要介護2は、「身体機能が維持できず、身の回りのことを自力で行うことが困難な状態」です。
身体が思うように動かなくなり、入浴や衣服の着脱・排泄などにも部分的な介助が必要となってきます。
要介護1の時よりも思考力、理解力のさらなる低下がみられるため、日常的な見守りも心がけておかなくてはなりません。
要介護2は、食事や入浴、排泄、掃除や買い物など、身の回りのことにも部分的な介助が必要になりますが、自宅での一人暮らしは可能と言えます。ただし、訪問介護などの介護サービスを利用し、身体状態や周囲のサポート・環境を万全に整えることが必要不可欠です。
実際に、要介護2で一人暮らしをしている方はどれくらいいるのか、見ていきましょう。
<要介護2で一人暮らし(単独世帯)をしている人の割合>
単独世帯 約23.1% 夫婦のみの世帯 約23.7% 夫婦と未婚の子のみの世帯 約6.9% ひとり親と未婚の子のみの世帯 約9.7% 三世代世帯 約14.3% その他の世帯 約22.2% |
*出典:厚生労働省「令和元年国民生活基礎調査 介護」https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003440926
厚生労働省の「令和元年国民生活基礎調査(2019年)」の調べによると、要介護2の認定を受けている人の中で、一人暮らしをしている単独世帯は23.1%と、約4人に1人が一人暮らしをしているという結果が出ています。ただし、同じ家に住みながら世帯分離をしている場合もあるため、ここでの「単独世帯」は必ずしも完全な一人暮らしの数字ではないことをご理解のうえ、目安としてご覧ください。
要介護2の方が利用できる介護保険サービスには、どのようなものがあるでしょうか?
1日中一人でいることがないように、訪問型や短期入所型、通所型などの介護保険サービスをうまく組み合わせながら、一人暮らしのサポートをしてもらいましょう。
訪問介護員(ホームヘルパー)などが、利用者の自宅を訪問して実施する訪問型の介護保険サービスは、主に下記の6種類があります。
訪問介護(ホームヘルプサービス) | ホームヘルパーによる身体介護(食事、入浴等)や生活支援(家事支援) |
訪問入浴介護 | 看護職員と介護職員が自宅に訪問、持参した浴槽で入浴の介護 |
訪問看護 | 疾患のある利用者の自宅を看護師などが訪問、主治医の指示に基づき療養上の世話や健康管理の支援を実施 |
訪問リハビリテーション | 理学療法士などの専門職により、心身機能の回復や日常生活の自立に向けたリハビリを実施 |
夜間対応型訪問介護 | ホームヘルパーの夜間訪問による、安否確認や排泄の介助などを行う「定期巡回」、または急な体調不良の際に訪問してくれる「随時対応」 |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | ホームヘルパーや看護師が24時間365日対応し、心身の状態に応じたサービスを必要なタイミングで提供 |
要介護2の方が利用可能な短期入所サービスとしては、以下の2種類があります。
短期入所生活介護(ショートステイ) | 特別養護老人ホームなどに短期間宿泊し、食事や入浴などの日常生活支援や機能訓練が可能(継続利用は最大30日まで) |
短期入所療養介護(ショートステイ) | 医療面に強い施設に宿泊し、日常生活支援に加え、医療処置や看護、機能訓練など医療的ケア、看護、機能訓練など様々なサービスが可能(継続利用は最大30日まで) |
要介護2の方が利用可能な通所サービスは、以下の5種類があります。
通所介護(デイサービス) | 自宅から介護施設まで送迎の上、食事や入浴などの日常生活支援や機能訓練などが可能 |
通所リハビリテーション(デイケア) | 病院・介護老人保健施設・診療所などに通い、専門スタッフによる「機能維持訓練」「日常生活動作訓練」などのリハビリを実施、日常生活支援の提供も可能 |
認知症対応型通所介護 | 認知症の方を対象に、食事、入浴などの日常的な介護、機能訓練を実施 |
地域密着型通所介護 | 定員18人以下の地域に密着した小規模な施設で、入浴や食事などの介護や機能訓練、レクリエーションを提供 |
療養通所介護 | 持病等のため看護師による観察が必要な方を対象に、医師や訪問看護ステーションと連携、食事・入浴などの日常生活支援、機能訓練を提供 |
要介護2の方が介護保険サービスを利用してレンタルできる福祉用具は、以下の通りです。
福祉用具の種類 | 詳細 |
車いす | 自走式、介助式、電動式など |
車いす付属品 | 杖入れやシートベルト、クッション、転倒防止バーなど |
特殊寝台 | 背上げや高さ調節ができるベッド |
特殊寝台付属品 | 手すりやサイドレール、介助ベルト、テーブルなど |
床ずれ防止用具 | 体圧を分散させるマットレス |
体位変換器 | 体位変換をサポートするクッションやシート |
手すり | 工事を伴わない設置型の手すり |
スロープ | 工事を伴わない設置型のスロープ |
歩行器 | 前後左右にあるフレームを使い両腕で体重を支える歩行補助器具 |
歩行補助杖 | 松葉杖、多点杖、ロフストランドクラッチ |
認知症老人徘徊感知機器 | ベッドの周りに設置し離床時の動きを感知するセンサー機器 |
移動用リフト | 体を持ち上げ、起き上がりや車いすへの移乗をサポートするリフト |
自動排せつ処理装置 | 排泄物を自動吸引して処理する機器 |
介護度によって、利用できる限度額が決まっています。
要介護2の支給金額の上限は、197,050円まで。そのうち1〜3割を自己負担で支払う場合は、以下のようになります。
要介護2の区分支給限度基準額 | ||
19万7,050円 | ||
1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
19,705円 | 39,410円 | 59,115円 |
介護保険サービスはサービス内容ごとに金額が定められています。その金額の累積が毎月の自己負担限度額の範囲に収まるようにサービスの内容や利用回数を考えていく必要があります。一人暮らしをしている場合はできるだけ安否が確認できるよう曜日を分けて各サービスを受けることがポイントです。
例)一人暮らしの場合 | ・訪問介護:週5回
・訪問看護:週1回 ・訪問リハビリ:週2回 ・介護用具レンタル |
例)ご家族と暮らしている場合 | ・ショートステイ:月2回
・訪問看護:週1回 ・訪問リハビリ:週2回 ・介護用具レンタル |
サービス | 利用頻度 | 自己負担額 |
訪問介護(生活支援) | 4回/月 | 約800円 |
訪問介護(身体介護) | 8回/月 | 約3,700円 |
通所介護 | 8回/月(食費等込) | 約12,800円 |
訪問看護 | 2回/月 | 約1,150円 |
歩行用杖レンタル | 1ヶ月 | 約100円 |
合計 | 18,550円 |
こちらの利用回数や金額例は、目安としての一例です。どの介護保険サービスを利用するかは、介護者ご本人の状態により様々です。担当ケアマネジャーと相談して、ご本人に必要とされるケアプランを作成してもらいましょう。
日々の介護サポートを受けることができても、やはり要介護2の方の一人暮らしにはいろいろと不安な点があります。一人暮らしの際のトラブルや事故、注意点を想定の上、リスクについても確認しておきましょう。
・認知機能低下や病気の気づきに遅れる ・自宅へ帰って来られなくなり、警察に保護されることが増える。 ・日常生活がうまくいかなくなる(盗難や詐欺、火の始末や戸締まり忘れ、ゴミの分別がうまくできないなど) ・災害時や緊急時、急な体調不良時の対応の遅れ(逃げ遅れ等のリスク、自ら通報できない状況があることも) ・孤独感から生きがいが失われる |
このようなリスクをふまえ、以下のような状態が見られたら、一人暮らしをやめるタイミングと言えるでしょう。介護者本人の健康面・安全面のためにも、施設の入所を視野に入れてみてください。
・家や屋外で転倒してケガをした
・一人の時に病気の発作が起きた
・徘徊や奇声を発することが多くなった
・認知症による暴言や暴力が増えてきた_
・こうした状態の変化により近隣住民の方とトラブルになる。
一人暮らしをする要介護2の方のために、遠方に住むご家族はどのような支援ができるか、見てみましょう。
自宅での事故対策に、安心して暮らすためのリフォームを検討しましょう。要介護認定を受けていれば、住宅改修費として、介護保険から補助を受けられます。1人につき20万円までが支給され、浴室やトイレ、階段に手すりをつけるなど、安全な住居環境を整えることが可能です。
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毎食の調理や買い物がだんだん億劫になってきた、という高齢者の方は少なくありません。このため栄養のバランスが崩れ、健康維持の妨げになってしまうことも。訪問介護で買い物や調理のサポートを受けることができるほか、民間の配食・宅食サービスなどを活用するのも近年人気となっています。
ご家族が遠方に住んでいる場合、「見守りサービス」を活用するという方法があります。
「見守りサービス」とは、高齢者の生活状況や健康安否を確認できたり、必要な時に支援してもらえるサービスです。現在、様々な提供業者や機器があり、遠方に住むご家族にとっても安心できるサービスが多岐に渡り提供されています。
介護者ご本人の状態や環境、離れて暮らすご家族の目的に合ったサービスを選ぶことで、お互いの不安も軽減できるでしょう。
要介護2になると、自力で一人暮らしを継続することは困難になってきますが、介護サービスを上手に利用すれば不可能ではありません。在宅で利用できる訪問型サービスや通所型サービスなど、様々な選択肢を検討しながら、要介護者ご本人の不安と支援者(介護家族・ビジネスケアラー)の負担を少しでも軽くしていくことが大切です。
また、長年住みなれた自宅で生活ができることは、高齢者の方にとって大きなメリットですが、その反面、リスクやデメリットもあります。自宅の事故防止にリフォーム工事をしたり、見守りサービスを活用して、無理なく安全に暮らしていけるように環境を整えながら、一人暮らしをやめるべきタイミングを視野に入れておきましょう。
金山峰之(かなやま・たかゆき) 介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。
厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。
元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。