デイサービスは、介護保険サービスの中でも多くの方に利用されていて、最も身近なサービスと言えます。
では、デイサービスは健康な人も利用できるのでしょうか?また、要支援の方や健康な高齢者が介護予防目的で利用できるサービスはあるのでしょうか?
今回は、要支援の方や健康な65歳以上の方が利用できるサービスの内容や利用対象者となる条件などを解説していきます。
デイサービスは、日帰りで利用できる通所介護サービスです。
要介護認定を受けた方がご自宅で生活を継続できるように、食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練が受けられます。
デイサービスの目的は、要介護状態になっても自宅でできるだけ自立した生活を送れるようにすること、支援者(介護家族・ビジネスケアラー)の身体的精神的負担を軽減することです。
そのために利用者の生活機能や口腔機能などの訓練、心身の健康維持・向上を目指した健康管理が行われています。高齢者が自宅に引きこもりがちになってしまうことを防ぎ、外出する機会、体を動かす機会、社会と繋がる機会を作る場としても役立っています。
デイサービスでは、食事、入浴、トイレなどの日常生活に必要な支援や、体操、歩行訓練、脳トレ、口腔体操などの機能訓練、レクリエーション、趣味活動などのプログラムが提供されます。
利用者同士が交流することで社会参加を促進し、孤独感の解消やストレスの緩和にもつながります。また、自宅と施設の間の送迎もサービスに含まれています。
デイサービスにはさまざまな種類がありますが、主に「特化型」「認知症対応型」「お泊まりデイサービス」の3タイプに分かれます。
リハビリに特化したデイサービスのことで、食事や入浴の支援のような直接的な介護がなく、機能訓練が中心。時間や費用を抑えて機能訓練に集中できるのが特徴です。
医師が必ずしも常駐しているわけではないので、医師のサポートが必要な人には向いていない場合もあります。
認知症の方を専門としたデイサービス。
認知症に詳しいスタッフによる手厚い介護を受けられる反面、一般的なデイサービスよりも自己負担額が多くなる傾向があります。
介護施設で日中のサービスを受けた後に、宿泊ができるサービス。
介護保険が適用されないため、全額自己負担となります。宿泊する部屋が個室とは限らず、プライバシーが十分に確保できない場合も。
国の制度である「介護保険サービス」としてのデイサービスの利用は、要介護1〜5の認定を受けた方が対象で、健康で自立している人や要支援認定の人は対象外となります。
要支援1〜2の方や認定を受けていない高齢者の方は、自治体が管理する「総合事業」のうち、地域支援事業の「介護予防・生活支援サービス事業」としてのデイサービス利用が可能です。
要介護の方と同じデイサービス施設を利用することができますが(介護予防認定を受けたデイサービスのみ)、介護保険サービスとしての対象者ではないため、サービス内容や利用できる回数が要介護者とは異なります。
要支援1〜2の方や認定を受けていない高齢者の方が、デイサービスなどで介護予防サービスを利用するためには、まず、市区町村の相談窓口や地域包括支援センターに相談しましょう。
日常生活関連動作、栄養状態、口腔機能、認知症、うつ傾向など、利用者の心身の状況を調べる「基本チェックリスト」の診断を受け、生活機能の低下が見られたり介護状態になる恐れがあると判断された方は、サービスの「事業対象者」となります。
「事業対象者」は、ケアマネージャーにケアプラン(介護予防サービス計画)を作成してもらい、ケアプランに従ってサービスを受けることになります。
要支援の方や65歳以上の高齢者の方が対象となっている自治体の「介護予防サービス」には、大きく分けて3種類あり、それぞれに対象者の条件や利用できるサービスが決められています。
要支援1~2の方は基本的に全ての「介護予防サービス」を受けることができ、要支援・要介護認定を受けていなくても65歳以上の高齢者なら誰もが利用できる「地域支援型の介護予防サービス」もあります。
サービス種類 | サービス名 | 対象者 |
介護予防サービス | 介護予防通所介護
介護予防通所リハビリテーション 介護予防短期入所生活介護 介護予防短期入所療養介護 介護予防特定施設入居者生活介護 介護予防訪問入浴介護 介護予防訪問看護 介護予防訪問介護 介護予防訪問リハビリテーション 介護予防居宅管理指導 介護予防福祉用具貸与 介護予防福祉用部購入費 介護予防住宅改修費 |
・要支援1~2 ・要支援の認定を受けていなくても「基本チェックリスト」で事業対象者と判断された方 |
地域密着型介護予防サービス (地域によって無い場合もあります) |
介護予防小規模多機能型居宅介護 | ・要支援1~2、要介護1~5 ・その地域の住民であること |
介護予防認知症対応型サービス ・介護予防認知症対応型通所介護 ・介護予防認知症対応型共同生活介護(原則として要支援2の方) |
・要支援認定1~2の高齢者
・その地域の住民であること ・軽度の認知症と診断された方 |
|
地域支援型の予防サービス | 介護予防特定高齢者施策 | ・要介護や要支援になり得る可能性があると判断され、市区町村に「特定高齢者」と認められた、地域に住む65歳以上の高齢者 |
介護予防一般高齢者施策 | ・地域に住む全ての65歳以上の高齢者 |
介護予防とは、65歳以上の高齢者の方が要介護状態にならないために予防することです。
厚生労働省の資料では、「要介護状態の発生をできる限り防ぐ(遅らせる)こと、そして要介護状態にあってもその悪化をできる限り防ぐこと、さらには軽減を目指すこと」と定義されています。
上記で説明した主な介護予防サービスの内容を見ていきましょう。
介護予防サービスには、通所型・在宅型・宿泊型の3タイプがあります。
サービス名 | 内容 |
介護予防通所リハビリテーション(デイケア) | 介護老人保健施設や病院・診療所で、介護予防を目的としたリハビリや、食事や入浴などの生活支援 |
介護予防小規模多機能型居宅介護 | 施設への「通い」を中心に、自宅への「訪問」と短期間の「宿泊」を組みあわせた日常生活上の支援や機能訓練など |
介護予防認知症対応型通所介護(デイサービス) | デイサービスなどの施設において、認知症の方を対象にした専門的なケア |
サービス名 | 内容 |
介護予防訪問入浴介護 | 入浴車による、介護職員や看護職員が入浴の介助 |
介護予防訪問看護 | 主治医の指示に基づき、看護師や保健師などによる療養上のお世話や診療の補助 |
介護予防訪問リハビリテーション | 理学療法士、作業療法士などによる日常生活の自立や心身機能の維持・回復に向けたリハビリ |
介護予防居宅療養管理指導 | 医師、歯科医師、薬剤師、歯科衛生士、栄養士、看護師などによる、介護予防のための薬の内服や食事の方法、歯科検診、療養上の管理や指導 |
介護予防福祉用具のレンタルおよび購入 | 手すりや歩行器、自動排泄処理装置など、福祉用具のレンタルや購入 |
介護予防住宅改修費の支給 | 生活環境を整えるための自宅リフォームの補助金支給 |
サービス名 | 内容 |
介護予防短期入所生活介護(福祉施設などのショートステイ) | 高齢者介護福祉施設などに短期間入所
食事や入浴などの生活支援や、機能訓練 |
介護予防短期入所療養介護(医療施設などのショートステイ) | 医療機関や介護老人保健施設などに短期間入所
医療ケアや機能訓練、生活支援など |
介護予防特定施設入居者生活介護 | 有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの入居者向けに行われる、日常生活上の支援や機能訓練 |
介護予防認知症対応型生活介護(グループホーム) | 少人数の家庭的な雰囲気の中で共同生活を送る認知症の方向け(原則として要支援2の方のみ対象)に行われる、生活支援や機能訓練 |
自治体の総合事業の一環として行われている「一般予防事業」は、要支援や要介護の認定を受けていない健康な方でも、65歳以上なら誰でも対象者になっている地域のサービスのひとつです。
「一般予防事業」として行われている地域支援型予防サービスには、大きく分けると「介護予防特定高齢者施策」と「介護予防一般高齢者施策」の2種類があります。
サービス内容は地域によって異なりますが、ここではよくあるサービス例をご紹介していきます。
対象者:要介護や要支援になる可能性が高いと判断され、市区町村に「特定高齢者」と認められた65歳以上の高齢者
サービス内容例
通常、通所型と訪問型があります。
このサービスを受けるには、地域包括支援センターで介護予防ケアプランを作成してもらう必要があるのでご注意ください。
・通所型:医療法人や社会福祉法人施設などでのリハビリや機能訓練、栄養改善指導、口腔機能向上指導など
・訪問型(主に通所が困難な方向け):ホームヘルパーやボランティアなどによる生活援助・生活支援、医療専門職スタッフによる健康指導や栄養指導、食事宅配や見守りなど
対象者:要介護認定されていない健康な65歳以上の高齢者、要支援1~2の認定を受けた65歳以上の高齢者
サービス内容例
・体操教室や体力づくり教室
・栄養改善や口腔機能向上の指導、認知症予防教室
・地域コミュニティやイベントへの参加
・地域のボランティア活動
・生きがいづくりのためのサークル活動や趣味サロンの開設
デイサービスを利用できるのは要介護1〜5の認定を受けた人です。
要支援1〜2の人もデイサービスを利用できますが、「介護予防・生活支援サービス事業」の通所型サービスとしての利用となります。
介護度認定を受けていない人を対象に、介護予防を目的とした通所型サービスがあります。
市町村にて管理されており、デイサービスセンターなどの施設で、入浴や食事などの支援や機能訓練、レクリエーション等が日帰りで利用できます。
食事や入浴などの生活支援、筋力トレーニングなどの機能訓練、レクリエーションなどが日帰りで受けられます。
ただし、介護の専門職がいないデイサービスでは、入浴や食事の提供はなく、レクリエーションや運動機能訓練などが中心になるなど、施設によって受けられるサービスが異なるので、利用前に受けられるサービスを確認しておきましょう。
施設が近い場合など、徒歩で通うこともできます。
送迎を利用しない場合は、利用料から送迎サービス料が減算されます。
デイサービスにはさまざまな種類があるため、利用する前に対象者の条件やサービス内容など施設選びのための情報収集がポイントです。
要支援の方や健康な65歳以上の方は、要介護となる前に、地域の介護予防サービスを活用していくことも検討してみましょう。
木場 猛(こば・たける) 株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー)
介護福祉士 介護支援専門員 東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 国内ビジネスケアラーデータ取得数最多の仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ監修や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。 3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。
著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』
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