「親の介護が必要になったら、仕事を諦めるしかないのか?」この疑問に悩む人は多いでしょう。介護と仕事の両立に不安を感じ、どうすればよいかわからずモヤモヤしていませんか?
仕事と介護の両立を実現させるには、「介護のために仕事を調整する」という発想ではなく、「自分のキャリア・生活を軸に介護を調整する」という考え方を持つことが大切です。
本記事では、仕事と介護を無理なく両立するためのポイントを紹介します。
両立の負担が何で決まるかを知っておきましょう。なるべくシンプルに考えると、仕事の負担と介護の負担の足し算です。
「仕事の負担」を減らすと、一時的な補助はあるにしても、収入が下がる可能性があります。
もう一方の「介護負担」は、親御さんに必要な介護の量と、それを「自分でやる割合」のかけ算になります。親御さんに必要な介護の量は親御さんの状態で決まります。どれぐらい歳をとったか、と考えてもいいかもしれません。
親御さんを若返らせることはできないので、変えられるのは自分でどこまでやるかという割合だけです。
仕事と介護の両立を考えた時に、コントロールできることは実は一つしかないのです。
自分でやるか、他人に任せるか。
自分でやる割合が増減すると生活に大きく影響が出るので、考え方としては「どのくらい介護を他人に任せられるか」という表現の方が合っているかもしれません。
そのため、制度やサービスをうまく使って「他人に任せる」やり方を知っておくことが重要とされています。
では、両立のポイントを見てみましょう。
介護が必要になったとき、多くの人は「介護のために働き方を調整しなければ」と考えがちですが、それでは介護に振り回されてしまいます。大切なのは、自分が今後どのように働き、どんな生活を送りたいのかを明確にすること。その上で、その暮らしを実現できるように、介護の体制を整えるのが理想的です。
例えば、「仕事を続けながら、できる限り通常の生活リズムを維持したい」と考えるならば、介護サービスの活用を前提にした体制づくりが必要になります。介護休業は、家族が自ら介護をするための期間ではなく、「両立するための準備期間」と捉え、適切なサービスを選び、体制を整える時間に充てるのが重要です。
介護が始まると、つい家族が主体的に動こうとしてしまいます。しかし、物理的な介護(移動、入浴、食事介助など)は、できるだけプロに任せることが大切です。介護のすべてを家族が担おうとすると、負担が一気に増え、仕事との両立が難しくなります。
介護サービスを最大限活用し、不足する部分を「保険外サービス」で補うことも検討しましょう。たとえば、訪問介護やデイサービスでカバーできる範囲を把握し、必要に応じて家事代行サービスなども組み合わせると、家族の負担を減らすことができます。
また、介護に時間を割きすぎると、「介護離職のボーダーライン(平日2時間・休日5時間)」を超えてしまう可能性が高まります。これを超えると仕事との両立が難しくなり、離職に至るリスクが高まることが統計的にも示されています。家族としての役割は「介護をする人」ではなく、「介護を適切にマネジメントする人」になることを意識することが重要です。
介護が必要になったとき、最も避けたいのは「家族がなんとかしよう」と初動を遅らせることです。家族が先行して頑張ってしまうと、後から介護サービスを導入しようとしたときに、親が拒否するケースが増えるためです。
介護が必要になりそうな兆候が見えたら、すぐに「地域包括支援センター」やケアマネージャーに相談し、早めにサービスを利用するのがベスト。
たとえば、「まだそんなに悪くないから…」と先延ばしにすると、急激に状態が悪化したときに十分なサポートを受ける余裕がなくなってしまうのです。
また、遠距離介護の場合は特に、自分が行かなくても親の様子が分かるような体制を作ることが不可欠です。
地域の見守りサービスや、緊急連絡システムを活用し、遠隔でも適切な支援が受けられるように準備しておきましょう。
介護と仕事を両立させるためには、「介護のために働き方を調整する」のではなく、「自分の暮らしを守るために介護の体制を調整する」という発想が重要です。そのために、
この3つのポイントを押さえておくと、仕事と介護の両立が現実的になります。
木場 猛(こば・たける) 株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー)
介護福祉士 介護支援専門員 東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 国内ビジネスケアラーデータ取得数最多の仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ監修や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。 3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。
著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』
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