要介護3とは、介護保険制度で定められた認定基準のひとつで、ほぼ全面的な介護が必要な状態を指します。要介護3に認定されると、どんなサービスが受けられるのか? もらえるお金はいくらなのか?
「要介護3」に認定された際に知っておきたい知識と給付金制度について解説していきます。
要介護3になると、高齢者が日常生活を送る上で、身体的にも精神的にも支援が必要となります。具体的には、どんな状態や症状があるのでしょうか?
要介護3の人は、自分で立ち上がったり歩いたりすることが困難で、移動は車椅子や歩行器を利用することが多くなります。排泄、入浴などが自力でできず、身だしなみを整えたり、食事をしたりすることも一人ではできません。
常に見守りが必要ですが、寝たきりの状態ではありません。また、問題行動や理解力の低下、認知症の症状が見られることも多くなります。
要介護3の人は、判断力や記憶力が低下し、時間・場所・人の認識や、物事を順序立てて行うことが難しくなってきます。
厚生労働省から公表されたデータによると、要介護3の方が介護を必要とするようになった主な原因の1位が認知症で、全体の約3割を占めています。
認知症による日常行為として、徘徊や妄想、奇声、誤食、不潔行為などがあげられます。認知症の進行により心理的にも不安定な状態におかれるため、イライラして暴力や暴言をふるうこともあります。そのため、要介護3からはより本格的な介護が必要になると考えられています。
より詳しく:要介護3とはどんな状態?受けられるサービスや介護費用を解説
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要介護度は、主に厚生労働省が定めた「要介護認定等基準時間」を基準に認定されます。
これは1日のうちで介護に必要とする時間を表したもので、本人の能力、介助方法、認知症の進行度により推計されています。
要介護3の認定基準は「70分以上90分未満」とされていますが、認知症の進行も要介護3と認定される大きな要因になります。
要介護3に認定されると介護給付が受けられます。以下に主なサービスやもらえるお金について紹介します。
要介護3の人は、常時介護が必要となるため、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの施設に入居して、24時間体制で介護を受けることができます。
一時的に介護をお願いしたい場合は、短期入所(ショートステイ)できる施設も利用できます。また、医療やリハビリテーションなどの医療的ケアが受けられる施設もあります。
内容 | 詳細 |
入居施設 |
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小規模の入居施設 |
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短期間の入居施設 |
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要介護3の状態になると、在宅で介護をする場合は家族の負担も大きくなってきます。
入浴やリハビリなど特に負担のかかるものはヘルパーの訪問サービスを検討するとよいでしょう。在宅介護と通所サービスを組み合わせたり、定期的にショートステイ(短期入所生活介護)を利用することも可能です。
内容 | 詳細 |
在宅で受けられるサービス |
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日帰り通所で受けられるサービス |
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訪問・通所・宿泊を組み合わせたサービス |
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要介護3の方を自宅で介護する場合、様々な設備設置やバリアフリーに対応したリフォームが必要不可欠になってきます。
介護保険を利用すれば、介護を目的とした自宅のバリアフリー化や手すりの取り付けなど、安全性向上のために必要な改修工事に対して補助金を受けることができます。
介護リフォームへの支給額は介護保険被保険者1人につき最大20万円です。ただし、20万円を超える工事を行うときは、超過分は全額自己負担となるので注意しましょう。
所得に応じて、このうちの1〜3割が自己負担となります。
例えば、介護リフォームに10万円かかる場合、自己負担が1割であれば、自己負担額は1万円です。
要介護3では在宅介護の負担を軽減するために福祉器具が必要となります。介護保険を使用してレンタルすることができ、購入するよりも費用を安くおさえることができます。
福祉器具のレンタルにかかる自己負担額は、所得に応じて1割〜3割です。
自己負担が1割の場合、1か月のレンタル料金が1万円なら、支払う料金は1,000円です。
また、介護用品・福祉器具を購入する場合、自己負担1割〜3割での購入が可能で、年間最大10万円まで援助を受けられます。
自己負担1割の場合は、1万円の介護用品を1,000円で購入できるようになります。
介護保険を利用してレンタルできる福祉器具
介護保険を利用して購入できる福祉用具
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要介護認定を受けると、介護サービスを利用する際に限度額の範囲内で負担額の一部が援助されます。支給限度額(保険給付)は、要介護度に応じて上限が定められていて、要介護3の場合の支給限度額は、1ヶ月あたり最大で27万480円です。
介護サービス利用料は、所得に応じ1割〜3割が自己負担となります。
要介護3では、サービス利用料が1ヶ月27万480円の上限額を超えた場合、その超過分は全額自己負担となります。
要介護3の区分支給限度額 | |||
27万480円 | |||
自己負担の割合 | 1割 | 2割 | 3割 |
自己負担額 | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 |
要介護3で受けられる給付金には、以下のようなものがあります。
高額介護サービス費制度とは、1ヶ月に支払った利用者負担の合計が負担限度額を超えた時は、 超えた分が払い戻される制度です。
所得によって基準額は異なりますが、最高でも世帯あたり4万4,400円が上限となります。
高額介護サービス費制度の自己負担上限額
区分 | 月額の自己負担上限額 |
課税所得690万円以上
(年収およそ1,160万円以上)の世帯 |
140,100円 |
課税所得380万円~690万円未満
(年収およそ770万円~1,160万円未満)の世帯 |
93,000円 |
市町村民税課税~課税所得380万円未満
(年収およそ770万円未満)の世帯 |
44,400円 |
世帯全員が市町村民税非課税の世帯 | 24,600円 |
世帯全員が市町村民税非課税の世帯のうち
前年の課税年金収入額+その他所得 の合計が80万円以下の個人 |
15,000円 |
生活保護受給者の個人 | 15,000円 |
なお、この高額介護サービス費の払い戻しを受けるためには、申請が必要です。対象となった方には自治体から通知が届くので、期限内に申請しましょう。
障害者控除とは、障害のある人やその家族が受けることのできる税制度です。
65歳以上で要介護認定を受けた方は、障害者手帳を取得していなくても、市町村が発行している「障害者控除対象者認定書」を持っていれば障害者控除を受けることが可能です。
要介護3ではおむつの利用も増えるため、紙おむつ給付とおむつ代助成制度の対象者となります。
各市区町村の保健福祉課や地域包括支援センターに申請し、給付決定を受けます。
自治体により助成内容は異なり、現物支給の自治体もあれば、月額支給金の上限を5,000円〜1万円に定めている自治体もあります。
また、医師による「おむつ使用証明書」があれば、医療費控除を受けることができます。
要介護3とは、日常生活でほぼすべての動作に介助が必要な状態です。そのため、介護保険制度により、施設介護サービス、在宅介護サービス、介護リフォームの補助、福祉器具のレンタル、給付金制度など、様々な支援を受けることができるようになります。
それぞれの生活環境に合ったサービスを利用して、介護保険を適用させながら介護の負担を減らしていきましょう。
木場 猛(こば・たける) 株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー)
介護福祉士 介護支援専門員 東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 国内ビジネスケアラーデータ取得数最多の仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ監修や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。 3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。
著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』
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