子育てしながら介護をするダブルケアラーの方々との会話で、以下の声を耳にしました。
「育休は会社が推奨するようになったので以前よりとりやすくなりましたが、介護に関する休みは会社から何も発信がなく相談しにくい。」
「介護休暇をとっている人が周りにいません。介護休業や介護休暇の制度はありますが、制度を利用しやすい雰囲気がありません。」
先日、ダブルケアラーの幸子さん(仮名)とお話をする機会がありました。40代の幸子さんは要介護4の実母を在宅介護、中学生と小学生のお子さん2人を育てながら、大手企業にて中間管理職として働いています。「働き方の変化」「困ったこと」など生の声を聞きました。1つの事例としてQ&A形式でご紹介します。
はい、介護の専門家や行政に相談しました。ですが、育児と介護と仕事が重なっている状況を理解してくれる方には出会えませんでした。会社の人事に相談をしたところ、制度の説明はしてくれましたが、介護と育児が重なった前例はない状況でした。本を読みネットで検索してNPOに相談窓口があることを知り、相談をしました。NPOには経験者や当事者がいらっしゃったので、初めて自分が置かれている状況をわかってくれる人に出会えました。
介護関係のサービスを探すこと、決めること、対応することが積み重なり、体力気力が限界に近づき、離職もやむなしと考えるようになった時期もありました。ですが、通院介助の待ち時間や通勤電車等、一息つける時間に悶々と考え「離職をすると今まで作ってきた社会とのつながりが切れ、私の意思で選択できる機会が少なくなり、さらに自分が追い込まれる可能性がある」と気づき、離職を踏みとどまりました。
有給休暇と介護休暇(無給)を利用しています。介護の負荷が急に高まった時期は2、3週間有給休暇をいただきました。ケアマネさんとの担当者会議や通院介助で離席する場合は、時間単位で休暇をいただいています。有給休暇がなくなった時の保険として、介護休業は残しています。
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はい、ありました。私は朝型人間でして、介護が始まる前から早朝始業をさせていただいていましたが、本格的に介護が始まってからは朝5時に始業し14時~15時終業しています。終業後もオンラインでつながっていますので、トラブル等急ぎ対応の連絡が入った場合は対応します。周囲に同じような働き方の人はいませんが、会社が幅広い働き方を許容してくれており感謝しています。
会社はオフィス勤務とリモート勤務のハイブリッドを許容してくれています。私は育児のみ時からリモート勤務を可能な範囲で使わせていただいていました。最近は基本的にリモート勤務です。対面や紙での対応が必要な業務は出社します。出社時は「午前中のみ」「〇時から〇時まで」等時間を決め、周囲に共有した上で、出社しています。
失敗談があります。母の通院が眼科、内科、リウマチ科、歯科とあり、1人で通院介助をやりくりしながら働いていた頃、子供の学園祭に参加しそびれました。目の前の介護で手一杯になり、育児が後回しになっていたのです。コロナ禍で事前申込制だったのですが、気が付いたら申込期限が過ぎていました。結果、「クラスで親がいないのは自分だけで1人で学園祭まわったよ。でもお母さん大変そうだから気にしないで。」と子供から悲しそうに言われました。中学1年生で初めての学園祭を1人でまわるのは心細かったと思います。その頃から、介護よりも育児を優先しようと意識するようになりました。
私がフルタイムで働いていることをケアマネさんに伝えても「今日家に伺ってもよいですか?」と何度も電話がかかってきたことです。私が常に家にいる前提でコミュニケーションをされているようで、ケアラーはケアをする人として位置づけられ、育児や仕事とのやりくりを伝えてもピンときていない様子でした。ケアマネさんには「私がケアしきれないこと」を何度も具体的に伝えるようにしました。
もう1つの困った点は、我が家の場合、介護事業所とのやりとりがすべて紙と電話になる点でした。メールでのやりとりを依頼しましたが、メールは使っていないとのことでした。メールやSNSが使えれば仕事の合間や通勤時間にやりとりできますが、電話ではそれができないので困っています。
不定期に休暇をとらざるをえなかった時期に、同僚から「働く曜日や時間を決められないか?」と聞かれました。私も逆の立場であれば同じように考えるものの、母の症状が日々変化する状況で調整をしたくてもできませんでした。つらかったです。同僚には、状況を伝えて謝ることしかできませんでした。
もう1つは「気遣いされ、情報共有先から自然に外されること」です。仕事に支障が出そうな時は、自分から質問しキャッチアップをしつつ、次から共有してほしいと直接伝えるようにしました。
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つい目の前の対応に入り、自分のことを後回しにしがちですが、後回しにしすぎると自分が疲弊します。結果、介護も育児も支えられなくなります。意識的に自分の時間を持つようにしています。
状況により判断は変わりますが、子供と向き合う時間を大切にするよう意識しています。
突然業務から抜ける可能性を想定し、業務フローやタスクがブラックボックスにならないよう、状況が誰からでもみえるように落としています。
幸子さんは「今後私のようにダブルケアをしながら働く人が増えるでしょう。働き手が減り、かつその働き手に制約ができることを考えると、フレキシブルな働き方とセットで業務効率化や改善を進めて、成果につながった事例を積み上げられると嬉しいです。」とコメントされていました。
家庭環境、職場環境は個別性がありますが、ケアラーが直面する課題は共通点がありますので、事例としてご紹介しました。
サポナビ編集部