
育児と介護、どちらも「待ったなし」。
相手のペースに合わせるうちに、自分の気持ちは後回しになりがちです。
「なんで私だけ」「もう限界かも」――そう感じるのは自然なこと。
そんなとき大切なのは、“ためない仕組み”をもつことです。
育休中、0歳と2歳の男の子を育てながら、両親と一緒に副介護者として近所に住む90歳の祖母の世話も担う佳代さん。
祖母は要介護1で、週に2回デイサービスを利用していますが、普段は杖を突きながら自分でなんとか歩くことができています。
赤ちゃんを抱っこし、2歳児と祖母の手を引いて歩く“3人手つなぎ散歩”が日課です。
「おばあちゃん、もう少し」「ママ、抱っこ〜」一日中、誰かを励まし、誰かの声に応える日々。
笑顔を保とうとするほど、心の中では“感情の渋滞”が起きていました。
そんなとき佳代さんが見つけたのは、夜にノートを開いて気持ちを書き出す方法。「ジャーナリング」とも呼ばれる、自分の思考や感情を吐き出しながら整理する手法です。
「疲れた」「もう無理」「でも、子ども達やおばあちゃんと今日も買い物に行けた」
どんな言葉でも、誰にも見せない前提でノートに書きます。
ノートを見た後、自分の感情を客観的に振り返ると、
次第に家族への言葉も変わっていきました。
「早くして!」が「もう出る時間だよね?」に。
「なんで手伝ってくれないの!」が「これ、お願いできる?」に。
小さな言い換えが、家族との関係をやわらげることにも役立ちました。
佳代さんの「夜ノート」のように、感情を切り替える方法は一つではありません。
他にも、ほんの3分でできるリセット法が考えられます。ご自分に合ったやり方をぜひ見つけてみてください。
今日ご紹介したのはあくまで一つの事例の話ですが、もしよかったらご参考になさってください。
人によって合う方法はさまざまです。呼吸でリセットするのもよし、気分転換の音を取り入れるのもよし。
もしかしたら、今日の気持ちをノートに書くだけで、
明日の自分に少し余裕が戻ってくるかもしれません。
室津 瞳(むろつ・ひとみ)
NPO法人こだまの集い代表理事 / 株式会社チェンジウェーブグループ シニアプロフェッショナル / ダブルケアスペシャリスト / 杏林大学保健学部 老年実習指導教員
介護職・看護師として病院・福祉施設での実務経験を経て、令和元年に「NPO法人こだまの集い」を設立。自身の育児・介護・仕事が重なった約8年間のダブルケア経験をもとに、現場の声を社会に届けながら、働きながらケアと向き合える仕組みづくりを進めている。
【編著書】『育児と介護のダブルケア ― 事例からひもとく連携・支援の実際』(中央法規出版)【監修】『1000人の「そこが知りたい!」を集めました 共倒れしない介護』(オレンジページ)【共著】できるケアマネジャーになるために知っておきたい75のこと(メディカル・ケア・サービス)
介護プロ編集部