要介護3とはどんな状態?受けられるサービスや介護費用を解説

要介護3とはどんな状態?受けられるサービスや介護費用を解説

要介護3になると、支援者(介護家族・ビジネスケアラー)側の負担が大きくなってくるため、要介護2よりも多くのサービスが利用できるようになります。

要介護3では、どんなサービスや制度が利用できるのでしょうか?また、要介護3の生活はどうなるのでしょうか?

この記事では、要介護3とはどんな状態なのか、要介護2との違いや受けられるサービスや介護費用について解説します。

要介護3とは?

要介護3とは、日常生活においてほぼ全てに介護が必要な状態です。具体的に見ていきましょう。

要介護3の認定基準 

要介護3と認定される基準は「要介護認定等基準時間が70分以上90分未満相当」であることです。「要介護認定等基準時間」とは、厚生労働省が定めたもので、日常的な身体介助や歩行、機能訓練など介護にかかる時間の度合いを表しています。

また、認知症の進行も要介護3と認定される大きな要因になります。

要介護3の状態 

立ち上がりや歩行が困難で、車椅子や杖などを必要とする場合が多くなります。

食事や入浴、排泄などの日常生活動作においても常に手助けが必要です。自宅で過ごす時間が長くなり、外出する機会も少なくなります。

常に誰かのサポートや見守りが必要ですが、寝たきりの状態ではありません。

要介護3の症状 

要介護3になると、判断力や記憶力の著しい低下(見当識障害や実行機能障害、認知症の進行により、徘徊や妄想、大声や奇声を上げる、誤食・不潔行為、幻覚やせん妄などの周辺症状が見られる場合があります。

家族や友人との交流が減少し、孤立感や不安感を抱く場合が多く、心理的にも不安定な状態におかれるため、暴力や暴言が出てしまうこともあります。

 

要介護3と2の違い 

要介護3と2の違いは、身体状態と理解力の程度の差が大きいことです。

要介護2では日常生活において一部介助が必要な状態ですが、要介護3ではそれを自力でできなくなることが増えます。

要介護2 要介護3
  • 食事やトイレ、入浴には部分的な手助けが必要。
  • 自力での立ち上がりや歩行には支えが必要。
  • 掃除や身の回りの世話は、全般に見守りや手助けが必要。
  • 理解力の低下が見られることがある(軽度の認知症の悪化)。
  • 食事やトイレ、入浴に全面的な介助が必要。
  • 身のまわりの世話や家事が自分一人ではできない。
  • 自力での立ち上がりや歩行ができない。
  • 全般的な理解の低下がみられることがある(認知症の悪化)。

 

平均的な介護期間はどれくらい?

日本人の平均的な介護期間はどれくらいなのか?厚生労働省「平均寿命」と「健康寿命」のデータから推測することができます。

平均寿命と健康寿命との関係

厚生労働省の『健康寿命の令和元年値について(2019年)』によると、現在の日本人の平均寿命は男性が81.41歳、女性が87.45歳となっています。
一方で、「健康上の問題を抱えることなく日常生活を送れる期間」とされている健康寿命は、男性は72.68歳、女性は75.38歳です。

この平均寿命から健康寿命を引くと、理論上介護期間を推測できます。

男性の場合:平均寿命81.41歳 - 健康寿命72.68歳=介護期間8.73年

女性の場合:平均寿命87.45歳 - 健康寿命75.38歳=介護期間12.06年

 

また、公益財団法人 生命保険文化センターの『生命保険に関する全国実態調査(2021年度)』のデータによると、実際の平均介護期間(現在介護中の方は介護を始めてからの経過期間)は、約5年1ヶ月です。

理論上の介護期間とは大きく異なる結果ですが、内訳を見ると4年以上介護を必要とされた方は約5割、6ヶ月未満の方は3.9%、10年以上の方は17.6%となっており、介護期間というのは介護者の年齢や病状によって様々で、個人差が大きいことが分かります。

いずれのデータも平均値ですので、あくまでも参考の目安としてください。

要介護3から介護時間は急激に増える?

一般的に、要介護3から介護に必要な時間が急激に増えると言われています。
要介護2まではひとりでも多少できていた排泄や食事、身の回りの世話、立ち上がりや歩行がひとりでできなくなるためです。

厚生労働省『国民生活基礎調査の概況(2019年)』の調べからも、介護に半日以上を要する割合は、要介護2で27.9%であるのに対し、要介護3になると50,1%と大幅に増加していることが分かります。

在宅介護が長く続くと、年々介護の負担が大きくなってゆくため、限界を感じる時はいつか訪れるものです。支援者(介護家族・ビジネスケアラー)自身のケアも考慮し、要介護3以上から利用できるようになるサービスをしっかり活用していきましょう。

 

要介護3の生活はどうなる?

要介護3の生活について、具体的にみていきましょう。

介護保険サービスの相談・ケアプランの作成

要介護3に認定されたら、市区町村からケアマネジャーを紹介してもらい、ケアプランを作ります。利用者の状態や家族の希望を伝え、その意向を反映した内容や回数などを作成してもらうことが重要です。

ケアプランは要介護度や生活環境の変化に応じて見直し、新しいケアプランを作ります。

要介護3から特養の利用が可能になる 

要介護3に認定されたら特別養護老人ホーム(特養)への入居が可能になります。特養は、24時間体制で専門的な介護や看護を受けることができ、食事や清掃などの生活支援、レクリエーションや交流会などの活動も充実しています。要介護3からは、支援者(介護家族・ビジネスケアラー)の負担が大きくなることから、施設に入居する人が多くなります。

要介護3の場合は一人暮らしすることは可能?

要介護3の場合、ほぼすべての日常生活に介助が必要なため、支援者(介護家族・ビジネスケアラー)のサポートが不可欠です。また、認知症の症状がある場合は、徘徊や事故などの危険もあります。一人暮らしを続けることは、安全や快適さだけでなく、経済的にも大きな負担になります。そのため、一人暮らしは可能ではありますが難しいと考えられています。

 

要介護3で受けられるサービスや制度

車椅子に乗った女性をサポートする介護士

 

要介護3では、介護保険制度を利用して以下のサービスを受けることができます。

内容 サービス名
自宅で受けられるサービス 訪問介護(ホームヘルプ)
訪問看護
訪問入浴
訪問リハビリ
定期巡回・随時対応型訪問介護
夜間対応型訪問介護
施設に通う 通所介護(デイサービス)
通所リハビリ
療養通所介護
地域密着型通所介護
認知症対応型通所介護
訪問・通所・宿泊が合わさったサービス 小規模多機能型居宅介護
看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
短期間の宿泊 短期入所生活介護(ショートステイ)
短期入所療養介護
施設入居 特別養護老人ホーム(特養)
介護老人保健施設(老健)
特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホーム等)
介護療養型医療施設
介護医療院
小規模施設に入居 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
地域密着型特定施設入居者生活介護
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
福祉用具の使用 福祉用具貸与
特別福祉用具販売

 

要介護3で利用できるサービスの利用回数の目安

介護サービスは、区分支給限度額という上限額の範囲内で利用することができます。

限度額を超えてサービスを利用した場合は自己負担となりますので、利用回数を調整する必要があります。

要介護3の区分支給限度額で利用できる介護サービスの利用回数の目安は以下の通りです。

・訪問介護:週3回
・訪問看護:週1回
・通所介護、通所リハビリ:週3回
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護:毎日1回
・福祉用具貸与:車いす、特殊寝台・特殊寝台付属品

要介護3で受けられる給付金制度 

要介護認定を受けると、介護サービスを利用する際に限度額の範囲内で負担額の一部が援助されます。支給限度額(保険給付)は、要介護度に応じて上限が定められていて要介護3の場合の支給限度額は27万4800円です。このうち、サービス利用料の1~3割は自己負担です。この額を超えた場合、超過分は全額自己負担となります。

要介護3の区分支給限度額
270,480
自己負担の割合 1割 2割 3割
自己負担額 27,048円 54,096円 81,144円

 

要介護3で受けられる給付金制度・控除制度には、以下のようなものがあります。

・高額介護サービス制度
・障がい者控除
・紙おむつ給付とおむつ代助成制度
・住宅改修補助制度

要介護3の給付金制度について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

まとめ

・要介護3の状態では日常生活のほとんどの場面で介護が必要です。

・要介護3は認知症が進んでいる人も多いため、施設入居を検討することがおすすめです。

・介護保険サービスを受けるためにはケアプランの作成が必要です。

・要介護3になると特養への入居が可能となります。

・介護保険制度は1ヶ月あたり27万480円まで利用できます。

最適なサービスを受けるために、ケアマネジャーと話し合い、本人と家族の状況にあったケアプランを作成してもらいましょう。

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要介護3でもらえるお金はいくら?受けられるサービスや支給限度額について解説

 

この記事の監修者

回答者アイコン金山峰之(かなやま・たかゆき) 介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。 厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。 元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。

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