ビジネスケアラーとは?今増えている要因や問題点についても解説

ビジネスケアラーとは?今増えている要因や問題点についても解説

「ビジネスケアラー」という言葉を知っていますか?

超高齢社会の日本では、ビジネスケアラーとして家族の介護を行う方が増えてきています。

決して他人事ではなく、多くの方がビジネスケアラーになる可能性を持っているのです。

まずは「ビジネスケアラー」という言葉の意味を知り、現状の課題やビジネスケアラーとなった時の問題点、解消方法について知っておくと良いでしょう。

 

※こちらの記事は、仕事と介護の両立支援サービスを提供する、チェンジウェーブグループ代表取締役社長 佐々木裕子講演のメディア向け勉強会の内容をもとに、再編集・解説しております。

【勉強会アジェンダ】
・そもそも「仕事と介護の両立」とは、「2025 年問題」とは、「ビジネスケアラー」とは?
・なぜ今、経産省から“経営者向け”ガイドラインが発表されたのか

 

佐々木裕子

株式会社チェンジウェーブグループ 代表取締役社長 佐々木 裕子
日本銀行、マッキンゼー、ソニーを経て、「変革屋」株式会社チェンジウェーブ創業。組織変革・社会変革に携わる中で、超高齢社会日本の課題解決の重要性に気づき、エイジテックベンチャーの株式会社リクシスを創業。「仕事とケアの両立」課題に取り組む業界横断型研究会「Excell ent Care CompanyLab.」発起人。2023年、経産省「企業経営と介護両立支援に関する検討会」委員として就任。

 

今回の記事で分かること

  • ビジネスケアラーとはどういう意味なのか
  • ビジネスケアラーになった時どんなことに困るのか
  • ビジネスケアラーになった時にどんなことに注意すれば良いか
  • 企業がビジネスケアラーのために取り組むべきことは何か

 

ビジネスケアラーとは?

ビジネスケアラーとは、仕事をしながら家族の介護をする人のことです。

少子高齢化や晩婚化、共働きが増えたことなどの影響で、従来家庭の中で高齢者の介護を担っていた層だけでなく、働いている現役世代やさらに下の世代にまで介護の負担が広がっていることで注目され始めました。

今、ビジネスケアラーと呼ばれる人がどんどん増えてきています。

経済産業省では、2030年時点で、家族を介護している人の4分の1である318万人がビジネスケアラーになると推計しているのです。

現状ではビジネスと介護の両立が難しく、離職や生産性の低下等による経済損失額は9兆円にも上ると試算されています。深刻な社会問題といえるでしょう。

参考:経済産業省 「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表します

 

ビジネスケアラーが増えている理由

ビジネスケアラーが増えている理由

なぜ、ビジネスケアラーが増えているのでしょうか?

その背景には様々な問題が要因としてつながっているのですが、主な原因は2つです。

 

超高齢社会

日本ではかなり急激に高齢化が進んでいる状況です。

特に、80歳以上の後期高齢者の割合が増え続けることが想定されているので、家族の仕事と介護の両立の必要性が高まっています。

 

共働き世帯・独身者の増加

以前は、専業主婦が家族の介護を担うケースが多くありました。

しかし最近では、共働きが当たり前になりつつあります。家事に専念する人が少なくなったため、家族の介護が始まるとビジネスケアラーになる人が増えているのです。

また、独身者も以前より増えています。家族の介護が始まったとしても、自分の生活を守るために働き続けるしかなく、結果ビジネスケアラーが増えている状況があります。

 

ビジネスケアラーが抱える問題点

親の介護が始まり、仕事と介護を両立するビジネスケアラーになると、様々な問題点に直面します。今から想定しておくと良いでしょう。

主な問題点を3つご紹介いたします。

 

肉体的・精神的負担が増え生産性が下がる

仕事と介護を両立するビジネスケアラーは常に時間がありません。仕事に行く前や帰宅後、休日、仕事の合間に介護をすることになるので、自分の時間を作ることや十分な休息をとることも難しくなってしまいます。

結果として疲労が蓄積され、肉体的な疲労はもちろん、精神的にも疲れ切ってしまい、仕事に集中することができなくなっていく可能性があるのです。

辛いと感じていても「会社に伝えると迷惑をかけてしまうだろう」「仕事の信用を失いキャリアに影響が出てしまうかもしれない」などと考えて、悩んでしまう方も多くいらっしゃいます。

 

制度があっても知らない、使えない

2024年、経済産業省では「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表いたしました。

これに伴い、ビジネスケアラーが仕事と介護を両立できるよう、企業側が支援するような制度がこれから整備されていくでしょう。

現在すでにそういった制度がある企業もたくさんあります。しかし、そのことを知っている従業員は多くありません。知らなければ使うこともできず、結果として今まで通りの働き方で仕事と介護を両立しようと頑張り、疲弊してしまいます。

企業側も、必要な従業員に情報が行き届くように周知の機会を増やす必要があるでしょう。

 

介護離職につながる

仕事と介護の両立の難しさを感じて、両立は無理だと考え離職してしまう方が多くいらっしゃいます。

少子化で働き手は不足している中で離職率が高まることは、企業にとって大きな損失です。

ビジネスケアラーが離職せずに仕事と介護を両立するにはどうすればいいのかということは、決して個人の問題ではなく、企業や国にとっても一緒に解決していくべき問題なのです。

 

仕事と介護を両立するために大切なことは?

仕事と介護を両立するために大切なことは?

多くの方が、ある日突然ビジネスケアラーになります。

親の介護が始まる前に、どうすれば仕事と介護を両立することができるのか考え、準備をしておくと良いでしょう。

ビジネスケアラーとして仕事と介護を両立するためには、下記のことを意識して行動することが大切です。

 

介護サービスを利用する

仕事と介護の両立のためには、介護保険サービスや自治体ごとの高齢者福祉サービスなどの公的サービスを最大限活用し介護負担を減らすことが重要です。

また、介護保険だけではカバーできない部分については、家事代行や見守り・宅食などの保険外サービスを利用することで介護負担を小さくできる可能性があります。

地域包括支援センターで相談すれば、どのようなサービスが利用できるのか知ることができます。家族の介護がまだ始まっていない場合も相談にのってくれるので、不安なことがある段階で相談にいってみると良いでしょう。

うまく利用することで、仕事の時間を確保することもできますし、自分自身の休息をとることも可能です。

 

企業の制度を利用する

現在お勤めの会社で、介護をすることになった時に利用できる制度を調べておきましょう。

「介護休業・介護休暇」「所定労働時間の短縮」「フレックスタイム制」など、各企業によって利用できる制度や利用条件が異なりますので、あらかじめ分かっておくとスムーズです。

制度を上手に利用する企業も従業員のパフォーマンス低下や介護離職を避けることができますし、更に制度が整えられたり利用しやすくなったりする可能性もあります。

 

自分自身のケアを忘れない

ビジネスケアラーは、介護をしている家族のことや、一緒に働いている会社の人のことを気にかけ、自分自身のことは後回しにしてしまうことがあります。

肉体的に疲れた時はもちろんですが、自分自身の心が疲れた時にも、しっかり休息や息抜きをする時間を作ることが非常に大切です。

仕事の時間を捻出するためだけに制度やサービスを使ったり周りの人に頼ったりするだけではなく、自分自身のケアをするための時間を作るためにも利用するようにしましょう。

 

悩みを1人で抱え込みすぎない

多くのビジネスケアラーが、介護未経験の状態から急に介護をするようになります。

ちょっとしたことでも不安に思ったり、どうすればいいか分からなかったりすることがあるでしょう。

そんな時には、1人で抱え込みすぎず、周りの人に話してみてください。地域包括支援センターで相談することもできます。

話すのがなかなか難しいという方は、同じような体験をした人の話を聞きに行ってみるのも良いかもしれません。

 

まとめ

ビジネスケアラーとは、仕事と介護を両立する人のことです。高齢化の影響でビジネスケアラーはどんどん増えています。

仕事と介護の両立は、決して1人で頑張ることでできるというものではありませんが、周りと協力し合うことができれば可能なことです。

2024年に経済産業省から「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」が公表されたこともあり、これから企業もビジネスケアラーを支援する取り組みを増やしていくことが想定されます。

介護をする人自身が疲弊せず仕事と介護を両立できるよう、そういった企業の制度を利用したり、介護サービスを利用したりすることで、仕事を続けながら介護を無理なく行う準備をしていきましょう。

 

ビジネスケアラー従業員の仕事と介護の両立支援なら「LCAT」
▶詳細はこちら

 

「ビジネスケアラーが抱える問題点」についての詳しい解説は近日公開予定

 

この記事の監修者

回答者アイコン株式会社チェンジウェーブグループ/リクシスCCO(チーフケアオフィサー)
木場猛(こば・たける)
介護福祉士 介護支援専門員 東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 国内ビジネスケアラーデータ取得数最多の仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ監修や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。 3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。
【新書】「仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書」(日経クロスウーマン)

 

お役立ち情報