2024年7月26日、リクシスは、第19回『全国ビジネスケアラー会議』を開催いたしました。
これから高齢社会がより一層加速し、仕事と介護の両立が当たり前の時代がやってきます。
本オンラインセミナーは、高齢化の流れが加速する日本社会において、現役世代として働きつつ、同時にご家族の介護にも携わっている「ビジネスケアラー」の方々とその予備軍となる皆様に向けたセミナーです。
今回のテーマは「今から知っておきたい、保険外サービスの活用法」。
忙しいビジネスケアラーにとって、介護サービスは非常に強い味方です。ですが、実は介護保険サービスには、できることとできないことがあります。
介護保険サービスでできることとできないことを把握し、状況に応じて保険外サービスを上手に利用していく方法を、今のうちから知っておくことが大切です。
今回は、保険外訪問介護のマッチングプラットフォームである「イチロウ」に事業責任者として従事し、ビジネスケアラーの課題を現場から支える仕組みを構築していらっしゃるイチロウ株式会社の細川さんより解説いただきましょう。
この記事では、
などのテーマでまとめています。
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①介護保険でできること・できないこと〜親のケアと働き手の暮らしを支える!今から知っておきたい保険外サービスの活用法〜(前半)
②介護保険でできること・できないこと〜親のケアと働き手の暮らしを支える!今から知っておきたい保険外サービスの活用法〜(後半)⇐このページのテーマ
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細川 寛将(ほそかわ・ひろまさ)
イチロウ株式会社 執行役員事業責任者
作業療法士/保健学修士
大学卒業後に回復期リハ病棟で3年勤務した後、医療法人にて有料老人ホーム運営責任者を歴任。
その後、株式会社エス・エム・エスにてセールス事業所長を経て現職。
現在は保険外訪問介護のマッチングプラットフォームである「イチロウ」に事業責任者として従事し、ビジネスケアラーの課題を現場から支える仕組みを構築している。
介護保険ではできないサービスというのがどんどん増えてきています。
代表的なもので言うと、電球を変える、庭の手入れ、窓拭きや大掃除をする、院内に入って同行すること(通院に付き添うことは可能)、当日や明日などの急な要望への対応などです。
ご本人の身体介護や生活支援の範囲を超えるものは、基本的にできないことになっています。要介護者ご本人以外のことを行うこともできませんので、例えば家族分の料理を作るということも介護保険サービスではできません。
また、早朝や日祝など時間外での支援や、2時間以上の長時間の支援も、公的介護保険サービスでは対応が難しいです。
ルールが厳格になっていくというところが、公的介護保険サービスの使いづらさにつながっています。
介護を依頼しても頼めない・断られてしまうということが多く、介護家族が自分を犠牲している状態になっていると言えるでしょう。
イチロウでは、必要な介護サービスにつながれて、依頼したいことが何でも依頼でき、介護家族が自分を犠牲にしない状態を実現したいと考えています。
介護家族の負担軽減のために、経済産業省を中心に、介護保険外サービスの利用を推進しています。
見守り服薬、各種手続きや資産管理など、介護保険サービスではできないことを介護保険外サービスを併用して利用することで、負担を軽減していただく方が増えてきています。
実際に何ができるのかということを細かく見たいという方は、経済産業省のサイトを検索して見てみてください。
仕事と介護を両立していく上では、現状では次のような課題がある状況です。
・「介護保険外サービス」の存在を知らない人が多い
・従業員の介護における情報を把握しきれていない企業があり、両立支援の充実に企業ごとの格差が生まれている
・社会全体の介護リテラシーが低い
まずは、介護保険サービスが大前提としてあるけれど、その他にも介護保険外サービスというものがあること、困った時に使えるサービスはたくさんあるということを知っていただきたいです。
「保険外サービス=高い」という認識で、高いサービスだから世帯年収が高い人しか使っていないと思っている方が多くいらっしゃいます。
しかし、イチロウを通して介護保険外サービスをご利用いただいている方の中には、介護負担1割の方が6割ほどいらっしゃいます。
介護保険外サービスは高いからそもそも視野にいれていないという方もいらっしゃいますが、実際に全体を見た時には「これくらいの費用だったら使える」ということがたくさんあります。
私たちは介護家族には、次のような課題を持っています。
・介護保険サービスでは法令上の利用制限によって依頼できない介護が存在するので、依頼したいことができない
・既存の介護保険外サービスだと料金が割高で、すぐに利用できない場合がある
イチロウではこういった課題を解消するサービスを提供しています。
イチロウでは、介護を必要とするご本人・ご家族からご連絡をいただくと、最短で2時間後からマッチングする可能性があります。
イチロウで選定している介護士を顔写真付きでご紹介し、マッチングすればご利用可能です。24時間365日利用が可能で、利用時間の制限はありません。
また、もともと介護士だったりリハビリスタッフだったりした現場のことをわかっている人がケアコンシェルジュとして仲介役を担います。何かあった場合に丸投げしていただくこともできます。
入った後にも、2時間後にご家族などにWEBでレポートが共有されます。こちらのレポートはケアマネジャーにも共有可能です。
イチロウのケアパートナーである介護士は、採用率8%の厳しい基準で選んでいます。その為、品質には自信をもってサービスを提供しています。
8都市で50,000回以上サービスを提供していて、毎月ご利用数が増えている状況です。
おかげさまでメディアでも多く取り上げていただいています。
大きな取り組みとして、介護保険外サービスをまとめていこう・質を担保していこうと、経済産業省として動いているということも、ご紹介させていただきます。
実際にイチロウのサービスを使っているのはどんな人なんだろうと思う方もいらっしゃるでしょう。
ビジネスケアラーの方に多く使っていただいていますので、その事例をいくつかご紹介させていただきます。
介護者 |
91歳。女性。要介護4で介護なしでの生活が難しい。 |
介護家族 |
60代。介護者の息子 。 教員の仕事で週3日程度は職場に通う必要がある。職場までは片道2時間以上かかる。 |
介護が始まったきっかけ |
自宅での転倒 |
状況 |
在宅勤務しながら介護にあたるが介護保険サービスだけでは賄えていない |
介護保険サービスの隙間を埋める形で介護保険外サービスを利用しようと考え、イチロウを利用し始めました。
サービスの内容も自分で決めることができるのですが、一例としては「母親の見守りとその合間に洗濯や掃除をしてもらう」というものです。
仕事に行く時には1日家を空けてしまうので、その間誰もいないのは心配だったとのこと。見守るだけではなく、その他の用事も依頼することができますので、介護家族の負担を軽減することができます。
介護家族がしてほしいと思う要望に応えることができるのが、保険外サービスです。
利用費用としては月6万円程度で、母親の年金から工面しています。経済的な負担は小さくないですが「介護保険には限界があるので、保険外サービスは必要だと思います」という所感をお聞きすることができました。
介護者 |
96歳。男性。夫婦で暮らしている。要介護4。支えや軽微な支援があれば1人で移動可能。 |
介護家族 |
ケアマネジャーからのご相談。 ご高齢の奥様がメインで介護をしている。 利用者様の息子様は夫婦で暮らしていて、介護者の自宅までは車で1時間のところに住んでいる。 |
相談内容 |
夜間に不穏になることが多いのだが夜間対応は家族では難しいので、見守りつつ不穏時に対応してほしい。 |
老老介護で夜間の対応が難しいため、早朝・夜間のみ入らせていただいたというケースです。見守りをしながら、何かあれば訪問看護師の方とも連携をとっていきました。
ずっとお願いするというわけではなく、状況が落ち着くまで入らせていただいたというケースです。環境の変化などで状況が変わることもありますので、その時に、一時的にご利用いただく方も多いです。
介護者 | 93歳。男性。要介護4。独居。 |
介護家族 | ケアマネジャーからの相談。家族は近隣に住んでいるが仕事の都合で対応が難しい。 |
相談内容 | 週3回のデイサービスの前後に送り出しや見守りを行って欲しい。転倒防止のため、基本的には誰かがいる環境にしたい。 |
デイサービスの利用と組み合わせていただいた例です。デイサービスの送り出しやお迎えが難しいため、そこをお手伝いさせていただきました。
介護保険サービスと合わせて、家族がいない時間帯に入らせていただくことも多いです。
事例でも出てきたように「介護保険サービスだけ」「介護保険外サービスだけ」ではなく、組み合わせて使っていただく方が増えています。
退院直後だけ、土日だけ、早朝深夜だけ、少し休みたい時だけなど、このケースだけで使うなど、様々な組み合わせを考えることができますので、選択肢のひとつとして持っていていただくと良いかと思います。
最近ではご家族からのご相談だけではなく、ケアマネジャーからのお問い合わせをいただくことも増えました。
少しずつ介護保険サービスと介護保険外サービスを組み合わせるということも認知されてきているかと思います。
介護は終わりがいつになるかわからないものです。
介護に「いくらかかるか」ということを考えるのではなく、まだ親御さんが元気な時に話し合っておいて、ご両親のお金を使って介護計画を立て「いくらかけるか」を決めておくと良いでしょう。
その際、100歳までのプランを考えておくというのも、ひとつ良い考え方かなと思っています。
介護は個人戦ではなくチーム戦です。
突発的に始まるもので、明日から生活が変わるということも起こり得ます。
1人で抱え込むのではなく、兄弟・親戚・近所・介護サービス(地域包括)・国の制度・会社の制度などをフルで使って、家族が負担なく介護を続けていきましょう。
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サポナビ編集部