認知症がある方々が安心して生活できるように、またその介護をされる支援者(介護家族・ビジネスケアラー)の負担を軽減するために提供されているのが、認知症デイサービス(認知症対応型通所介護)です。
ここでは、その概要や効果、料金、他のデイサービスとの違いについて解説します。
認知症デイサービス(認知症対応型通所介護)とは、認知症の方に対して専門的なケアを提供することを目的とした通所型の介護保険サービスで、ご自宅から施設までの送迎、健康チェック、食事や入浴などのお手伝い、機能訓練、レクリエーションなどを行います。
形態として、以下の3タイプがあります。
認知症デイサービスは、認知症ケアに特化した専門スタッフが、認知症の方に適した支援をします。通常のデイサービスとは違う、認知症デイサービスの特徴を見ていきましょう。
介護保険法によって、認知症デイサービスは利用人数が12名以下と定められているため、ひとりひとりに合った手厚いサービスが受けられます。
認知症がある方は不安や混乱を感じることが多く、人数の多い環境での支援は適切とは言えません。少人数で適切なサポートを提供することで、認知症の高齢者もより安心して過ごせるようになります。
認知症対応型通所介護施設の管理者は、認知症対応型サービス事業者の研修を受けており、高度で専門的な知識があります。
そして、認知症ケアをよく理解したスタッフが、利用者の状態や感情、認知症特有の症状に合わせて個別の介護計画を作成し、丁寧なサービスを提供しています。認知症デイサービスは、認知症の方はもちろん、ご家族にとっても心強い存在となってくれるでしょう。
認知症デイサービスは、地域密着型サービスのひとつなので、利用者はその市区町村に住んでいる方に限られています。
地域密着型サービスとは、認知症や要介護の高齢者が、住み慣れた地域で生活できるように、地域と連携して提供される介護サービスです。
サービスの内容は自治体によって異なりますので、利用を検討される際は問い合わせてみましょう。
認知症デイサービスは、要介護1以上の認定を受け、医師から認知症と診断された方を対象としています。さらに、認知症デイサービスは地域密着型サービスであるため、その施設がある市区町村に住んでいる方に利用が限られます。
ただし、市町村によっては「認知症高齢者の日常生活自立度」の一定レベル以上が条件であったり、他の地域に住む方の利用を認めたり、と事情が異なるので、各自治体やに確認をするとよいでしょう。
また、要支援の認定を受けた方は、認知症であっても認知症デイサービスの対象にはなりませんが、要介護状態になることを防ぎ、悪化させないことを目的とした介護予防サービスとして、「介護予防認知症対応型通所介護」が利用できます。
認知症デイサービスの利用費用は、施設や利用時間によって異なりますが、介護保険内のサービス費用に対する自己負担の割合は、所得に応じて1~3割です。一般的に通常のデイサービスよりもやや高めです。
認知症デイサービスの利用料には、送迎費用が含まれますが、食費やおむつ代などの日常生活費は別途負担が必要です。食費は1食あたり500円前後です。
介護保険負担割合を1割とした場合の自己負担額の目安として以下の表をご覧ください。
1日あたり | 単独型 | 併設型 | 共用型 | |
4時間以上5時間未満 | 要支援1 | 496円 | 448円 | 259円 |
要支援2 | 550円 | 497円 | 273円 | |
要介護1 | 568円 | 514円 | 278円 | |
要介護2 | 625円 | 565円 | 289円 | |
要介護3 | 683円 | 617円 | 298円 | |
要介護4 | 740円 | 668円 | 308円 | |
要介護5 | 797円 | 719円 | 318円 | |
5時間以上6時間未満 | 要支援1 | 740円 | 666円 | 412円 |
要支援2 | 826円 | 742円 | 435円 | |
要介護1 | 856円 | 769円 | 444円 | |
要介護2 | 948円 | 852円 | 459円 | |
要介護3 | 1,038円 | 934円 | 476円 | |
要介護4 | 1,130円 | 1,014円 | 492円 | |
要介護5 | 1,223円 | 1,097円 | 509円 | |
6時間以上7時間未満 | 要支援1 | 759円 | 683円 | 423円 |
要支援2 | 849円 | 761円 | 446円 | |
要介護1 | 878円 | 788円 | 456円 | |
要介護2 | 972円 | 874円 | 471円 | |
要介護3 | 1,064円 | 958円 | 488円 | |
要介護4 | 1,159円 | 1,040円 | 505円 | |
要介護5 | 1,254円 | 1,125円 | 521円 |
※2021年4月現在
自己負担額は、使用する施設によって加算されることもあります。
介護福祉士の専門能力が高い場合、サービス提供体制が強化される場合、介護職員の処遇改善などが行われる場合です。
以下は主な加算例ですが、施設ごとに異なるため、希望する施設やケアマネージャーに問い合わせてみましょう。
内訳 | 金額 |
サービス提供体制強化加算(Ⅰ)* | 22円/1回 |
サービス提供体制強化加算(Ⅱ)* | 18円/1回 |
サービス提供体制強化加算(Ⅲ)* | 6円/1回 |
入浴介助を行った場合(Ⅰ) | 40円/1回 |
個別機能訓練加算(Ⅰ) | 27円/1回 |
口腔機能改善加算(Ⅰ) | 150円/1回 |
若年性認知症利用者受入加算(Ⅰ) | 60円/1回 |
栄養改善加算 | 200/月2回 |
※サービス提供体制強化加算:施設の職員総数に対し介護福祉士の占める割合が70/100以上の場合が(Ⅰ)、50/100以上の場合が(Ⅱ)、職員総数のうち勤続3年以上の職員の占める割合が40/100以上の場合が(Ⅲ)。
認知症デイサービスでは、日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービスなどを提供しています。具体的な内容を見ていきましょう。
・食事
食事そのものをリハビリテーションの一環として考え、認知症の影響に適切に対応しています。
施設によっては、個々人に合わせた食事の提供だけでなく、自分で調理したり配膳したりすることができます。また、季節を感じるイベントの食事なども用意されることがあります。
・リハビリやレクリエーション
認知症の特性に配慮し、落ち着いた雰囲気の中で楽しめるプログラムが組まれています。
脳トレや体操など、認知症に有効なリハビリやレクリエーションが提供されますが、上手く対応ができない場合は、臨機応変に内容や進め方を変更することもできます。
・健康チェック
看護師が血圧測定などの健康チェックを行います。これにより、現在の健康状態を把握し、健康維持や改善に役立てることができます。
また、必要に応じて薬の管理も行う施設もあり、服薬忘れを防止することが可能です。
施設での1日のスケジュール例をご紹介します。
時刻 | 内容 |
9時30分 | 送迎車で自宅にお迎え
バイタルチェック(血圧・体温・脈拍などの測定) |
10時 | 個別機能訓練
レクリエーション |
12時 | 昼食 |
13時30分 | 個別機能訓練
レクリエーション ボランティア活動 入浴(希望者のみ) |
15時 | 休憩(おやつ) |
16時 | 自宅までお送り |
※6時間以上7時間未満でのサービス例
認知症デイサービスを利用することで、支援者(介護家族・ビジネスケアラー)の介護の負担を軽減することができます。
介護者にとっても、外出し、コミュニケーションが増えることで数々の効果やメリットがあります。
認知症デイサービスでは、認知症の高齢者ひとりひとりに適した、効果的なレクリエーションや機能訓練を受けることができます。これらの多様な活動を通して、スタッフや他の利用者とのコミュニケーションの機会が増え、認知症の進行を遅らせることができ、身体機能の維持や改善につながります。
認知症デイサービスでは、認知症の高齢者が日常生活に必要な食事、着替え、入浴、排泄などの行動をリハビリととらえ、可能な限り自力で行うことを支援しています。
自分でできることが増えることで自信を持ち、意欲を引き出すことができます。
認知症デイサービスでは、バランスの良い食事や運動、レクリエーションなどを通じて健康維持や管理に繋がるサービスを提供しています。また、定期的な健康チェックを受けることで体調の変化に気づきやすくなり、健康状態を把握することができます。
認知症デイサービスを選ぶ際には、施設を実際に見学することが大切です。個別見学のほか、定期的に見学会や体験利用を行っている施設もあります。利用するご本人が楽しく過ごせているかどうか、安全面やケア体制などを契約前に知ることができると安心です。
見学の際には、以下の点に注目して契約を検討してみましょう。
一方、普通のデイサービスに比べて事業所数は少なく、また料金も相対的に高いため、例え認知症であっても、認知症ケアに力を入れている普通のデイサービスを検討することもポイントです。
在宅での認知症の介護は、ご家族に大きな負担がかかります。まずは、かかりつけの医師や担当のケアマネジャーと相談し、認知症デイサービスの施設を見学して、利用を検討してみることをおすすめします。
金山峰之(かなやま・たかゆき) 介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。
厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。
元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。