介護保険の「居宅サービス」とは?サービス種類と費用をまとめて解説

介護保険の「居宅サービス」とは?サービス種類と費用をまとめて解説

居宅サービスとは? 

「居宅サービス」は「居宅介護サービス」とも呼ばれ、自宅で生活を続けながら受けられる介護サービス全般のこと。要介護・要支援認定を受けている方が対象で、介護保険が適用されます。

 

自宅に訪問介護員(ホームヘルパー)や看護師などの専門職が訪問してくれるサービスから、利用者が施設に通ったり宿泊するサービスなど、その種類も様々です。

また、有料老人ホームのような施設に入所しても、そこが自宅と見なされ、施設の内外で居宅サービスを受けることが可能な場合もあります。

利用限度額は、要介護度に応じて決まっているため、その範囲内で可能な居宅サービスを組み合わせるのが一般的です。

 

居宅サービスの種類 

介護保険の居宅サービス(居宅介護サービス)の種類は、大きく分けて「訪問サービス」「通所サービス」「短期入所サービス」「その他のサービス」の4つに分類され、主に12種のサービスがあります。

居宅サービスの分類 居宅サービスの種類
訪問サービス
  • 訪問介護(ホームヘルプサービス)
  • 訪問入浴介護
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導
通所サービス
  • 通所介護(デイサービス)
  • 通所リハビリテーション(デイケア)
短期入所サービス
  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 短期入所療養介護
その他
  • 福祉用具貸与(レンタル)
  • 特定福祉用具販売
  • 住宅改修

 

訪問サービス

立ち上がりの介助をする男性介護士

訪問サービスは、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の居宅を訪問し、身体介護や生活援助を、訪問看護は療養上の世話や医療的ケア、機能訓練を行うサービスなどです。提供されているのは、以下5種のサービスとなっています。

  • 訪問介護
  • 訪問入浴介護
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導

訪問介護

訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の居宅を訪問し、食事や入浴・排泄・着替えなどの身体介護、料理・洗濯・掃除や買い物などの日常生活援助を行います。

訪問介護にかかる費用は、身体介護と生活援助に分類され、所要時間によって異なります。また、要介護の方は、1日のうち複数回来てもらうことも可能です。

訪問介護は、利用者が日常生活上で必要とする支援とされているので、来客対応や家族のための手伝い、庭の手入れのような、日常生活に直接支障がない依頼はできないことを心得ておきましょう。

要介護1〜5の場合:訪問介護の自己負担額の目安

所要時間 金額(自己負担1割の場合)
身体介護 20分 167円
20分以上30分未満 250円
30分以上1時間未満 396円
1時間以上 579円

30分を増すごとに+84円

生活援助 20分以上45分未満 183円
45分以上 225円

※費用は地域によって異なる場合があります。事業所によって加算などが算定される場合もあります。

出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造

訪問入浴介護

自力での入浴が困難な要介護の方を対象に、利用者の居宅へ介護スタッフが移動式浴槽を持参し、入浴介助を行う訪問サービスです。要支援の方や介護度が低い方の場合、居宅の浴槽を利用して入浴介助を行うこともあります。

サービス利用対象者は、原則として要介護1〜5の方で主治医から入浴を許可されている方と決められています。要支援の方は、自宅に浴室がない等の諸条件に適している方のみ、介護予防訪問入浴介護として利用することができます。

要介護1〜5の場合:訪問入浴介護の自己負担額(1割)の目安

介護度 1回分の金額(自己負担1割の場合)
要支援1〜2 852円
要介護1〜5 1,260円

※費用は地域によって異なる場合があります。事業所によって加算などが算定される場合もあります。

出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造

   WAMNET:「介護給付費単位数等サービスコード表

訪問看護

訪問看護とは、看護師や准看護師、保健師、理学療法士や作業療法士などが療養を必要とする方の居宅を訪問し、医療ケアや療養上のケアが受けられるサービスです。主治医が作成した指示書に基づいて健康状態を確認し、療養指導、医療処置、身体介護などを行います。

介護保険を利用する場合のサービス利用対象者は、要支援・要介護の認定を受けている方で、医師の診断書が必要です。

看護師が訪問する場合:訪問看護の自己負担額(1割)の目安

所要時間  訪問看護ステーション 病院・診療所
20分未満 313円 265円
30分未満 470円 398円
30分以上1時間未満 821円 573円
1時間以上1時間半未満 1,125円 842円

※費用は地域によって異なる場合があります。事業所によって加算などが算定される場合もあります。

出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造

訪問リハビリテーション

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが利用者の居宅を訪問し、医師の指示に基づいたリハビリテーションを受けられるサービスです。身体機能の維持・回復を目指し、歩行や寝返り、起き上がりなど、日常生活を送る上で必要な機能訓練を行います。

訪問リハビリテーションの自己負担額(1割)の目安

1回分の金額(自己負担1割の場合)
307円

※費用は地域によって異なる場合があります。事業所によって加算などが算定される場合もあります。

出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造

居宅療養管理指導

居宅療養管理指導とは、医師や看護師、薬剤師、歯科衛生士、管理栄養士などが利用者の居宅を訪問し、療養上必要な健康管理や指導(服薬や歯磨き、栄養指導など)を行うサービスです。

居宅療養管理指導の自己負担額(1割)の目安

1回の金額(自己負担1割の場合)
医師(月2回まで) 514円
歯科医師(月2回まで) 516円
医療機関の薬剤師(月2回まで) 565円
薬局の薬剤師(月4回まで) 517円
管理栄養士(月2回まで) 544円
歯科衛生士(月4回まで) 361円

※金額は、単一建物居住者に対して行う場合の金額です。費用は地域によって異なる場合があります。また事業所によって加算などが算定される場合もあります。

出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造

 

通所サービス  

介護タクシーで高齢者を送迎をする介護士

通所サービスとは、居宅から施設に通い、日帰りで食事や入浴の介助や機能訓練、レクリエーションなどを受けられるサービスです。提供されているのは、以下2種のサービスとなっています。

  • デイサービス(通所介護)
  • デイケア(通所リハビリテーション)

デイサービス(通所介護)

デイサービスは、利用者が送迎付きでデイサービスセンターなどの施設に通い、日帰りで入浴や食事など日常生活の介助が受けられるサービスです。レクリエーションや体操・機能訓練なども行われ、身体機能の維持・向上と、日常生活の自立支援のほか、他者との交流の場としての役割も担っています。

デイサービスの費用は、施設の規模、介護度、利用時間によって異なり、施設の規模が大きいほど利用料金は安くなります。利用回数や時間は、利用者やご家族の都合に合わせ選ぶことができます。

通常規模施設の場合:デイサービスの自己負担額(1割)の目安

介護度 7〜8時間 5〜6時間 3〜4時間
要介護1 655円 567円 368円
要介護2 773円 670円 421円
要介護3 896 773円 477円
要介護4 1,018円 876円 530円
要介護5 1,142円 979円 585円

※食費などは含まれていない料金例です。費用は地域によって異なる場合があります。

また事業所によって加算などが算定される場合もあります。

出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造

デイケア(通所リハビリテーション)

デイケアは、利用者が介護老人保健施設や病院などに通い、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といった専門スタッフによるリハビリテーションを受けられるサービスです。デイサービスは日常生活の支援を主な目的としていますが、デイケアは心身機能の維持や回復を目的とした機能訓練に特化しているという点が大きな違いです。

デイケアの費用は、施設の規模、介護度、利用時間によって異なり、施設の規模が大きいほど利用料金は安くなります。利用回数や時間は、利用者やご家族の都合に合わせ選ぶことができます。

通常規模施設、病院又は診療所の場合:デイケアの自己負担額(1割)の目安

介護度 7〜8時間 4〜5時間 1〜2時間
要介護1 757円 549円 366円
要介護2 897円 637円 395円
要介護3 1,039円 725円 426円
要介護4 1,206円 838円 455円
要介護5 1,369円 950円 487円

※食費などは含まれていない料金例です。費用は地域によって異なる場合があります。

また事業所によって加算などが算定される場合もあります。

出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造

 

短期入所サービス(ショートステイ)

ショートステイは、利用者が一時的に施設に宿泊することができるサービスです。最短1白2日から、最長30日間利用することができます。定期的な利用のほか、支援者(介護家族・ビジネスケアラー)が都合により自宅での介護ができなくなった際などにも利用することが可能です。

ショートステイには、以下2つのタイプがあります。

  • 短期入所生活介護
  • 短期入所療養介護

ショートステイの費用は、施設の規模や種類、介護度などによって異なります。

短期入所生活介護(ショートステイ)

入所先は、主に特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設、有料老人ホームなど。食事や入浴などの生活支援や介護ケア、生活機能訓練を受けられます。

単独型施設の場合:短期入所生活介護の自己負担額(1割)の目安

介護度 従来型個室・多床型

(1日の金額)

要介護1 638
要介護2 707
要介護3 778
要介護4 847
要介護5 916

※食費などは含まれていない料金例です。費用は地域によって異なる場合があります。

また事業所によって加算などが算定される場合もあります。

出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)

入所先は、介護老人保健施設や病院など。食事や入浴などの生活支援や介護ケアのほか、医療ケアや機能訓練などが受けられます。

短期入所療養介護の自己負担額(1割)の目安

介護度 介護老人保健施設

従来型個室【基本型】

(1日の金額)

ユニット型介護老人保健施設

ユニット型個室【基本型】

(1日の金額)

要介護1 752 833円
要介護2 799 879円
要介護3 861 943円
要介護4 914 997円
要介護5 966 1,049円

※食費などは含まれていない料金例です。費用は地域によって異なる場合があります。

出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造

 

その他のサービス

高齢者の暮らしやすい生活環境を整え、自立した日常生活を支援するための介護サービスにも、介護保険が適用されます。要支援・要介護の認定を受けた方を対象に、主に以下のようなサービスがあります。

  • 福祉用具貸与
  • 福祉用具購入
  • 住宅改修

福祉用具貸与

自立した日常生活を送るための介護用品・福祉用具を、介護保険でレンタルすることができます。対象となるのは、以下の13品目。

・車いす 

・車いす付属品 

・特殊寝台(介護用ベッド)

・特殊寝台付属品 

・床ずれ防止用具 

・体位変換器

・認知症老人徘徊感知機器 

・移動用リフト(工事を伴わないものに限られ、つり具の部分を除く)

・手すり 

・スロープ 

・歩行器 

・歩行補助杖 

・自動排泄処理装置

介護度によってレンタルできる器具には制限があり、レンタル費用は提供業者により異なります。

特定福祉用具販売

特定福祉用具とは、入浴や排泄などで使用されるため、レンタルには適さない福祉用具です。こうした介護用品・福祉用具を購入する際にも、介護保険が適用されます。対象となるのは、以下の6品目。

・腰掛便座 

・特殊尿器の交換可能部分 

・排せつ予測支援機器

・入浴補助用具 

・簡易浴槽(空気式や折りたたみ式で、工事を伴わないもの)

・移動用リフトのつり具

購入時の費用の自己負担は1割ですが、支給限度額は年間10万円まで。超過分は全額自己負担となるので、注意しておきましょう。

住宅改修

住宅改修は、介護リフォームとも呼ばれ、自宅をバリアフリーに改修する際に介護保険が適応され費用の一部を支援してくれるサービスです。

介護保険を利用した住宅改修の支給額は、20万円を限度として、その1〜3割が自己負担となります。利用できるのは原則として1人1回のみとなっており、複数回の利用はできませんが、限度額の20万円を超えない範囲であれば複数回に分けることが可能です。

介護保険制度で認められた住宅改修は、下記の6種目が対象になります。

  • 手すり設置
  • 段差解消
  • 床材変更・滑り止め設置
  • 扉変更・取り換え
  • 便器取り換え
  • 上記工事のために必要となる工事

 

まとめ

居宅サービスは、自宅で暮らしを続けたいと願う要支援・要介護の方を支援するサービスです。在宅介護を送る上で、利用者の生活支援や介護サポートはもちろん、支援者(介護家族・ビジネスケアラー)の方の介護負担を減らすことができる様々なサービスがあります。

利用者の介護度や環境に合わせ、どのサービスをどのくらいの頻度で利用するのか、どんなサービスを組み合わせて利用するか、ケアマネジャーと相談しながら上手に活用していきましょう。

 

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この記事の監修者

回答者アイコン金山峰之(かなやま・たかゆき) 介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。 厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。 元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。

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