親御さんの介助が増えてきたのをきっかけに、要介護認定の申請を検討し始める方は多いのではないでしょうか。
介護を必要としている方が適切なサービスを利用するためには、支援内容を正しく理解しておくことが大切です。
要介護認定を受けると、介護サービスを利用する際の負担額の一部を限度額の範囲内で補助してもらえる制度があり、要支援1に認定されると、さまざまな介護保険サービスが利用できるようになります。この記事では「もらえるお金=区分支給限度額」を意味します。
「要支援1は具体的にどんな状態なの?」「どんなサービスにいくらかかるの?」といった疑問をお持ちの方に、今回は要支援1に認定されるための基準やサービス内容、もらえるお金について詳しく解説します。
要支援1とは、食事や入浴、排泄など基本的な日常生活における行動はご自身で対応できるものの、身体的な衰えが多少見受けられる状態です。
家事や身支度など体を使う動作に対し、部分的な支援や見守りを必要とします。
要介護認定は、要支援1〜2、要介護1〜5の7段階に区分されています。そのなかで要支援1は最も軽度な状態です。
厚生労働省の令和3年度介護保険事業状況報告によると、要支援1の認定者数は全国で約97,000人、要介護認定者全体の約14%を占めます。
要支援1は介護の必要はなく、認知機能の低下もありません。周囲のサポートを得られれば、これまでと変わらない生活を続けることが可能といえるでしょう。
要支援1の認定を受けるには、2つの要件を満たす必要があります。
詳しい内容について見てみましょう。
要支援1の認定基準は、身体機能の低下です。座ったり立ったりする一部の動作に補助を必要とします。
他にも、着替えや細かい動作が難しい場合は基準に該当します。
要介護認定は上記の症状に加え、厚生労働省が定めた「要介護認定基準時間」をもとに判断します。
要介護認定基準時間は、1日における介護に要する時間です。本人の能力や介助の方法に加え、障がいや認知症の有無をもとに推計しています。
※要介護認定基準時間は、実際の介護に要する時間ではなく、あくまでも要介護の程度を評価するための指標になります。
要介護度別に、以下の基準が定められています。
区分 | 要介護認定基準時間 |
要支援1 | 25分以上32分未満 |
要支援2 | 32分以上50分未満 |
要介護1 | 32分以上50分未満 |
要介護2 | 50分以上70分未満 |
要介護3 | 70分以上90分未満 |
要介護4 | 90分以上110分未満 |
要介護5 | 110分以上 |
要支援1の認定基準時間は25分以上32分未満です。
1日の介護時間が25分未満の場合は要介護状態ではない自立、32分以上の場合は要支援2とみなします。
要支援1の認定には、要介護認定を受けることが必須です。
要介護認定を受けるための、簡単な流れについてお伝えします。
1.自治体の介護保険担当窓口で申請を行う
高齢者ご本人が申請することはもちろん可能ですが、代理人として家族やケアマネジャーが申請を行なっても構いません。
地域包括支援センターなどでも承っています。
2.自宅での訪問調査
要介護認定の申請後、訪問調査が行われます。
訪問調査は、各自治体の職員や委託されたケアマネジャーなどがご本人の自宅を訪問し、心身の状態や介護状況、住まいの環境などについて調査します。
3.主治医による意見書の作成
訪問調査で確認したご本人の心身状態について、かかりつけ医に自治体から直接依頼します。
かかりつけ医がいない場合は、自治体が指定する病院に医学的意見を求めます。
4.審査
一次審査は、訪問調査の結果と主治医の意見書をもとにコンピューターが判定します。
二次審査では、保健・医療・福祉の専門家を集めた介護認定審査会にて要介護度を最終的に決定する流れです。
5.認定通知
要介護認定の審査の結果は、申請から約1カ月後にご本人へ通知します。
要介護認定の申請や更新についての詳しい内容は、下記をご参考ください。
・介護保険料を申請できる人は?申請条件や申請方法について解説
・要介護認定には有効期限があるの?更新の方法や期限が切れたらどうなるのかをわかりやすく解説!
要支援1と要支援2の大きな違いは、身体機能の低下です。
要支援2は日常生活において以下の支援が必要になります。
前述でお伝えした要介護認定基準時間の長さも、要支援1は25分以上32分未満に対し、要支援2は32分以上50分未満と設定されています。
要支援1よりも要支援2の方が、1日あたりの介護にかかる時間が長いことから、症状が重いと判断できます。
要支援1に認定されると、介護予防サービスを利用できます。
介護予防サービスの目的は、生活機能の維持や向上を図り、将来的に要介護状態になるのを防ぐことです。要支援1で受けられる介護予防サービスは以下の種類があります。
・自宅で受ける訪問型サービス
訪問入浴介護、訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション
・施設に通う通所型サービス
通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)、認知症対応型通所介護
・短期間の宿泊サービス
短期入所生活介護(ショートステイ)、短期入所療養介護
・訪問、通所、宿泊サービスを組み合わせて利用する
小規模多機能型居宅介護
・施設での生活するサービス
特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホームなど)
・その他のサービス
福祉用具のレンタル、特定福祉用具の購入、住宅改修など
要支援1の方は、ご自宅で生活しながらサービスを受ける「訪問型」を利用する方が多い傾向にあります。
予防介護サービスを利用するには、地域包括支援センター(または委託を受けたケアマネジャー)による予防ケアプランの作成が必要です。
要介護度に応じて、受けられるサービスの種類は決まります。
介護サービスの内容は各自治体によって異なるため、お住まいの自治体にご確認ください。
要支援1の方は、介護保険を利用して福祉用具のレンタルができます。
福祉用具のレンタルにかかる自己負担額は、所得に応じ1~3割です。
【例】自己負担が1割の方の場合
1か月のレンタル料金が1万円→自己負担額1,000円
福祉用具のレンタルや購入費の利用限度額は、1年あたり10万円です。
要支援1 の方は、以下の福祉用具をレンタルできます。
車椅子や介護用ベッドの保険適用は、要介護2以上です。
要支援1の段階では全額自己負担となるため注意しましょう。
介護保険では自宅のバリアフリーに必要な改修工事に対して、介護保険被保険者1人につき最大20万円の補助金が支給されます。
補助金は要介護認定度に関係なく利用でき、区分別の支給限度額には含まれません。
介護リフォームにかかる自己負担額は所得に応じ1〜3割です。
【例】自己負担が1割の方
リフォーム料金が10万円→自己負担額10,000円
ただし、利用限度額の20万円を超えた分は全額自己負担となります。
保険適用内でのリフォームを希望する場合は、ケアマネジャーに相談し業者の選定をすると限度額内で見積もりを行ってくれるため安心です。
要支援1の方は、自治体や民間の企業、NPO法人などが行う介護予防訪問介護、介護予防通所介護(デイサービス)を自費で利用できます。
1回の利用料金は2,000円ほどです。
サービスの内容によっては、加算や食費など別途かかる可能性もあります。
介護保険サービスに入っていない、おむつの支給、配食、買い物代行、外出の付き添い、訪問理美容なども利用可能です。
要介護認定を受けると、介護サービスを利用する際の負担額の一部を限度額の範囲内で補助する制度があります。
要支援1の支給限度額は、1カ月あたり50,320円です。
区分別に設定されている支給限度額を超えるまでは、1〜3割の自己負担で介護サービスを受けられます。
区分 | 支給限度額 | 所得に応じた自己負担額 | ||
1割 | 2割 | 3割 | ||
要支援1 | 50,320円 | 5,032円 | 10,064円 | 15,096円 |
ただし、支給限度額の超過分は全額自己負担となります。
介護サービスの支給限度額は各自治体によって異なるため、お住まいの担当窓口やケアマネジャーに確認しましょう。
要支援1は要介護認定の中でも身体機能や認知機能に支障が少なく、基本的にはお1人で生活できます。
日常生活で家事や身の回りのことに対し、多少手助けや見守りがあれば十分に一人暮らしを続けることは可能です。
要支援1の介護認定を受けた方が一人暮らしを続けるうえで大切なポイントをお伝えします。
・心身の健康を維持する
心身の健康を維持するには、バランスの良い食事と適度な睡眠など規則正しい生活を送ることが大切です。家族や友人とのコミュニケーションも楽しんでください。
必要に応じて、デイサービスや生活支援サービスの利用も検討してみても良いでしょう。
・周囲のサポート
高齢者の介護状況は急に進行する恐れもあります。家族や支援者の見守りや相談しやすい環境作りが必要です。
ご本人の意向を大切にしながら、デイサービスや生活支援サービスの利用も視野に入れサポートしましょう。
・安全な暮らし
高齢者が一人暮らしをするうえで気を付けることは、思わぬ事故です。転倒など怪我がきっかけで、状態が進む可能性もあります。
高齢者が安全に暮らすために、自宅に手すりの設置や滑りにくい床材へリフォームを検討しましょう。
要支援1は、日常生活に問題がなく比較的お元気な高齢者の方でも、一部の介助を必要とするだけで認定を受ける可能性も十分あり得る区分です。
これまでと変わらない生活を続けるためにも、ご本人やご家族に合った介護予防サービスを活用して、心身の健康を保ちましょう。
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サポナビ編集部