免許返納手続き方法について解説。どこでやるの?手数料は?本人以外もできるの?

免許返納手続き方法について解説。どこでやるの?手数料は?本人以外もできるの?

免許返納とは

免許返納は、加齢に伴う身体機能や認知機能の変化により運転に不安を覚えるようになった高齢者の方や、運転する必要がなくなった方が、運転免許証を自らの意思で返納できる制度です。

年齢制限は設けられていませんが、近年は運転に不安を感じるようになった高齢者の方が自主返納を行うケースが増えています。

運転免許証の自主返納制度は、運転に不安を感じている高齢者や交通事故を心配する家族等周辺の方々から相談が寄せられたことがきっかけで、平成10年からスタートしました。

平成10年の返納件数はわずか2,596件、平成14年に運転経歴証明書の発行が初めて導入されましたが、自主返納数はあまり伸びなかったとのこと。
しかし、平成31年に起こった自動車暴走死傷事故きっかけで令和元年は飛躍的に増加、令和4年は約45万人(75歳未満が175,270人、75歳以上は273,206人)の方が自主返納しています。

【警視庁運転免許の申請取消(自主返納)件数】

以前に比べて記憶力や判断力の低下・筋力の衰え・反射神経の衰えがあると、事故につながるような運転の操作ミスを起こしやすくなります。

以下の様子が見受けられる場合は、これからの運転についてご家族で話し合いが必要な時期かもしれません。

  • 左右のウインカーを間違って出したり、ウインカーを出し忘れることが多い
  • 歩行者や障害物、他の車に注意が向かないことがある
  • カーブをスムーズに曲がれないことがある
  • 車庫入れのとき、塀や壁をこすることが増えた
  • 信号や標識を無視して通行することがある
  • 右左折時に、歩行者や対向車などをよく見落とすようになった

 

運転経歴証明書がもらえる

運転免許証の自主返納後は、過去5年間の運転経歴を証明するための「運転経歴証明書」が交付されます。

平成24年4月以降に交付された運転経歴証明書は、更新の必要もなく運転免許証と同じように公的な身分証明書として永年利用できます。
令和2年4月から、マイナンバーカードの裏面に貼付する運転経歴証明書交付済シールも導入され、証明書がマイナンバーと一体化でき利便性も高まりました。

運転経歴証明書の申請条件は以下のとおりです。

  • 有効期限内の運転免許証を返納している
  • 運転免許証を自主返納してから5年以内の方
  • 免許の取り消し基準に該当していない
  • 免許停止中、又は免許停止の基準に該当していない
  • 再試験の基準に該当しない

免許返納を行うと、今まで利便性の高かった車を運転できなくなり不便になるイメージもあるかもしれません。一方で、免許を返納することにより得られるメリットもあります。

・特典を利用できる

運転免許証を返納して、車の運転ができなくなっても生活や移動手段に困らないように、運転経歴証明書を提示すると各自治体や事業者等から様々な特典が受けられます。ここでは、代表的な特典の例を見てみましょう。

  • 公共交通機関の運賃の割引やシルバーパスの配布
  • ICカードのチャージ補助
  • 百貨店の配送料金割引
  • ホテルや温泉の利用料金割引
  • メガネや補聴器の購入費用割引

免許返納特典を行なっている対象店舗には、高齢者運転免許自主返納サポート協議会に加盟しているロゴマークが提示されています。
運転経歴証明書及び運転経歴証明書交付済のシールが付いたマイナンバーカードを提示すると、特典を受けることが可能です。
特典の内容は自治体によって異なるため、事前にホームページなどで確認しておきましょう。
【警視庁:高齢者運転免許自主返納サポート協議会加盟企業・団体の特典一覧】

 

・事故の当事者にならない
運転免許証を返納して自動車を運転する機会がなくなると、結果として交通事故を起こすリスクも軽減します。
警視庁の統計によると、2022年に全国で起きた75歳以上のドライバーによる車やバイクの死亡率は379件(前年に比べ33件増)と、2年連続で増加​​していることがわかっています。

警視庁:5 高齢運転者による交通死亡事故件数の推移】

 

高齢ドライバーの事故などのニュースを聞くと思わず、「うちの親の運転、大丈夫かな…」「免許返納をするべきか…」といった考えが頭をよぎるのも無理はありません。

しかし、返納に関する判断はとても難しいケースが多く、ご家族が高齢の親御さんの運転に不安を感じたら、運転を続けることのリスクと、運転をやめた時のリスクを見極めながら、親御さんの意思を確認し、それぞれのご家族に応じた解決策を考えていくことが大切です。

 

免許返納に必要なもの

高齢ドライバー

 

ここでは、本人が免許返納手続きを行うのに必要な書類についてお伝えします。

  • 運転免許証
  • 運転免許取消申請書(申請場所に用意されています)
  • 印鑑(一部の自治体のみ)

紛失などで運転免許証が手元にない場合は、住民票やマイナンバーカードなど、住所・氏名・生年月日が確認できるものが必要です。
免許返納と同時に運転経歴証明書の交付申請も行う場合は、以下も用意しましょう。

  • 手数料として1,100円
  • 写真(3cm×2.4cm、カラー、申請前6ヶ月以内に撮影したもの) 運転免許試験場で申請する場合は不要
  • 運転免許取消通知書(自主返納時に発行されます)

免許証を返納した瞬間から車の運転はできません。
手続きを行う会場へは、家族の運転か公共交通機関を利用して向かいましょう。

 

免許返納の流れ

運転免許証の返納をスムーズに済ませるために、手続きの流れを理解しておきましょう。
運転免許証返納手続きは、以下の流れで行います。

  1. 返納手続きの窓口で返納の意思を伝える
  2. 運転免許取消申請書を記入し、免許証と合わせて提出する
  3. 同時に運転経歴証明書を交付申請する場合は、交付申請書を記入して交付手数料と顔写真を提出する
  4. 運転経歴証明書を受け取る(返納場所によっては後日受け取りの場合もあり)

免許返納後は、公安委員会より申請による運転免許の取消し通知書が交付されます。
再発行ができないため、紛失しないように注意しましょう。

免許返納の手続きは、最寄りの運転免許更新センターもしくは、運転免許試験場、管轄の警察署で行なっています

運転免許証の自主返納と同時に運転経歴証明書の交付申請をする方(東京都の場合)

受付場所 受付時間 休日
運転免許更新センター 平日8:30~16:30 土曜、日曜、祝日、年末年始
(12月29日〜1月3日)
運転免許試験場 平日8:30~16:00 

日曜8:30~12:00、13:00~16:00

土曜祝日、年末年始(12月29日~1月3日)
警察署 平日8:30~16:30 土曜、日曜、祝日、年末年始
(12月29日〜1月3日)

受付時間や休日は地域によって異なるため、事前に確認しましょう。

 

免許返納は代理人に委任可能

契約書の捺印をする夫婦

免許返納の手続きは、ご本人の申請が原則ですが、入院中や療養中などやむを得ない事情で手続きが行えない場合のみ、代理人による申請が可能です。
ただし、代理人申請の場合は免許種別の全てを取り消す場合に限ります。

免許返納の代理手続きは、詳しくみてみましょう。

【代理人になれる人】
代理人として手続きができる人は下記のとおりです。
・3親等以内の親族(同居・別居は問わない)
・入院中の病院の職員
・入所中の介護施設の職員

【必要な書類】
代理人が免許返納を行う場合、以下の書類を持参しましょう。

  • 運転免許証(申請者本人の有効期限内のもの)
  • 代理人本人の確認書類(代理人となる人の運転免許証やマイナンバーカード、戸籍抄本、施設の身分証など)
  • 運転免許取消し申請書

免許返納と同時に運転経歴証明書の委任交付申請を行う場合は、以下の書類が必要です。

  • 委任状兼申立書(各都道府県の県警HPからダウンロードが可能、免許返納者本人が記入)
  • 誓約書(代理人が記入)
  • 写真(3cm×2.4cm)
  • 手数料として1,100円
  • 簡易書留分の切手を貼った封筒(運転経歴証明書を郵送希望の場合のみ)
  • 運転免許の取消通知書

代理人に委任する場合、申請者本人に返納の意思を電話で確認する場合もあります。書類の代筆は原則認められていません。怪我や病気などの理由から書類の記入が困難な場合は、窓口への相談が必要です。

代理申請の条件に関しては自治体によって異なるため、事前に警察署や免許センターに確認しましょう。

 

まとめ

・運転免許証を返納後は、運転経歴証明書を交付する
・運転経歴証明書を提示すると、様々な特典を受けられる
・やむを得ない事情の場合は、代理人による返納手続きが可能

年齢を重ねると今まで通りの安全運転を続けられるとは限りません。「何かあってからでは遅いから」「家族が不安に感じている」など、返納を考えるきっかけは人によって様々です。

お互いに運転のリスクを客観的に見極めてコミュニケーションを取ることが重要ではありますが、話を切り出すこと自体が難しいと感じる方も多いのではないかと思います。

実際、「どこが危ないのか」という客観的な事実なしに免許返納を勧めることは、親御さんの自尊心を傷つけ、トラブルの元になる場合もあります。

不安を感じたら、運転を続けることのリスクと、運転をやめた時のリスクを見極めながら、親御さんの意思を確認し、それぞれのご家族に応じた解決策を考えていくことが大切です。できる限り安全に運転を続ける方法も含めて、対応策を考えていきましょう。

 

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この記事の監修者

回答者アイコン木場 猛(こば・たける) 株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー) 介護福祉士 介護支援専門員 東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 国内ビジネスケアラーデータ取得数最多の仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ監修や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。 3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。 著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』
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