ダブルケアとは、子育てと介護の同時進行(狭義のダブルケア)※1を意味します。 2022年の弊社のビジネスケアラー実態調査では、30,40代のビジネスケアラーの4割は子育てと介護を両立しているダブルケア※2という実態が見えてきました。
実際に子育てと介護と仕事の両立を目指しているビジネスパーソンからは、「職場で育児の話はできるけれど、介護の話はしにくい」「育児休暇を取っている人はいるけれど、介護休暇を取っている人は知らない」という言葉を耳にします。
また、ビジネスケアラーの中でも、ダブルケアラー、つまり育児と介護が同時進行しながら働いている人からは「職場に前例がなく働きづらい」「離職しようか迷っている」と相談を受ける機会が増えつつあります。
職場での良好なコミュニケーションは、ビジネスケアラーが働き続けられるか、仕事の成果を出せるかの重要なポイントです。この記事では、介護と育児が同時進行するダブルケアラーの目線も含め、職場の理解と協力を得るための視点や伝え方のヒントをご紹介します。
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勤務先の人員構成、上司の家族構成等をわかる範囲でイメージしましょう。例えば、男性上司の場合、妻が介護を主で担当しているケースも珍しくありません。伝えたい相手が介護や育児にどれほど携わっていそうかを想像すると伝え方のイメージを持ちやすくなります。
上司の立場を考え、企業文化や価値観をイメージしましょう。家庭との調整に関する理解がどの程度ありそうか、日常会話から上司の関心事を把握しましょう。上司の立場やプレッシャーを理解することも大切です。
自分の制約、仕事への影響を言語化しましょう。例えば、テレワークやフレックス制度を利用することで仕事を続ける環境を作れるのか、時間や場所の制約を含め「できること」と「できないこと」を具体的に理解しておくことが大切です。
忙しい仕事のタイミングや業績評価時に相談するのは避け、非公式の場で相手の負担を考慮して相談してみてはいかがでしょうか。
日々の雑談がある職場であれば、例えば「保育園に迎えに行くついでに父の薬を取りに行く必要がある」など、自分自身の具体的な行動を伝えると上司に日頃の状況を理解してもらいやすくなる可能性があります。
日頃から上司に伝えながら家庭の事情をさり気なく伝えつつ、別のタイミングで上司がリラックスしているタイミングで「少し話の中で触れさせていただいていたのですが、介護で・・・」とステップを踏んで情報を伝えてみてはいかがでしょうか。そうすることで、話す側も切り出しやすくなり、聞き手の上司も受け止めやすくなる可能性があります。
もし、日々の雑談で伝えにくい関係性の場合は、口頭で伝えるか、文章で伝えるかを考えましょう。
自分が伝えやすい方法と相手が受け止めやすい方法の両方の観点から選択しましょう。
上司との距離感がある場合は、まずメール等の文章で整理して伝え、その文面に「現時点で仕事に影響はありませんが、状況の変化によってはご相談させていただくかもしれません」や「ご都合の良い時にご相談のお時間をください」など、次のアクションにつなげやすい言葉を添えるとよいでしょう。
介護や子育ての具体的な状況を説明し、それが業務にどのような影響を及ぼしているかを示しましょう。
例えば、通院介助、施設往訪、保育園送迎、ケアマネージャーやヘルパーとの連携、保育園・学校・塾の保護者会等が重なる状況を具体的に示し、仕事にどのように影響があるかを説明できるとよいでしょう。
あわせて、家庭内での分担可否を含めて伝えることで、あなたにかかる負荷がみえやすくなります。
もちろん、開示しにくい情報は伝える必要はありませんが、対応すべき出来事が複合的に複数重なっている状況を伝えることで、上司に状況を理解してもらいやすくなる可能性があります。
感情的にならず、事実に基づいた説明を行いましょう。心理的な距離感が近い人の介護や子育てほど感情が動きます。一方、聞き手の上司側からみると、感情的な用語が入りすぎると「具体的に何が大変なのか、何の相談を受けているのか」が捉えにくくなります。
日頃の上司への感謝の意を伝えつつ、対応案を示すことで上司側も一緒に考えてくれる環境を作りやすいかと思います。
具体的な提案内容としては、
・時間を使えれば対応できるが、今の状況では対応が難しい業務を洗い出す
・業務に支障がない範囲でゴールや期限をみなおす
・自分で対応することが難しい業務は別の人に協力依頼する
など、現実的な選択肢まで落とし込んでから相談ができるとよいでしょう。
また、どの現場にも課題はありますので、「現状の業務フローでは対応が難しいが、やり方をこう変えたら自分も対応できる」などの提案があれば相談のみではなく、業務改善の提案にもつなげられるチャンスになります。
もしあなたがおかれている状況が上司に理解してもらえなさそうな場合は、他の管理職や人事部門と協力して調整の支援を求めることを検討しましょう。介護や育児の当事者になった経験がない、もしくは関わりが浅い上司の場合は、あなたが具体的に事実を説明しても、あなたの状況がイメージできず、コミュニケーションがスムーズにいかない可能性が考えられます。
その場合は、介護や育児の経験のある人事部の人や他に上司がいれば、その人に相談をしてみましょう。もし勤務先内に相談相手が見つからない場合は、ケアラー支援団体、ダブルケアラー支援団体のウェブサイトをのぞいてみてください。相談したい先が見つかるかもしれません。
上司が協力的である場合でも、家庭での状況の変化を共有することは大切です。介護も育児も個別性が高いため、上司が想像しているあなたの状況と実際のあなたの状況にギャップがある可能性があります。できるかぎりギャップが少なくなるように日々コミュニケーションを図れるとよいでしょう。
ビジネスケアラーの初期ハードルは「今まで対応できた仕事が同じ方法ではできなくなる」という事実を受け止めることかもしれません。
育児で時短勤務を選択したことがある方はその状況を経験済みでしょう。介護は育児とは別の大変さがあります。
職場に伝えることでの悪影響を考え、伝えない選択肢を持っている方もいらっしゃると聞きますが、あるダブルケア経験者は「伝えにくいことほど先に伝えると気が楽になる。ダブルケアの状況を共有しておくことで、例えば、仕事を前倒しで対応しても、周囲を急かす意図はなく、自分に事情があるから早めに対応していることが伝わる。仕事が進めやすくなった」とコメントをしていました。
周囲からあなたのケア状況がわかるようにしておくと、急な休暇も取りやすくなる可能性があります。
ライフステージに関わらず、家庭と仕事の両立を目指すためにぜひ職場の上司とのコミュニケーションについてご参考にしていただければと思います。
出典
※1 子育てと介護のダブルケア‐事例からひもとく連携・支援の実際‐中央法規出版、2023年、P.3
※2 調査機関:株式会社リクシス
調査期間:2019 年5 月から2022年5 月末
調査手法:株式会社リクシスが提供する仕事と介護の両立支援プログラム「LCAT」の企業受講者の診断回答結果を解析
調査対象:従業員500名以上の企業従業員(LCAT企業受講者)
サンプル数:ビジネスパーソン30,878名
https://www.lyxis.com/news/2022/07/06/2249/?fbclid=IwAR2xW__3kFyzUuLX4heqsaelPoTEiIeBY_ckCrknetr7fb6iRXjPwRnBdlo
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サポナビ編集部