介護施設を選ぶとき、多くの方が「どこがいいか」から考え始めます。しかし実際には、入居のタイミングによって優先すべき条件が大きく変わります。
ある程度元気なうちに探す場合は、生活の質や本人の満足度を重視できますが、自宅での暮らしが限界になってからでは、医療・介護体制や家族が動きやすい立地が第一条件になります。
この違いを理解しておくと、候補の絞り込みがスムーズです。
70代前後で要介護2以下程度、身の回りのことをほぼ自分でできる段階で施設を探すと、入居後も比較的自由な生活が続きます。この場合は費用や立地に加え、施設の雰囲気、レクリエーションやイベントの充実度、外出の自由度など、本人の過ごしやすさが大きなポイントです。
公的施設は介護度や所得で利用条件が限られるため、多くの場合はサービス付き高齢者住宅や有料老人ホームといった民間施設が候補になります。
民間施設の検討では、施設紹介センターの活用がおすすめです。こうした紹介業者は情報量が豊富で、見学にも同行してくれるため、限られた時間で効率よく比較できます。ネットの情報だけで判断せず、必ず実際に見学し、経験豊富な相談員から「この施設ならではの特徴」や「注意点」を聞いておくと安心です。
要介護3以上や、けが・病気で急に介護が必要になった場合は、施設に求める条件が一気に変わります。まず確認すべきは必要な介護・医療体制が整っているかです。
例えば、認知症対応の有無、夜間の医療体制、リハビリや看取りへの対応など、本人の状態に合わせたケアが可能かどうかが最優先となります。
この段階では、家族だけで情報を集めるのは大変です。ケアマネジャーや病院の医療ソーシャルワーカーなど、専門職に相談し、条件に合う施設をいくつかに絞ってもらいましょう。
次に重要なのが家族の事情です。介護度が高いほど急変のリスクが高くなり、呼び出しが増える可能性があります。駆け付けやすい立地かどうか、家族が無理なく関われる距離かどうかも大切な判断基準です。候補が絞れたら、本人と一緒に見学し、雰囲気やスタッフとの相性を確認しましょう。
「施設か在宅か」の二択に見えますが、その中間的なサービスもあります。
一つは小規模多機能型居宅介護です。訪問介護・通い・宿泊の3つを、本人の状態に応じて自由に組み合わせられる月額定額制のサービスで、同じスタッフが対応するため、認知症の方も安心して利用できます。
もう一つはグループホームです。5〜9人の少人数で共同生活をするシェアハウスのような形態で、住み慣れた地域で穏やかに暮らせる環境が整っています。認知症の方が新しい環境に慣れる負担を減らし、自立を支える場として適しています。
介護施設選びは、入居タイミングで条件が大きく変わります。
この3つを押さえ、専門職と連携しながら進めれば、親御さんに合った選択肢が見つかりやすくなります。
介護プロ編集部