受けることができます。
<主なサービス内容>
・食事や入浴、排せつなどの介助(介護サービス)
・生活機能向上のための機能訓練
・口腔機能向上サービス機能訓練
・レクリエーション
②訪問(訪問介護)
訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問して、サービスを提供します。
<主なサービス内容>
・買い物や掃除などの生活支援
・食事や入浴、排せつなどの介助(介護サービス)
・生活機能向上のための機能訓練
③宿泊(ショートステイ)
利用者が短期的に施設に泊まり、サービスを受けることができます。
<主なサービス内容>
・食事や入浴、排せつなどの介助(介護サービス)
・就寝時の見守り
・おむつ交換
地域密着型サービスには、小規模多機能型居宅介護とは別にグループホームがあります。
どちらも少人数制の施設で、宿泊が可能です。
大きな違いは、小規模多機能型居宅介護では短期の宿泊のみ可能で、グループホームは共同生活を送るということ。
小規模多機能型居宅介護:現在住んでいる自宅に住みながら介護を受ける |
グループホーム:施設に住んで介護を受ける |
住まいが自宅か施設かの違いがある、ということを覚えておきましょう。
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小規模多機能型居宅介護では、宿泊サービスを利用している時に、訪問診療を受けることが可能です。
しかし、訪問診療を受けるためには、宿泊サービス利用前・30日以内に自宅で訪問診療サービスを受けていることが条件になります。
仮に5/1からずっと宿泊サービスを利用し、5/10に訪問診療を受けたいとしましょう。
その場合、下記のように判断できます。
4/10〜4/30までに自宅で訪問診療サービスを受けている→受けることが可能 |
4/10〜4/30までに自宅で訪問診療サービスを受けていない→受けることができない |
ただし例外があります。
令和2年の診療報酬改定によって、医療機関の退院日から宿泊サービスを利用開始した場合、サービス利用開始前30日以内に自宅で訪問診療を受けていなくても、宿泊サービス利用時に訪問診療を受けることができるようになりました。
小規模多機能型居宅介護では、サービスの利用回数に制限がありません。
ショートステイ単体のサービスを受けている場合には、下記のような利用期間のルールが設けられています。
・介護認定期間の半数を超えてはいけない
・30日以上連続で利用してはいけない
小規模多機能型居宅介護では、ショートステイで認められている30日間を過ぎても利用することが可能です。
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サービスの利用回数に制限はない小規模多機能型居宅介護ですが、サービスを受ける人数には限りがあります。
<小規模多機能型居宅介護の定員>
・1事業所あたりの登録者数は29名以下
・1日あたりの通いサービスの定員は概ね15名以下
・1日あたりの宿泊サービスの定員は概ね9名以下
利用したいタイミングで定員に達していると利用することができないので、注意が必要です。
小規模多機能型居宅介護には、様々なメリットがあります。
そのいくつかをまとめてご紹介します。
小規模多機能型居宅介護の最大の特徴でありメリットは、3つのサービスを柔軟に選ぶことができるということでしょう。
それぞれのサービスを単体で利用しようとすると、それぞれのルールがあり、思ったように利用できない可能性も。
小規模多機能型居宅介護であれば、緊急時に訪問や宿泊のサービスを受けたり、通いから宿泊に切り替えたり、柔軟に利用できます。
原則として365日24時間、サービスの利用回数に制限はありません。
体調が不安定な高齢者や痴呆症の方の在宅介護をしている方にとっては、いつでも頼れて安心です。
しかし、各サービスに定員があるため、状況によっては柔軟に利用することができない可能性もあるので注意しましょう。
介護保険サービスを利用する際に気をつけなければいけないのは、介護保険支給限度基準額。
要支援・要介護認定を受けた方は、介護度によって介護保険サービスを利用できる限度額が変わってきます。それが介護保険支給限度基準額です。
通い・訪問・宿泊のサービスをそれぞれ契約している場合、利用した回数によっては介護保険支給限度基準額を超えてしまう可能性があります。
小規模多機能型居宅介護であれば、介護保険支給限度基準額内での月額制なので心配することはありません。
逆に、サービスを利用する機会が少ない場合には、割高になってしまう可能性もあります。
少人数制で地域密着型なので、いつも顔なじみのスタッフの方からサービスを受けることができます。環境の変化に敏感な要介護者にとっては良い環境と言えるでしょう。
単体のサービスを契約していくと、3つのサービスの場合3回調査し、3回契約を交わさなければなりません。
小規模多機能型居宅介護では、1つの事業所と契約することで3つのサービスを受けることができるので、便利です。
小規模多機能型居宅介護を受けるためには、下記の条件を満たしている必要があります。
・要介護認定を受けて「要支援」もしくは「要介護」に認定された方
・利用したい事業所と同じ市町村にお住まいの方(住民票がある方)
利用方法は、ケアマネージャーがいるかいないかで異なります。
ケアマネージャーがいる方は相談しましょう。
いない方は直接、小規模多機能型居宅介護事業所に問い合わせればOKです。
分からない方は、役所や地域包括支援センターに問い合わせてください。
小規模多機能型居宅介護の費用は、定額制の月額料金です。
地域により費用は異なりますが、要介護度別に以下を目安にしてください。
介護認定 | 利用者負担1割の場合の金額(1ヶ月あたり) | |
同一建物に居住する者以外に対して行う場合 | 同一建物に居住する者に対して行う場合 | |
要支援1 | 3,438円 | 3,098円 |
要支援2 | 6,948円 | 6,260円 |
要介護1 | 10,423円 | 9,391円 |
要介護2 | 15,318円 | 13,802円 |
要介護3 | 22,283円 | 20,076円 |
要介護4 | 24,593円 | 22,158円 |
要介護5 | 27,117円 | 24,433円 |
※基本単価(1単位=10円)の料金例になります。地域によって単価が異なります。
※利用する事業所によって取得している加算に差があるため、自己負担額が異なる場合があります。
※上記に加え、日常生活費(食費、宿泊費、おむつ代など)は別途実費で負担します。
・小規模多機能型居宅介護とは「通い」「宿泊」「訪問」の3つのサービスを1つの事業所が提供する介護保険サービスのこと。
・グループホームとは異なり、あくまで在宅介護からの「通い」が中心。
・宿泊サービスを利用中に訪問診療を受ける場合には、宿泊サービスを受ける30日前までに自宅で訪問診療を受ける必要がある(ただし医療施設退院後すぐの宿泊サービス利用であれば例外)
・小規模多機能型居宅サービスでは、サービスの利用回数に制限がない。
住み慣れた地域で在宅介護を受けるために、小規模多機能型居宅介護はとても便利な介護保険サービスです。
ですが、少人数制なのですぐに定員になってしまうことも。自宅付近で希望の事業所があれば、早めに問い合わせてみると良いでしょう。
木場 猛(こば・たける) 株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー)
介護福祉士 介護支援専門員 東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 国内ビジネスケアラーデータ取得数最多の仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ監修や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。 3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。
著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』
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