要介護認定を受けても、「入浴や食事などの支援を受けるのは抵抗がある」「お遊戯のような集団活動に参加したくない」といった理由で、デイサービスを拒否される方は少なくありません。
そんな場合でも「介護保険の対象で機能訓練(リハビリ)だけを受けたい」と希望される方に適しているのが、リハビリ特化型デイサービスです。
ここでは、通常のデイサービスやデイケアとリハビリ特化型デイサービスの違い、利用条件やサービス内容、訓練内容について解説していきます。
リハビリ特化型デイサービス(または機能訓練特化型デイサービス)とは、入浴、食事やレクリエーションのような通常のサービスを省き、機能回復の運動や訓練に特化して行うデイサービスのひとつです。
理学療法士や作業療法士といった訓練指導員のもとで、ひとりひとりに合わせて作成された個別のリハビリプログラムをこなしていきます。
入浴や食事の介助の必要がなく、介護度の低い方にも適したサービスなので、外出の機会が減り自宅にこもりがちな高齢者の方でも、同年代の仲間と交流しながら運動できることが人気の理由のひとつと言えるでしょう。
リハビリ特化型デイサービスの最も大きな特徴は、利用時間の短さにあります。
通常のデイサービスでは身体介護を含み一日8時間前後となりますが、リハビリ特化型デイサービスはリハビリや機能訓練を中心としているため、1回あたりの利用時間は3~4時間程度。
午前・午後のように、半日単位で運営されていることが多いようです。
機能訓練に特化したリハビリ特化型デイサービスを利用できるのは、要介護1~5の認定を受けた方ですが、要支援1〜2の認定を受けている方も自治体による介護予防サービス事業の対象者として判断された場合、利用可能となります。
要介護認定を受けていない自立の方は介護保険サービスの対象ではないため、自己負担でサービスを受け、介護予防に取り組むことが可能です。
通常のデイサービスでは、入浴、昼食、レクリエーションといった日常的な身体介護が主体ですが、リハビリ特化型デイサービスは、退院後の身体機能回復や予防のためのリハビリに重きが置かれます。したがって、入浴や食事などの直接的な支援は必ずしも行われません。
リハビリ特化型デイサービスは、次のような目的を持つ方にすすめられます。
自力で体を動かすことが必要なため、介護度2くらいまでが利用者の目安です。
・病気・ケガをして回復・退院したが、専門的なリハビリを受けたい
・機能訓練を重点的にしたい
・筋力や体力の低下が気になるので、予防のためにトレーニングしたい
・フィットネスジムに通うのは不安だが、定期的に運動をしたい
・従来のデイサービスに抵抗がある
リハビリ特化型デイサービス、通常のデイサービス、デイケアの違いは、下の表のようになります。
リハビリ特化型デイサービス
(民間、自治体、法人) |
デイサービス
(民間、自治体、法人) |
デイケア
(医療法人の運営) |
|
主なサービス内容 | 機能訓練、身体の機能改善、リハビリ | 食事、入浴、レクリエーション等 | 食事、入浴、リハビリ |
目的 | 身体機能の維持・改善
機能訓練 |
心身機能の維持・改善
利用者の孤独感解消 |
心身機能の維持・回復
日常生活の支援 |
人員体制 | 機能訓練指導員(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師のいずれか)
看護師・准看護師 |
専任の常勤医師
理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 看護師・准看護師 介護士 生活相談員 |
医師
理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 看護師・准看護師 介護士 |
平均利用時間 | 約3〜4時間 | 約7~8時間 | 約6~8時間 |
医師の指示 | 不要 | 不要 | 必要 |
リハビリ特化型デイサービスを受ける時の流れは、以下のようになります。
施設で過ごす時間は、約3〜4時間と短めです。
送迎 | 送迎車で自宅までのお迎え |
体調管理 | 体温・血圧・脈拍などのバイタルチェック
当日の健康状態の確認 |
準備体操 | 軽い準備運動 |
機能訓練 | 機能訓練指導員による運動指導
マシンを使った運動やストレッチなど |
休息 | 休憩や水分補給は随時可能 |
整理体操 | 体をほぐす体操など |
送迎 | 送迎車で自宅まで送り届け |
リハビリ特化型デイサービスで行われる機能訓練には、どのようなものがあるのでしょうか?
それぞれの事業所によっても異なりますが、主な訓練内容をご紹介します。
筋力トレーニング
「レッグプレス」や「エルゴメーター」などのトレーニングマシンを使用しながら、筋力アップを目指す
持久力・体力トレーニング
ウォーキングマシーンや平行棒を使用し、体力アップと転倒を防止する姿勢の良い歩き方を目指す
バランストレーニング
バランスマットなどの道具を活用した、不安定な状況での足踏みや体重移動の訓練
ストレッチ
怪我を予防する準備体操やリハビリ後の整理体操として、肩や腰などの関節を伸ばす
リラクゼーション
足浴やホットパック、マッサージチェアなどを使用した、足のむくみ予防や血行の循環の改善
個別機能訓練
理学療法士や作業療法士、柔道整復師、看護師などの国家資格を取得したスタッフによる、個別の生活指導・運動指導、痛み改善などの施術
身体能力の測定
専門家による身体能力のテストを定期的に行い、筋力や握力、バランス能力などを測定
栄養管理
栄養指導やバランスの取れた食事の提案
食時に嚥下に不安や問題がないか、言語聴覚士などによる管理・指導
リハビリ特化型デイサービスの料金は、介護度によって金額が異なります。
基本的に、通常のデイサービスと大きな料金差はなく、デイケアよりは安い金額設定になっています。
【リハビリ特化型デイサービスの利用料金例】
利用者数18名以下の小規模デイサービス、3〜4時間未満のケース
※2022年10月1日時点、自己負担1割、1級地(1単位=10.90円)の場合
要介護1 | 453円 |
要介護2 | 519円 |
要介護3 | 587円 |
要介護4 | 652円 |
要介護5 | 721円 |
※利用料金は、お住いの地域や利用時間などによって料金が変わるため、あくまで目安となります。詳しくはご利用予定の事業所にお問い合わせください。
リハビリ特化型デイサービスは、基本的に要支援1〜2、要介護1〜5の認定を既にお持ちの方が対象です。サービスを受けるまでの流れは、だいたい以下のようになります。
1 担当ケアマネージャーに相談
まず担当のケアマネージャーにケアプランを作成してもらいます。どのようなリハビリ特化型デイサービスがあるのか相談し、紹介してもらいしょう。
2 デイサービス施設の見学
事業所によってサービス内容に特色・違いがあるので、ケアマネージャーの推薦やパンフレットなどで気になる施設を見つけたら、見学・体験の日程を決めてもらい、見学や体験利用をしてみましょう。
3 ケアプランを作成
気に入ったリハビリ特化型デイサービスが確定したら、週に何回利用するか、その他のサービス利用との兼ね合い等を相談して、ケアマネージャーにケアプランを作成してもらいましょう。
4 リハビリ特化型デイサービスと契約
事業所のスタッフからサービス利用の説明を受け、サービス内容や利用条件を確認し、契約に進みます。
5 サービス利用開始
契約後、リハビリ特化型デイサービスの利用が開始できるようになります。
・リハビリ特化型デイサービスは、機能回復の運動や訓練などがひとりひとりに合わせて作成され、個別訓練が受けられるデイサービスのひとつ。
・リハビリに特化した短時間型で、基本的に入浴や食事、レクリエーションは提供されない。
・介護度が低くても利用でき、要介護2までの利用が目安。
・要介護1~の方は、介護保険サービスとして利用できる。要支援の方は介護予防サービスとしての利用が可能。
・かかる費用は、通常のデイサービスとほぼ同じで、デイケアよりも少し安い。
体力維持やトレーニングを目的としたリハビリ特化型デイサービスは、通常のデイサービスが苦手な方にも適しており、短時間集中型なので、半日を要するデイケアよりも利用しやすいことが特徴です。
介護度が低い方や日常生活の介助が必要ない高齢者の方にとっては、体を動かすことで介護予防にも役立つサービスとなっています。
利用を検討する際は、ケアマネージャーに相談してみてください。
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木場 猛(こば・たける) 株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー)
介護福祉士 介護支援専門員 東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 国内ビジネスケアラーデータ取得数最多の仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ監修や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。 3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。
著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』
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