「まだ自分でやれる」親に伝えたい。家事は“頼っていい”が合言葉

「まだ自分でやれる」親に伝えたい。家事は“頼っていい”が合言葉

「手伝おうか?」と声をかけても、「大丈夫、自分でやれるから」と頑なに断られる。
でも、掃除も洗濯も料理も、すべてを一人でこなすのは、親世代にとって実はかなりの重労働です。

転倒や疲れにつながる前に、“ちょっとだけ頼る”選択肢を持てたら――。

この記事では、負担になりやすい家事と、それを無理なく軽くするヒントを紹介します。
「手放す」ではなく「支え合う」家事のあり方、一緒に探してみませんか。

 

掃除|「汚れが気になる」「でも身体がつらい」そのギャップに気づいていますか?

 

負担になりやすい理由

親世代にとって、掃除は「ちゃんとしていたい」家事のひとつ。
とくにキッチンやお風呂、トイレなどの水回りは、少し放っておくとすぐに汚れが目立ちます。

「まだまだ自分でできる」と言って頑張る姿を見ると頼もしくもありますが、実は腰をかがめたり、重たい掃除道具を扱うのは、体にとってはかなりの負担です。

昔は当たり前にできたことが、今は少し危うさを感じる——そんなときこそ、“ラクに続けられる方法”に切り替えるタイミングです。

 

無理なく頼る工夫

  • ロボット掃除機やコードレス掃除機は、しゃがまず・持ち運ばずに掃除が可能。手の延長として使えば、清潔も安全もキープできます。
  • 家の中の物を少し減らすだけで、掃除の手間はぐっと減ります。元気なうちに親と一緒に「モノの棚卸し」をしてみても。
  • 家事代行サービスも選択肢のひとつ。「プロに任せる週1時間」が、親の健康にもつながります。

 

洗濯|「毎日のこと」だからこそ、少しの負担が積み重なる

 

負担になりやすい理由

洗濯は、やることが多いわりに見過ごされがちな家事。
干して、取り込んで、たたんで、しまって…。これを毎日、もしくは数日に一度こなすのは、想像以上に体力を使います。

雨の日のベランダは滑りやすく、冬場の冷たい水に手をさらすのも、親の体にはこたえることがあります。
「洗濯くらいは自分で」と思っていても、少しの工夫でずっと楽になる家事でもあります。

 

無理なく頼る工夫

  • 乾燥機付き洗濯機で「干す」作業をなくすと、ベランダに出るリスクも減らせます。
  • “ハンガー収納”や“たたまない収納”に変えるだけで、たたむ手間がごっそり減ります。
  • 宅配クリーニングや家事代行の洗濯サービスを使えば、洗濯が難しい時期の“ピンチヒッター”として活躍します。

 

料理|「何作ろう…」その考えること自体が、もう大変

 

負担になりやすい理由

毎日の食事づくりは、「料理する」だけではありません。
買い物から始まり、献立を考え、調理し、片付けて…と、一連の流れをこなすのは、今の親世代にとってはかなりの重労働です。

とくに「今晩は何を作ろう?」と考える時間や、重たい鍋や食材を扱う場面、火を使う場面は、体にも心にも負荷がかかりやすいポイント
元気そうに見えても、「ちょっとしんどいな」と感じている方も多いのです。

 

無理なく頼る工夫

  • ミールキットや冷凍総菜を活用すれば、「考える」「買う」「調理する」の負担をぐっと軽減できます。
  • 電気圧力鍋やホットクック、食洗機は、“任せておける”道具。火の扱いが心配な場合は、IHコンロへの切り替えもおすすめです。
  • 料理付きの家事代行サービスなら、下ごしらえから作り置きまでお願いすることもできます。食事の安心感は、何よりのサポートになります。

 

買い物|“行くのが好き”でも、持ち帰るのはちょっと大変

 

負担になりやすい理由

「自分の目で見て買いたい」
「買い物が外出のきっかけになる」
そう話す親御さんも多く、買い物が気分転換になっていることはよくあります。

でもその一方で、重い荷物を持ち帰る負担や、
「買い忘れた」「同じものをまた買ってしまった」といった管理のストレスを感じている人も少なくありません。

本人が気づかないうちに疲れがたまったり、玄関や階段でバランスを崩すケースもあり、「買い物くらいはまだできる」と思っていても、見えないリスクが潜んでいる家事のひとつです。

 

無理なく頼る工夫

  • ネットスーパーや定期宅配を利用すれば、重い飲料やかさばる日用品を玄関まで届けてもらえます。定期便にすれば、注文忘れも防げます。
  • 「買うのは自分で、運ぶのは人に頼む」方法も。店舗で買って配送してもらうサービスも増えています。
  • 家事代行の買い物代行を使えば、「買ってきてほしいものをリストで伝えるだけ」で済むので、忙しいビジネスパーソンが間接的に親を支える手段にもなります。

 

ゴミ出し|気づかれにくいけど、じわじわ重い家事

 

負担になりやすい理由

ゴミ出しは「ただ出すだけ」と思われがちですが、袋をまとめる、分別する、回収日に合わせて運ぶ…と、地味に頭も体も使う作業です。
地域ごとに違う分別ルールや曜日の管理も、高齢になると負担になりやすいもの。
生ゴミの処理や資源ごみの束ね作業は、体勢も不安定になりやすく、転倒リスクにつながるケースもあります。

 

無理なく頼る工夫

  • 自治体のごみ出しサポートや、民間のゴミ出し代行サービスを活用すると、安心して任せられます。
  • こまめに出す習慣をつけるだけでも、1回あたりの負荷が軽くなります。
  • コンポストを導入すれば、生ゴミそのものを出さなくても済むようになり、台所の臭いや衛生面の不安も解消できます。

 

おわりに|「やれるからやる」から、「無理なく続けられる」へ

家事は、やろうと思えば終わりがないもの。
だからこそ、「やれている」だけではなく、「続けられる形かどうか」を考えることが大切です。

親にとっても、頼ることは“怠けること”ではありません。
それは、自分の暮らしを守るための知恵であり、家族の安心にもつながる選択です。

家事は一人で抱えるものではなく、チームで支えるもの。
まずは「ちょっと頼ってみるか」と思える、そんな一歩から始めてみませんか。

 

この記事を書いた人

佐々木 元勝(ささき・もとかつ)

理学療法士、元デイサービス管理者

新卒で理学療法士免許を取得してから約10年以上、介護現場に身を置き、現在までに介護される人・介護する家族さん達延べ3000人以上の方々と関わる。また、地域住民向けに「介護に関すること」「健康な体作り」等のセミナーを50回以上開催。介護や認知症をもっと身近に感じてもらうためのワークショップを開催している。自身の経験を元に電子書籍も2冊出版。
「超簡単 管理者・リーダーのための介護業務を整理する5つの方法」
「妻が妊娠したら、夫から始める14のこと」

 

 

この記事の監修者

介護プロ編集部

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