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フレイルとは何か?症状や原因、知っておきたい介護予防の方法と診断チェックを紹介

病院で待機する高齢者 #フレイル対策

「フレイル」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?高齢化が進む中で、フレイルは注目を集めるキーワードの一つとなっています。何が原因で起こるのか、どんな症状が現れるのか、そして予防方法についても紹介します。

フレイルとは?

フレイル状態

フレイルとは、高齢者に見られる、加齢による心身の老化と社会とのつながりが減少した状態を指します。要介護の前段階と位置づけられていますが、身体的、認知的な機能低下だけでなく、自立障害や死亡リスクを引き起こしやすい状態でもあります。

「虚弱」や「脆弱」を意味する英語の「Frailty(フレイルティ)」の日本語訳で、日本老年医学会が2014年に提唱しました。身体的な衰えだけでなく、精神的脆弱や社会性の低下も特徴的で、超高齢化社会において、重要な病態となっています。

フレイルは発症する前に予防することが大切ですが、早期に発見されれば、ライフスタイルを改善することで回復することができると言われています。

フレイルは高齢者に起こりやすい

フレイルは、高齢者に多く見られ、身体機能の低下により、日常生活に支障が出やすくなります。

例えば、身体の柔軟性が低下したり、手足の筋力が弱くなったりすることで、転倒や認知症を引き起こすことがあります。

放置すると介護が必要になるリスクが高まるため、早期発見と予防・改善が重要です。

フレイルになりやすい疾患

フレイルになりやすい疾患には、糖尿病、高血圧、がんなどが原因となる脳卒中、心臓病、腎臓病などが挙げられます。骨粗鬆症、運動器不安定症、喫煙者に多い慢性閉塞性肺疾患(COPD)なども、フレイルの要因と言われます。
また、高齢や疾患によって筋肉量が減少し、筋力が低下する「サルコペニア」、筋力・関節・骨など運動器の機能障害による歩行や立ち上がりなどの身体機能(移動機能)の低下を指す「ロコモ(ロコモティブシンドローム)」は、疾患と関連してフレイルの進行につながります。

このように、フレイルは多くの疾患と関わっていることが特徴で、特に日常生活の動作に影響を及ぼす疾患はフレイルが発症しやすくなると考えられています。

フレイルの症状とその原因

関節痛・膝痛のリハビリで階段の昇り降りをする高齢者女性(ロコモ・フレイル・サルコペニア・骨粗鬆症)

フレイルになると見られる具体的な症状とその原因について見ていきましょう。

フレイルになる原因

高齢者がフレイルになる大きな原因として「身体的な衰え」、「精神・心理的な衰え」、「社会的な衰え」の3つが考えられます。

身体的には、上記で紹介したサルコペニアやロコモ(ロコモティブシンドローム)、口腔機能の低下による栄養状態の悪化が挙げられます。

精神・心理的な要因には、MCI(軽度認知障害)やうつ病、認知症があります。

社会的要因としては、孤立や孤食、閉じこもりがあります。高齢者は活動量が減って、社会と関わる機会も減るため、注意が必要です。

フレイルの具体的な徴候・状態

高齢者のフレイルの徴候として「体重減少」、「筋力低下」、「疲労感」、「歩行速度の低下」、「身体活動量の減少」が挙げられます。

以下の日本版CHS基準という評価方法では、これら5つのうち3つ該当する場合がフレイル、2つの場合がプレフレイルとされています。

項目評価基準
体重減少6ヶ月で体重が2~3kg以上減った
筋力低下握力が、男性:26kg未満、女性:18kg未満
疲労感ここ2週間、わけもなく疲労感を感じる
歩行速度通常歩行速度が、毎秒1.0m未満
身体活動軽い運動や体操、または定期的な運動をしていない

出典:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター

フレイルサイクルとは?

フレイルサイクル」

Xue QL, Bandeen-Roche K, Varadhan R, et al. Initial manifestations of frailty criteria and the development of frailty phenotype in the Women’s Health and Aging Study II. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2008; 63: 984─90 を元に改変作図

フレイルサイクルとは、高齢者の身体機能が低下し、疲労や食欲不振などが重なり、身体能力や日常生活動作が低下するというサイクルを繰り返し、より深刻なフレイル状態に陥る悪循環のことを指します。

具体的に言うと、加齢や疾患により筋肉量が減り、歩く速度が落ちたり、疲れやすくなったりして、活動量が減ります。外出も減り、人と会う機会も少なくなります。動かないのでエネルギーも消費されず、食欲もなくなり、栄養不足になって体重が減ります。そしてまた筋肉量が減り….というループが出来上がります。

この状態に陥ると抜け出すことが難しくなるので、早期に発見し、適切な改善サポートをすることが、予防や回復につながるとされています。

簡単フレイル診断チェック

フレイルを判断するために厚生労働省が作成した「介護予防のための生活機能評価に関するマニュアル(改訂版)」による、基本チェックリストを紹介します。

NO質問事項
1バスや電車で一人で外出していますか
2日用品の買い物をしていますか
3預貯金の出し入れをしていますか
4友人の家を訪ねていますか
5家族や友人の相談にのっていますか
6階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか
7椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がってますか
815分間位続けて歩いていますか
9この1年間に転んだことがありますか
10転倒に対する不安は大きいですか
116ヶ月間で2~3kg以上の体重減少はありましたか
12身長(cm)・体重(kg)・BMI数値(=体重➗身長➗身長が18.5未満の場合に該当)
13半年前に比べて堅いものが食べにくくなりましたか
14お茶や汁物等でむせることがありますか
15口の渇きが気になりますか
16週に1回以上は外出していますか
17昨年と比べて外出の回数が減っていますか
18周りの人から「いつも同じ事を聞く」などの物忘れがあると言われますか
19自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか
20今日が何月何日かわからない時がありますか
21ここ2週間、毎日の生活に充実感がない
22ここ2週間、これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった
23ここ2週間、以前は楽にできていたことが今ではおっくうに感じられる
24ここ2週間、自分が役に立つ人間だと思えない
25ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする

 

上記の基本チェックリストで「はい」と答えた数と以下の表を照らし合わせて、簡単にフレイル診断チェックができます。気になる場合はセルフチェックしてみましょう。

NOチェックの目的フレイルの可能性がある点数
1~20日常生活全般10点以上
6~10運動器の機能3点以上
11~12栄養状態11が「はい」で、12のBMIが18.5未満の人
13~15口腔機能2点以上
16~17社会的交流16が「いいえ」の人(17も「はい」の人は要注意)
18~20認知機能1点以上
21~25心理(抑うつ)状態2点以上

 

フレイルになるのを予防するには?

フレイル予防のためには「栄養」、「身体活動」、「社会参加」を毎日の生活に取り入れることが重要です。

食事・栄養
まず、食事を見直しましょう。食事は活力の源です。筋肉量の維持や免疫力の低下を防ぐため、栄養バランスのとれた食事をしっかり3食とりましょう。タンパク質をとること、噛みごたえのある食品を食べることを意識してください。また、加齢によって噛む力や飲み込む力も低下しがちなので、口腔ケアに気を配ることも忘れずに。口腔機能運動を取り入れることでオーラルフレイルを予防できます。

身体活動・運動
身体活動は、筋肉の発達だけでなく、食欲や心の健康にも影響します。足腰を鍛えることは、認知症予防に効果的な血行促進にも繋がります。

ウォーキングや体操などの有酸素運動を取り入れ、慣れてきたら運動量を増やすことがおすすめです。

社会参加
社会参加は心の健康につながります。地域の行事やボランティア活動に参加したり、趣味を通して人との交流を増やすことが大切です。

他社との繋がりやコミュニケーションは脳に刺激を与え、体も活発化していくのでフレイル予防になると考えられています。自分に合った社会活動を見つけ、参加していきましょう。

まとめ

  • フレイルとは、加齢による心身の老化と社会とのつながりが減少した状態
  • 主な要因は、身体的な衰え、精神・心理的な衰え、社会性の衰え
  • 主な徴候は、体重減少、筋力低下、疲労感、歩行速度の低下、身体活動量の減少
  • フレイルサイクルに陥ると、状態が悪化しやすく、抜け出すことが難しい
  • 予防するためのポイントは、栄養、身体活動、社会参加を生活に取り入れること

高齢になると発症しやすいと言われるフレイルは、その兆候を早期に発見して予防することが大事です。そのまま放置してしまい、適切な対応ができないと要介護状態に陥ってしまいます。気になったら基本チェックリストでセルフチェックをして、毎日の生活に「栄養・身体活動・社会参加」を取り入れていきましょう。

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この記事は専門家に監修されています
 介護プロ
木場 猛(こば・たける)

株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー)
東京大学文学部卒業。2001年の在学中から現在まで22年以上にわたり、介護士・ケアマネージャーの現場職として、2,000世帯以上のご家族を担当し、在宅介護、仕事と介護の両立支援に携わる。
著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』https://amzn.to/3ryjZNg

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