免許返納する目安の年齢は?手続き方法や返納しないケースについても紹介

免許返納する目安の年齢は?手続き方法や返納しないケースについても紹介

免許返納の年齢の目安

日本では現在、免許返納には「ある年齢になったら返納する」といったルールはなく、年齢制限が設けられていません。そのため、高齢者に限らず、若い世代の人でも免許の返納は可能です。 

では、実際に何歳で返納する人が多いのでしょうか?推奨年齢が何歳なのか、気になる方も多いでしょう。

以下は平成26年〜令和4年までの65歳以上の免許返納数です。

免許返納数推移

参照データ:警察庁|運転免許統計

70~80歳までに免許返納を行う人が多い

グラフの割合を見てみると、65~74歳の免許返納数が全体の約半数以上を占めている事がわかります。次いで、80歳までには免許を返納している人が多いようです。

70歳を超えると、運転免許証を持っている方は免許の更新時に高齢者講習を受ける必要があります。

高齢者講習(普通自動車対応免許所持者)は座学・運転適性検査(60分)実車(60分)の約2時間の講習時間がかかる上に、受講には手数料が必要です。

高齢者講習は予約制のため、いつでも自由に受けられるわけではありません。

そこのような免許更新時の煩わしさが理由で、免許返納をしている方もいるかもしれません。

高齢者講習は5種類

以下のように時間と費用が異なります。

①【高齢者講習】
・70歳以上が受けられる一般的な講習
・75歳未満

認知機能検査第3分類 2時間 5,100円
認知機能検査第2分類
認知機能検査第1分類
3時間 7,950円

 

②【シニア運転者講習】
・70歳以上が受けられる
・高齢者講習と同じ内容
・住所地以外でも受講可能

認知機能検査第3分類 2時間 5,100円
認知機能検査第2分類
知機能検査第1分類
3時間 7,950円

 

③【チャレンジ講習】
・身体能力低下による運転への影響を確認する講習
・75歳以上は事前の認知機能検査の結果が、「記憶力・判断力に心配ありません」と判定になった人のみ受講可能
・合格後、簡易講習を受ける必要がある

1人約30分 2,650円

 

④【特定任意高齢者講習(簡易講習)】
・チャレンジ講習受講後に受ける簡易講習
・高齢者講習の代わりとなる

60分以上 1,800円

 

⑤【運転免許取得者教育】

・高齢者講習と同等の運転技術の向上を目的とした講習

75歳未満
認知機能検査第3分類
2時間以上 教習所により異なる
認知機能検査第2分類
認知機能検査第1分類
3時間以上 教習所により異なる

 

免許更新の際は、高齢者講習受講後に交付される終了証明書が必要となるため、免許更新の前に高齢者講習を受講します。免許更新時は講習手数料のほか更新手数料2,500円が必要です。

75歳以上になると認知機能検査も必須

75歳以上は高齢者講習に加え、認知機能検査も受ける必要があります。認知機能検査とは、記憶力や判断力の低下があるか簡単な質問で測定する検査です。認知機能検査が増えるため、受講時間も長くなり、更に手数料も増えます。

認知機能検査の所要時間30分、手数料1,050円です(2023年9月時点)。

 

【認知機能検査の内容】

・手がかり再生
16種類の絵を記憶し、何が描かれていたかを回答する検査
・時間の見当識
検査時の年月日、曜日及び時間を回答する検査

認知機能検査で認知症のおそれの有無が判定されます。その結果によって決まるのが、受けるべき高齢者講習の分類です。また、認知機能検査で認知症のおそれありと判定されてしまい、さらに医師からも認知症と診断された場合は、運転免許の取り消し、または停止となります。

免許の更新期間もだんだん短くなってくるため、70歳を超えて1回目や2回目の免許更新のタイミングで免許を返納する人が多く、80歳までにはいろいろな理由で免許を返納する人が多いようです。

運動能力を目安とする場合もある

年齢を重ねることでどうしても運動能力が低下してきますので、運転に必要な運動能力に自信がなくなっていくこともあります。

以下のような症状が見られたら返納を検討してみるのも良いでしょう。

  • 右左折のウインカー操作を間違えることがある
  • カーブをスムーズに曲がれないことがある
  • 歩行者、障害物、ほかの車に注意を払えないことがある
  • 車庫入れのときなど、塀や壁をこすることが増えた

 

免許返納のやり方

コワーキングスペースで勉強をするアジア人女

・免許証の自主返納の手続きの場所
 最寄りの警察署または運転免許センターで行います。 

・申請時に必要な書類と手数料 

  1. 運転免許取り消し申請書(窓口にて取得できます)
  2. 運転免許証
  3. 印鑑(自治体によっては不要の場合あり)
  4. 手数料は必要なし

・免許証の自主返納の手続きの流れ
警察署または運転免許センターに行き、運転免許取り消し申請書に必要事項を記入し、印鑑が必要な場合は押印をして運転免許証と一緒に窓口に提出しましょう。

これで免許返納の手続きは完了です。

所要時間としては20~30分程度のため、あっという間に完了します。免許証の自主返納では手数料はかからないので、お金も必要ありません。このように免許証の自主返納手続きは、時間もお金もかからずとても簡単にできます。

もし、病気等で本人が直接申請に行けない場合は、代理人が必要書類を用意して来庁することで、返納手続きを行うことができます。

また、運転経歴証明書を同日中に交付してもらいたい場合には、運転経歴証明書交付申請書を記入し、写真の撮影の後、手数料1100円を支払って受け取ることができます。

警察署によっては証明写真要持参のところや同日発行不可のところもあります。事前にしっかり確認をしてから行きましょう。

返納手続きをする際の注意点

返納予定者が一人で自動車に乗って来てしまうと、帰りの時点では免許を持っていない事になるため、自分で車を運転して帰ることができません。

必ず運転できる付き添いの方と一緒に行くか、公共交通機関やタクシーを使って手続きを行うようにしましょう。

 

免許返納する場合のメリット

夫婦

免許返納は事故を防ぐだけでなく、さまざまなメリットがあります。

自動車保険に加入する必要がなくなる
免許証を返納するということは、車の運転ができなくなるため当然任意自動車保険に加入する必要もありません。保険料の支払いが不要になり、経済的なメリットがあります。

運転経歴証明書を身分証明にできる
免許返納後は、車が運転できないこと以外は身分証明書としても使える運転経歴証明書の交付申請が可能となります。

運転経歴証明書は顔写真付きの身分証明書として利用できる上、有効期限が存在しないため、更新の手間も掛かりません。

また、65歳以上で運転経歴証明書を持つと、自治体や民間企業の特典を受けられます。

運転経歴証明書を提示で特典が受けられる
特典内容は自治体や企業により異なりますが、運転経歴証明書を提示することで様々な特典が使えることがあります。

以下で特典や割引の一例を見てみましょう。

<免許返納後に受けられる特典の例>
 タクシーやバスの運賃割引
百貨店の宅配料金の割引
銭湯、飲食店の料金割引

地域によって特典の内容は異なるので、自分の居住地域の特典を確認してみましょう。

 

まとめ

  • 免許の返納は70歳代の間に行う人が多い
  • 免許の更新が少し複雑になる
  • 返納と同時に運転経歴証明書を発行する人がほとんど
  • 運転経歴証明書は公的な身分証明として使用できる
  • 免許自主返納すると特典が受けられる

免許を返納するタイミングや、そもそも返納しないという判断も人それぞれですが、運動能力が低下してきたと感じたときは、事故を起こさないためにも免許返納することを考え始める方が多いことも事実です。

運転が出来ないと不便ではありますが、運転経歴証明書の提示によって交通機関の割引等の特典を受けることができるため、免許を返納し自動車を売却したほうが経済的にも良いこともあります。

高齢の親御さんの運転に不安を感じたら、運転を続けることのリスクと、運転をやめた時のリスクを見極めながら、親御さんの意思を確認し、それぞれのご家族に応じた解決策を考えていくことが必要です。

「免許返納をするべきか…」と考え始めた時に、親御さんとどうコミュニケーションを取るのか、実際にどういった解決策があるのか、それぞれのご家族の状況に応じてよく考えてみましょう。

 

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この記事の監修者

回答者アイコン木場 猛(こば・たける) 株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー) 介護福祉士 介護支援専門員 東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 国内ビジネスケアラーデータ取得数最多の仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ監修や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。 3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。 著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』
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