訪問看護を医療保険で利用する条件や制限ってなに?介護保険との違いもご紹介

訪問看護を医療保険で利用する条件や制限ってなに?介護保険との違いもご紹介

訪問看護サービスを医療保険で利用するためには、条件や制限があることはご存じでしょうか。実際に利用しようとしても、実は条件に合わなかった、制限があり希望するサービスを受けられなかったということでは戸惑ってしまう方も多いと思います。

ここでは、それらの条件や制限を整理するとともに、介護保険との違いと合わせて解説します。ぜひ参考にしてください。

 

訪問看護で使える保険とは?医療保険と介護保険の違い

訪問看護のサービスを利用するとき、使える保険には医療保険と介護保険の2種類があります。この2つは、対象者や受給条件の違い、さらに保険の制限にも違いがあります。

しかし実際に利用する際、どちらの保険を利用すればよいのかも含め、疑問に思うことは多いでしょう。

ここでは、医療保険と介護保険それぞれの利用条件を整理するとともに、注意点についても解説します。

 

使える保険は医療保険と介護保険の2種類

訪問看護で使える保険には、医療保険と介護保険の2種類があります。どちらの保険が適用されるかは条件によって異なります。それぞれの条件を整理しましょう。

 

医療保険が適用される条件

訪問看護のサービスを、医療保険を利用して受ける場合には以下の条件があります。

  1. 40歳未満の方
  2. 40歳以上65歳未満で、介護保険第2号被保険者ではない方
  3. 65歳以上で、要支援・要介護認定を受けていない方
  4. 要支援・要介護認定を受けた方で、以下に該当する方
  • 厚生労働大臣の定める疾病に該当する方
  • 精神科訪問看護が必要な方(認知症を除く)
  • 医師が週4日以上の訪問看護が必要と判断し、特別訪問指示書が出た方

 

介護保険が適応される条件

  1. 65歳以上で、介護保険の要支援・要介護認定を受けた方(介護保険第1号被保険者)
  2. 40歳以上65歳未満の方で、16特定疾病疾患の対象者に該当し、要支援・要介護の認定を受けた方(介護保険第2号被保険者)

 

要介護認定を受けている場合は介護保険が優先

要介護や要支援の認定を受けている場合は介護保険が優先されます。これは、病気などの医療に関するサービス提供は医療保険、介護に関するサービス提供は介護保険という原則を考えるとわかりやすいです。

しかし、介護保険を利用して訪問看護サービスを受けている方でも、ケガや病気の進行により、医療的サポートが必要になることがあります。そのような場合、特別訪問看護指示書を主治医が記載し、適応されている期間は医療保険の適用となります。この場合も、同じ期間に医療保険と介護保険は併用できないため、訪問看護サービスは医療保険、訪問介護等その他介護サービスは介護保険といった適用となります。

訪問看護を利用するには?

訪問看護を利用する場合、まずは主治医による訪問看護指示書が必要となります。訪問看護指示書の有効期限は、主治医が発行後6か月となります。そのため、継続して訪問看護を利用する場合は、有効期限内に主治医に交付を依頼する必要があります。

訪問看護指示書をもとに、公的医療保険や公的介護保険を利用して訪問看護サービスを受けることになります。それぞれの保険制度ごとの流れや内容については以下で解説します。

公的医療保険を利用する場合

公的医療保険で訪問看護サービスを利用する場合、主治医による訪問看護の指示は直接訪問看護ステーションに出されます。訪問看護指示書による主治医の指示のもと、訪問看護サービスが開始されるという流れになります。そのため、希望する訪問看護ステーションがある場合は、主治医に直接伝えるようにしましょう。もしも希望がない場合は、主治医による選定となるため、普段からよく利用する訪問看護ステーションなどに依頼が出されることが多いでしょう。

訪問看護指示書をもとに、訪問看護ステーションのスタッフから連絡があり、訪問看護の開始日や訪問日・訪問時間などの詳細の調整となります。

通常公的医療保険による訪問看護サービスでは、訪問回数は週3回、1回の訪問時間は90分までとなるため、その範囲内での調整となります。

公的介護保険を利用する場合

公的介護保険で訪問看護サービスを利用する場合は、担当のケアマネージャーが作成するケアプランに訪問看護が組み込まれることになります。そのため、まずは介護認定を受け、介護保険の支給限度範囲内に収まるようにケアプランを作成することからスタートとなります。その後、ケアマネージャーより主治医に訪問看護指示書の作成依頼があり、訪問看護ステーションもケアマネージャーとともに選定することとなります。

医療保険とは異なり、介護保険では支給限度額範囲内であれば訪問看護サービスの訪問回数や時間に制限はありません。しかし、一般的に訪問看護以外にも訪問介護や通所介護などの介護サービスを必要とする場合がほとんどであるため、実質的には訪問看護の利用回数には限りが生じてしまいます。

公的医療保険と公的介護保険は併用できない

公的医療保険と公的介護保険はどちらかのみの適用となるため、原則併用することはできません。そして、要介護や要支援の認定を受けている場合は介護保険が優先されます。それぞれの保険制度ごとで申請の流れも異なるため、まずはどちらの保険が適用されるのか整理したあとに利用手続きを進めるようにしましょう。

 

自費でも利用可能

介護保険で訪問看護を利用する場合、支給限度額があるため、訪問看護を受けたくてもその範囲内に収まらないことがあると思います。また医療保険を利用している場合でも、週に3回以上の訪問を希望する場合もあると思います。そのようなとき、自費で訪問看護を利用することも可能です。

しかし、訪問看護にかかる費用は全額自己負担となるため、負担額が多いことに注意が必要です。1時間の訪問看護では5,000~10,000円と幅があり、6,000~7,000円の価格帯が多いですが、これらすべてが自己負担となります。夜間や早朝などでは割増料金がかかることがほとんどです。また、事業所によっては入会金や訪問看護師の交通費がかかるなど、事業所やサービス内容によって費用が異なるため、確認が必要です。

 

自費で訪問看護を利用する場合、民間の保険は利用できるの?

自費で訪問看護を利用する場合、民間の保険も利用可能です。保険の種類や特約の付帯状況によって内容は異なります。医療保険・介護保険にそれぞれについて整理します。

自費で訪問看護サービスを利用する場合、利用回数や利用可能時間に制限はありません。そのため、公的介護保険では支給限度額を超えてしまう場合や、公的医療保険を利用して週3回の訪問看護サービスの制限がある方で、それ以上の訪問看護サービスを希望する場合に利用を検討する方が多いです。

また公的保険制度では、自宅など利用者の居宅への訪問が原則であるため、訪問看護での外出付き添いや受診同行はできませんが、自費でのサービス利用の場合この制限がありません。そのため、訪問看護師に病院受診を付き添ってもらい内容を家族に教えてほしい、交通機関を利用しての外出時に付き添ってほしいなど、個別的な対応を希望される場合にも自費でのサービス利用を検討することがあるでしょう。

そのほか、自費での訪問看護サービスの場合、訪問看護指示書は原則不要なため、サービスを利用したいとき、すぐに対応が可能となります。筆者の経験では、公的保険制度を利用する際の手続きがわずらわしく、自費でのサービスを利用するという方もいました。しかし、サービス内容に医療行為が含まれるときは訪問看護指示書が必要な場合があるので、事業所に確認するようにしましょう。

民間医療保険は使える?

民間の医療保険は、基本的に病気やケガで入院したときの保障が目的のため、訪問看護サービスに十分対応できていないことがほとんどです。「通院給付金」も往診が対象となっているため、訪問看護サービスを利用時には対象外となってしまう場合が多いです。

しかし最近になり、特約で「在宅医療給付金」を付けられる医療保険が販売され、公的医療保険制度の在宅患者診療・指導料が算定される在宅医療を受ければ、給付金を受け取ることができるようになりました。また、このほかに「退院後療養給付」が付いていると、退院により給付金が受け取れるので、その後の訪問看護サービスを利用する際の負担を軽減することができます。

これらの内容は特約で付加している場合がほとんどであるため、ご自身の契約内容を確認するようにしましょう。

 

民間介護保険は使える?

民間の介護保険では、介護が必要と認定された場合、一時金や年金として給付を受けることができます。しかし、給付要件に要介護認定を設定していることが多く、保険会社によって給付できる要介護の区分が異なっているため注意が必要です。たとえば、要介護1以上に認定されたら介護一時金が受け取れる保険や、要介護3以上に認定されれば介護年金を受け取ることができる保険などです。そのため、契約している介護保険の内容を確認するようにしましょう。

民間保険を併用する場合の注意点

民間保険を併用する場合の注意点としては、保険料の支払いが家計に与える影響です。民間保険は、公的保険制度を利用しても補いきれない部分の保障となりますが、実際は保障の対象外となってしまう事例もあり、貯蓄に頼らざるを得ないことが多くなります。そのようなとき、保険料の支払いで手持ちの資金が不足してしまう、その後も保険料を支払い続けることでの家計の負担になってしまうなど、民間保険自体が負担になってしまう可能性については注意が必要です。

訪問看護を医療保険で利用すると制限があるって本当?

公的医療保険で訪問看護サービスを利用する場合、利用頻度や時間などに制限があります。具体的には、訪問頻度は原則週に3回、1日1回まで。訪問時間は1回90分までとなります。そして、1カ所の訪問看護ステーションから、看護師1人が訪問となり、複数の事業所を利用することはできません。

 

利用制限が外れる条件

病状によっては、制限の範囲内での訪問看護では不十分となってしまうことがあります。そのため、以下の条件に該当する場合は基本的な制限に縛られることなく訪問看護を利用することができます。

訪問看護の利用制限が外れる条件

  • 主治医から「特別訪問看護指示書」が交付された場合
  • 「厚生労働省が定める疾病等」に該当した場合
  • 「医;特別管理加算の対象者」に該当した場合

「特別訪問看護指示書」とは、病状が急に悪くなったときや終末期、退院直後といった、頻繁な訪問看護が必要と主治医が認めると交付を受けることができます。特別訪問看護指示書は、訪問看護指示書を記載した医師による発行となります。これには有効期限があり、対象となる疾患に対して、医師の診療を受けた日から14日以内となります。

「厚生労働省が定める疾病等」とは、以下の疾病が該当します。

  • 末期の悪性腫瘍
  • 多発性硬化症
  • 重症筋無力症
  • スモン
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 脊髄小脳変性症
  • ハンチントン病
  • 進行性筋ジストロフィー症
  • パーキンソン病関連疾患
  • 多系統萎縮症
  • プリオン病
  • 亜急性硬化性全脳炎
  • ライソゾーム病
  • 副腎白質ジストロフィー
  • 脊髄性筋萎縮症
  • 球脊髄性筋萎縮症
  • 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
  • 後天性免疫不全症候群
  • 頚髄損傷
  • 人工呼吸器を使用している状態

「医;特別管理加算の対象者」とは、以下の状態を指します。

  1. 以下のいずれかの状態の方
    • 在宅悪性腫瘍等患者指導管理もしくは在宅気管切開患者指導管理を受けている
    • 気管カニューレもしくは留置カテーテルを使用している
  2. 以下のいずれかを受けている状態にある方
    • 在宅自己腹膜灌流指導管理
    • 在宅血液透析指導管理
    • 在宅酸素療法指導管理
    • 在宅中心静脈栄養法指導管理
    • 在宅成分栄養経管栄養法指導管理
    • 在宅自己導尿指導管理
    • 在宅人工呼吸指導管理
    • 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理
    • 在宅自己疼痛管理指導管理
    • 在宅肺高血圧症患者指導管理
  3. 人工肛門または人工膀胱を設置している状態の方
  4. 真皮を超える褥瘡の状態
  5. 点滴注射を週3日以上行う必要があると認められた状態

 

聞きなれない言葉が多く、戸惑う方が多いと思います。しかし「厚生労働省が定める疾病等」や「医;特別管理加算の対象者」に該当するかは主治医による判断となるため、該当するかは主治医に直接もしくは、かかりつけの窓口や看護師に相談してみるとよいでしょう。

適用されることで、洗浄や消毒など連日の医療処置が必要な方や、病状が不安定で細やかな病状観察が必要な方にとっては、安心して生活を送ることにつながるでしょう。

特別訪問看護指示書での訪問看護はどうなる?

特別訪問看護指示書が発行される場合は、14日間にわたり、基本的な制限に縛られることなく訪問看護を利用することができます。つまり、複数の訪問看護ステーションを利用して、連日の訪問看護を利用することが可能です。

原則として月1回までの交付とされていますが、気管カニューレを使用している、あるいは真皮を超える床ずれのある方は、月2回まで交付を受けることができます。月2回交付されるケースでは、医療保険を利用してほぼ毎日訪問看護を受けることができます。

 

まとめ

訪問看護サービスを利用しようとしても、さまざまな保険制度があり混乱されてしまう方も多いでしょう。まずは、訪問看護サービスを利用するうえでの自分たちの希望を整理し、公的医療保険の対象者であれば主治医に、公的介護保険の対象者であれば担当のケアマネージャーに相談するようにしましょう。そのうえで、不足しているサービスがあれば自費でのサービス利用という手段もあるため、加入している民間の保険内容を確認し、利用を検討してみましょう。

本記事が訪問看護サービスを利用しようとしている方々の参考となれば幸いです。

 

この記事の監修者

回答者アイコン木場 猛(こば・たける) 株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー) 介護福祉士 介護支援専門員 東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 国内ビジネスケアラーデータ取得数最多の仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ監修や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。 3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。 著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』
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