「手伝おうか?」と声をかけても、「大丈夫、自分でやれるから」と頑なに断られる。
でも、掃除も洗濯も料理も、すべてを一人でこなすのは、親世代にとって実はかなりの重労働です。
転倒や疲れにつながる前に、“ちょっとだけ頼る”選択肢を持てたら――。
この記事では、負担になりやすい家事と、それを無理なく軽くするヒントを紹介します。
「手放す」ではなく「支え合う」家事のあり方、一緒に探してみませんか。
親世代にとって、掃除は「ちゃんとしていたい」家事のひとつ。
とくにキッチンやお風呂、トイレなどの水回りは、少し放っておくとすぐに汚れが目立ちます。
「まだまだ自分でできる」と言って頑張る姿を見ると頼もしくもありますが、実は腰をかがめたり、重たい掃除道具を扱うのは、体にとってはかなりの負担です。
昔は当たり前にできたことが、今は少し危うさを感じる——そんなときこそ、“ラクに続けられる方法”に切り替えるタイミングです。
洗濯は、やることが多いわりに見過ごされがちな家事。
干して、取り込んで、たたんで、しまって…。これを毎日、もしくは数日に一度こなすのは、想像以上に体力を使います。
雨の日のベランダは滑りやすく、冬場の冷たい水に手をさらすのも、親の体にはこたえることがあります。
「洗濯くらいは自分で」と思っていても、少しの工夫でずっと楽になる家事でもあります。
毎日の食事づくりは、「料理する」だけではありません。
買い物から始まり、献立を考え、調理し、片付けて…と、一連の流れをこなすのは、今の親世代にとってはかなりの重労働です。
とくに「今晩は何を作ろう?」と考える時間や、重たい鍋や食材を扱う場面、火を使う場面は、体にも心にも負荷がかかりやすいポイント。
元気そうに見えても、「ちょっとしんどいな」と感じている方も多いのです。
「自分の目で見て買いたい」
「買い物が外出のきっかけになる」
そう話す親御さんも多く、買い物が気分転換になっていることはよくあります。
でもその一方で、重い荷物を持ち帰る負担や、
「買い忘れた」「同じものをまた買ってしまった」といった管理のストレスを感じている人も少なくありません。
本人が気づかないうちに疲れがたまったり、玄関や階段でバランスを崩すケースもあり、「買い物くらいはまだできる」と思っていても、見えないリスクが潜んでいる家事のひとつです。
ゴミ出しは「ただ出すだけ」と思われがちですが、袋をまとめる、分別する、回収日に合わせて運ぶ…と、地味に頭も体も使う作業です。
地域ごとに違う分別ルールや曜日の管理も、高齢になると負担になりやすいもの。
生ゴミの処理や資源ごみの束ね作業は、体勢も不安定になりやすく、転倒リスクにつながるケースもあります。
家事は、やろうと思えば終わりがないもの。
だからこそ、「やれている」だけではなく、「続けられる形かどうか」を考えることが大切です。
親にとっても、頼ることは“怠けること”ではありません。
それは、自分の暮らしを守るための知恵であり、家族の安心にもつながる選択です。
家事は一人で抱えるものではなく、チームで支えるもの。
まずは「ちょっと頼ってみるか」と思える、そんな一歩から始めてみませんか。
佐々木 元勝(ささき・もとかつ)
理学療法士、元デイサービス管理者
新卒で理学療法士免許を取得してから約10年以上、介護現場に身を置き、現在までに介護される人・介護する家族さん達延べ3000人以上の方々と関わる。また、地域住民向けに「介護に関すること」「健康な体作り」等のセミナーを50回以上開催。介護や認知症をもっと身近に感じてもらうためのワークショップを開催している。自身の経験を元に電子書籍も2冊出版。
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介護プロ編集部