ダブルケアの当事者インタビュー|神奈川県在住30代女性の実例

ダブルケアの当事者インタビュー|神奈川県在住30代女性の実例

ダブルケア当事者の基本情報

ダブルケアの当事者にインタビューを行いました。

神奈川県在住 30代の英子さん(仮名) は、現在65歳の母親の介護を行いながら、シングルマザーとして小学校高学年の息子を育てています。英子さんの母親は、3年前に若年性アルツハイマーと診断されています。英子さんの父親は4年前に他界しており、キーパーソンは英子さんです。

 

生活環境と日常のケア体制

英子さんと息子はマンションで二人暮らしをしており、同じマンションの上の階に母親は一人暮らしをしています。

英子さんは、現在は自営業をしており、週6日利用している母親のデイサービスの送り迎えは、ヘルパーが対応しています。

英子さんは、毎日母親の食事のお世話や状況確認を行い、息子の週3回の習い事の送迎家事仕事を並行してこなす多忙に極めている状態です。

 

若年性アルツハイマー診断後の混乱と家庭への影響

英子さんの母親は、若年性アルツハイマーと診断された頃から、約2年間は混乱が強く続き、精神的に不安定な状態だったそうです。その過程で、英子さんと英子さんの息子は苦しい想いをされてきました。

例えば、当時、母親は自分で家の鍵を開けることができたため、夜中でも英子さんの自宅に訪れ、怒鳴り散らしていくことが頻繁にあったそうです。時に、英子さんは母親に追いかけられて階段から突き落とされそうになったこともあり、小学生の息子が仲裁に入ることもあったそうです。

 

在宅介護を選択した理由と葛藤

この様な辛い状況が続いた中でも、英子さんは母親の認知症の進行を遅らせたい、母親らしく生活してほしいという想いから在宅で介護を行う選択をされています。

しかしその反面、英子さんは日常生活の中で、どうしても介護が必要な母親のことが中心となってしまい、息子に精神的な負担をかけているのではないかと心苦しく感じることがあったそうです。

 

学校との情報共有による支援

英子さんは、息子の小学校の先生に母親を介護していることや息子の置かれている現状について話をしました。その事により、小学校の先生の間で情報が共有され、学校が一眼をなり英子さんの息子の様子を気にかけてくれたといいます。

小学校側の対応により、英子さんも英子さんの息子も安心感がうまれ、精神的に救われたそうです。

 

地域との関係構築と見守り支援

また、英子さんは近隣の住民や地域の商店街の方にも、母親の介護をしていることを説明し、ご挨拶に回られています。

その後、事情を理解された地域の人たちが、英子さんの母親や英子さんの息子、英子さん自身の事も気にかけてくれる様になり、母親が1人で歩いていれば地域の方が自宅まで届けてくれる方も現れ、地域の方々がサポートをしてくれるようになったそうです。

 

ダブルケア当事者からのメッセージ

最後に、当事者である英子さんよりダブルケアに向き合っている方へのメッセージです。

 

 

「恥ずかしがらずに、隠さずにダブルケアをしていることを周囲に話した方がいいと思います。そうする事で、地域の目で見守ってもらうことができますし、手を差し伸べてくれます。例えば、挨拶をしたり地域の行事に顔を出すのも良いかもしれません。ちょっとした会話から地域の人と関係を築いていくと良いと思います。」

 

 

この記事を書いた人

室津 瞳(むろつ・ひとみ)
NPO法人こだまの集い代表理事 / 株式会社チェンジウェーブグループ シニアプロフェッショナル / ダブルケアスペシャリスト / 杏林大学保健学部 老年実習指導教員
介護職・看護師として病院・福祉施設での実務経験を経て、令和元年に「NPO法人こだまの集い」を設立。自身の育児・介護・仕事が重なった約8年間のダブルケア経験をもとに、現場の声を社会に届けながら、働きながらケアと向き合える仕組みづくりを進めている。
【編著書】『育児と介護のダブルケア ― 事例からひもとく連携・支援の実際』(中央法規出版)【監修】『1000人の「そこが知りたい!」を集めました 共倒れしない介護』(オレンジページ)【共著】できるケアマネジャーになるために知っておきたい75のこと(メディカル・ケア・サービス)

この記事は役に立ちましたか?

課題が解決しなかった場合、下記から専門家に直接質問ができます。

無料会員に登録して専門家に質問する

関連記事

サポナビQAバナーサポナビQAバナー