要介護5は、要介護認定の中で最も重い認定です。
介護がなければ生活することは難しい状況と言って良いでしょう。
お金がどれだけかかるのか、どのようなサービスがあるのか、重い状態だからこそ知りたいと思う方もいらっしゃいますよね。
要介護5の状態とは具体的にどのような状態なのか、そして要介護の方が受けられるサービスや給付金の種類・限度額など、あらかじめ知っておくことが非常に大切です。
この記事で説明していきますので、最後までご確認ください。
要介護5とは、要介護状態等区分が7段階ある中で最も症状が重い状態です。
立ち上がって歩くことが困難、1日中寝たきりの方も多くいらっしゃいます。また、理解力の低下があり、徘徊リスクなどもでてきます。認知症などによって、介護者とこのコミュニケーションが困難になることも。
日常生活に必要な家事だけでなく、食事やトイレなど、ほぼ全ての行動に介助が必要なので、最も介護が必要な状態であり、介護者は専門的な知識も必要となる場合もあるでしょう。
要介護4と5の違いは、主に下記の2つと言われています。
身体状態については、どちらも基本的には寝たきり程度の状態は同じではありますが、要介護4ではわずかに自力でできることがあります。また、相対的に一定の意思疎通が可能です。
しかし、要介護5になると自力で行えることがほとんどなく、意思疎通も不能状態となるケースが多いです。
内閣府の「令和元年版 高齢社会白書(全体版)」にて、同居している主な介護者の介護に必要な時間を比べてみましょう。
ほとんど終日 | 半日程度 | 2~3時間程度 | 必要な時に手を貸す程度 | その他 | |
---|---|---|---|---|---|
要介護4 | 45.8% | 8.6% | 21.7% | 11.5% | 7.7% |
要介護5 | 56.7% | 12.8% | 7.9% | 3.0% | 11.9% |
ほとんど終日と答えた方が、要介護4で45.8%、要介護5は56.7%です。要介護5の方が終日介護を必要としていることがわかるでしょう。
※要介護4についてはこちらで詳しく解説
厚生労働省では、要介護認定の段階を判断する基準として「要介護認定等基準時間」を定めています。
「要介護認定等基準時間」とは、介護の手間にかかる時間を示した指標のことです。
※この時間は実際に介護に要する時間とは異なるもので、あくまでも要介護認定のための尺度として用いられる基準になります。
要介護認定は一次判定と二次判定で認定されます。
一次判定は、認定審査員による認定調査と、主治医が発行する主治医意見書の情報をもとに、コンピュータにて行われるものです。1日の介護に必要な時間の目安となる「要介護認定等基準時間」が算定され、その長さによって要支援1〜要介護5まで区分されます。
要介護5の基準は「110分以上またはこれに相当する状態」で、最長です。
要介護認定等基準時間の内訳 | |
---|---|
要支援1 | 25分以上32分未満 |
要支援2 | 32分以上50分未満 |
要介護1 | |
要介護2 | 50分以上70分未満 |
要介護3 | 70分以上90分未満 |
要介護4 | 90分以上110分未満 |
要介護5 | 110分以上 |
または上記時間に相当すると認められる状態
出典:「【資料6】要介護認定の仕組みと手順」(厚生労働省)
要介護5で受けられる介護サービスは、以下のとおりです。
先程お伝えした通り、要介護5になると、終日介護が必要になってきます。そのため、ケアマネジャーから施設入所の申し込みを提案される方がほとんどでしょう。しかし、仮に在宅介護を行う場合には、訪問や通所サービスのサポートが必ず必要です。
それぞれのサービスごとに見ていきましょう。
訪問サービスは自宅にいながら専門スタッフによるサービスを受けられます。
主なサービスは以下のとおりです。
訪問介護では専門のスタッフが、自宅で食事や入浴、洗濯、掃除、夜間のおむつ交換や、安否確認に対応してくれるサービス、床ずれの処置や点滴などの看護ケアを専門に行う訪問看護もあります。
通所サービスは、デイサービス等の施設に日帰りで通って受けられるサービスです。
主なサービスは以下のとおりです。
介護や高齢者の身体的機能の維持、改善を目的とした機能訓練などを、専門施設へ定期的に通って介護サービスを受けられます。
ケアプランによっては、個々の身体状況に合わせたデイサービスと呼ばれる通所介護のみを毎日利用することも可能です。
また通所サービスは、施設のスタッフが車で送迎してくれる施設もあります。寝たきりの状態でも車椅子のまま乗車出来るリフト送迎車などを使用して適切に対応してもらえるので、非常に便利です。
施設入所サービスは、自宅から専門の施設へ入居し介護サービスを受けます。
主に以下のような施設を利用する方が多いでしょう。
要介護5は在宅で介護するのは難しく、家族の健康も損ねてしますケースもあります。
手厚い介護や医療ケアを受けられる施設へ移り住むことで、本人や家族の健康を守れる場合もあるので提案されることも多いでしょう。
要介護5で使えるサービスは他にもあります。
在宅介護中の高齢者に状況に合わせて、短期間のみ施設に宿泊できるショートステイや、小規模な施設のグループホームなどへの入所も可能です。
また、介護ベッドや床ずれ防止用具などのレンタルや、腰掛便座・入浴補助用具などの購入にも、介護サービスが適用されます。
要介護5の認定を受けただけでは、直接お金をもらうということはありません。
医療保険と同様に、世帯の所得額によって決まる1~3割の負担割合の残りの部分が介護保険で補われますが、要介護度ごとに直接お金が支給されるということはないのです。
介護保険制度は、介護が必要になった高齢者の介護でかかる費用の一部を社会全体で支える制度のこと。介護が重い方は、その分デイサービスや訪問介護などの介護保険適用サービスを多く利用することができます。
要介護度ごとどれくらい介護保険サービスを利用できるかを示す指標が「単位」となっていて、厚生労働省によって介護度ごとに上限単位が決まっています。
上限単位内であれば、介護保険サービスをお金を払うことなく利用することができるということです。
では、その上限単位はどれくらいなのでしょうか?
要介護認定を受けると、介護サービスを利用する際に限度額の範囲内で負担額の一部が援助されます。要介護5で1割負担と認定されている場合の自己負担額の金額の目安は最大で362,170円です。
介護保険料は所得に応じて負担額が1〜3割自己負担です。また、限度額以上の介護サービスを利用した場合、超過費用は全て自己負担となります。
(1単位10円で計算した場合。なお区分支給限度基準額は、介護サービスや地域間差を考慮して10~11.40円と幅がある)
要介護5 | 362,170円(1カ月あたり) |
1割負担 | 36,217円 |
2割負担 | 72,434円 |
3割負担 | 108,651円 |
参考:厚生労働省「2019年度介護報酬改定について」
介護保険サービスの他に、いくつか受けられる給付金があります。
その例をご紹介しましょう。
高額介護サービス費
所得に応じて負担額の上限が決められていますが、介護サービスの負担額がその上限を超えた時に払い戻される制度があります。
一般的な所得であれば、月額44,000円が負担の上限額とされていて、それより払いすぎた場合には還付されます。
区分 | 負担の上限額(月額) |
課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 | 140,100円(世帯) |
課税所得380万円(年収約770万円)〜課税所得690万円(年収約1,160万円)未満 | 93,000円(世帯) |
市町村民税課税〜課税所得380万円(年収約770万円)未満 | 44,400円(世帯) |
世帯の全員が市町村民税非課税 | 24,600円(世帯) |
世帯の全員が市町村民税非課税
前年の公的年金等の収入+その他の合計所得金額の合計が80万円以下の方など |
24,600円(世帯)
15,000円(個人) |
生活保護を受給している方等 | 15,000円(世帯) |
ただし、以下の項目は高額介護サービス費制度の対象にならないため、注意が必要です。
参照元:高額介護サービス費の負担限度額が見直されます – 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/000334526.pdf
住宅改修の補助金
要介護5で受けられる住宅改修の補助金は、上限が20万円です。こちらは原則1回しか使えません(要介護状態区分が重くなり3段階上昇した場合や、転居した場合には再申請が可能)。
20万円以内であれば分割利用は可能とのこと。また、市町村によっては独自の助成金制度を設けている可能性もあります。
ただし、住宅改修の補助金は、介護対象者が施設入居している場合には受け取ることができないので、注意してください。
要介護5の状態では、生活のほぼ全てに介助が必要になってきます。
ご本人の生活も大変ですが、介護をする周りの方々も自分たちだけで頑張ろうとすると苦しくなってしまう場合もあるでしょう。
あらかじめどのようなサービスが使えるのか、給付金の限度額がいくらかなど介護の知識があれば、お互いに負担を少なくしていくことも可能ということを知っておきましょう。
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サポナビ編集部