在宅で介護をする場合、介護のために必要な住宅改修は介護保険を使ってできることをご存知ですか?一人暮らしをされている要支援・要介護の方や自宅で介護をされているご家族の中には、転倒防止や手すりの設置、バリアフリー設計への改修の必要性を感じてらっしゃる方も多いと思います。
今回は、介護保険適用可能な住宅改修に支給される金額や条件、手続きなどについて解説していきます。
介護保険適用の住宅改修制度とは?
在宅介護の場合、高齢者が住み慣れた自宅でより安全に生活を続けるため、そして支援者(介護家族・ビジネスケアラー)の負担を減らすためにも、住宅をリフォーム・改修する必要がでてきます。介護保険の住宅改修制度とは、そんな介護のための住宅改修にかかった費用の一部を支援してくれる制度です。
住宅改修費の支給額
介護保険を利用した住宅改修の支給額は、20万円を限度として、その1〜3割が自己負担となります。利用できるのは原則として1人1回のみとなっており、複数回の利用はできません。
ただし、同じ住宅に住む複数の人が要介護認定を受けた場合、1つの住宅でも複数回利用することができます。つまり、利用回数は住宅につき1回ではなく、そこに住む個人につき1回20万円となっています。
また、1回の改修費用が限度額の20万円を超えなければ、20万円を複数回にわけて支給を受けることができます。
いずれの場合も、20万円を超えた場合は全額自己負担になるので注意しましょう。
住宅改修費の支給額の例外
住宅改修における介護保険の支給は、基本的に1人1回となっていますが、例外もあります。要支援度や要介護度が3段階上がる場合や、引っ越しをする場合などです。
例えば、要支援2や要介護1の人が要介護4以上になるなど、3段階以上支援度や介護度が上がった場合、住宅改修がさらに必要だと認められます。
また、リフォームをした家から引っ越さなければならないけれども、その転居先が古い家で環境が整っていない場合なども同様です。
これらの場合は、例外として、20万円を限度に再度住宅改修の利用が可能です。ただし、新築への転居は、住宅改修の必要がないと判断されることもありますので注意が必要です。
住宅改修制度の利用対象者
介護保険を利用して住宅改修をする場合、対象者は要支援は1~2、要介護は1~5のいずれかの認定を受けている方のうち自宅で生活している方となります。
介護施設に入居していて自宅に住んでいない場合は、利用対象とは認められません。
ただし、施設から退居する日が決まっていて、退居後に改修の対象となる住宅に住むことを予定している場合は、介護保険の利用が例外として認められることもあります。
介護保険適用の住宅改修でできること
介護保険制度で認められた住宅改修は、下記の6種目が対象になります。種目ごとに条件は異なります。
- 手すり設置
- 段差解消
- 床材変更・滑り止め設置
- 扉変更・取り換え
- 便器取り換え
- 上記工事のために必要となる工事
手すり設置
転倒防止や移動する際の移乗動作を補助する目的で設置する工事は、介護保険の給付対象となります。手すりは、階段・玄関・トイレ・風呂などに設置されることが多く、利用する方の身体的特徴に合わせて高さ・形状・向きなどを変更するのがよいでしょう。
ただし、福祉用具貸与に当たる手すりや紙巻器付き棚手すりなどは支給の対象外となります。
段差解消
高齢者の方がつまずきやすい段差を解消するためには、スロープ設置や床のかさ上げが有効です。これらの改修は介護保険の対象となります。
例えば、玄関や廊下から居間への接続部分、トイレや浴室の段差の解消などです。また、床の底上げや敷居を下げる改修のほかに、スロープの設置も段差解消の工事として認められます。
床材変更・滑り止め設置
高齢者の転倒を防止するために、滑りやすい場所には床や通路の材料を変更するリフォームが必要です。滑り止めをつけたり、滑りにくい材料に変更するなどの工事は、介護保険の対象となります。
床材やクッションフロアなどは種類が多く、デザインも選べますが、あくまで転倒防止のための改修が対象となります。
扉変更・取り換え
部屋の間をスムーズに移動するには、扉の取り替えが有効です。介護者自身でドアの開け閉めができるように、開き戸を引き戸に変更したり、仕切りをアコーディオンカーテンなどに変更したりする工事が対象になります。
また、介護保険には、扉そのものの変更だけではなく、開閉しやすいドアノブへの変更や、扉をラクに動かすための戸車の設置も対象となります。
便器取り換え
高齢者や車いすの方にとって、立ち座りがしづらい和式のトイレを、洋式のトイレに交換する工事も介護保険の適用対象です。
すでに洋式トイレを使っている場合でも、洋式便器の高さを上げるなど、より一層、立ち座りがしやすいものに変更する場合は、介護保険の対象となります。
上記工事のために必要となる工事
上記の改修工事には該当しなくても、改修に伴って発生する事前工事や予備工事などの費用については介護保険給費の対象になります。
例えば、バリアフリーにするための壁や床など下地の補強や、手すりの設置や床材変更のための下地工事などです。
※仮設工事、養生費用、
介護保険適用の住宅改修の流れ
介護保険を使って住宅改修を行うためには、お住まいのある自治体への申請や各種手続きが工事前に必要です。
申請手続から支給金受け取りまでの流れ
介護保険の住宅改修費の補助金支給を受ける流れは、以下の通りです。
申請手続きは、着工前後で2回必要となりますので注意しましょう。
- 要介護・要支援の認定を受ける
- 担当となるケアマネジャーに改修の相談を行う
担当のケアマネージャーがいない場合は、地域包括支援センターの担当者に相談してください。 - ケアマネジャーなどの同席のもと、施工業者と打ち合わせをする
- 業者が作成する見積や工事内容等を確認し工事契約する
- 事前申請に必要な書類を自治体に提出し審査結果を確認する
- 着工する
- 利用者が一時的に全額を業者に支払う(償還払いの場合)
- リフォーム完成後に再び自治体に申請する
- 住宅改修費の支給を受ける
申請に必要な書類
住宅改修の支給申請に必要な書類も2種類あります。
施工前に、改修場所・改修内容・費用などや、ケアマネジャーなどが作成した住宅改修のための理由を記載した書類を提出します。
施工後には、領収書の原本や改修後の状態について申請を出す必要があります。
以下が、住宅改修費の補助金支給を受けるために必要な書類です。
- 介護保険被保険者証
- 住宅改修内容を記載した書類
- 改修場所や費用見積を記入した申請書
- 改修前の状態の分かる写真など
- ケアマネジャーなどの作成した住宅改修理由書
- 施工業者の作成した工事図面や工事費見積書
- 領収書や工事費内訳書
- 改修後の状態の分かる写真など
自治体独自の改修費助成金制度について
介護保険以外でも、自治体が介護リフォームの助成金の補助事業を独自で実施している場合があります。自治体によって、条件や上限額、対象などが異なるので、お住まいの自治体に確認しましょう。
自治体が独自で実施する助成金制度を利用すると、例えば20万円以上もらえたり、介護保険では対象外の工事でも助成金が下りる場合があったりと、より広く補助を受けることができます。
ただし、自治体が実施する助成金の制度は、受給条件が厳しく、負担の割合も少ない場合がほとんどのようです。また、介護保険と自治体の助成制度の併用が難しいこともあるので注意しましょう。
まとめ
- 介護保険適用の住宅改修制度とは、介護のための住宅改修にかかる費用が支給される制度
- 住宅改修費の支給限度額は20万円
- 利用できる回数は、例外はあるが原則として1人1回のみ
- 対象者は、要支援・要介護と認定され、自宅に住んでいる方
- 介護保険適用の住宅改修には、着工前後で2回申請が必要
- 工事費用は一時的に全額支払いが必要な場合がある(償還払いの場合)
介護保険での住宅改修は、在宅介護をする方にとって利用価値の高いものです。基本的に1人1回のみの利用となっているので、失敗のないよう、事前にケアマネージャーや介護リフォームの専門知識のある人によく相談して、改修工事を進めていきましょう。
▼関連記事
介護リフォームとは?費用相場や支給額、検討するタイミングやリフォーム事例とあわせて徹底解説
この記事は専門家に監修されています
スタイルオブ東京 代表取締役 藤木賀子(ふじき・よしこ)
25歳で建築業界に入り、いい家を追求して世界の家まで研究しましたが、結果、いい家とはお客様の価値観によって異なることに気が付き、自分が作るより、お客様の代理人としてお客様の想いを可視化・具現化・実現化することができる不動産プロデュースの道に入りました。住宅は不動産・建築・ファイナンスのバランスがとても大事です。私は住まいの最適解をともに探したいと思っています。 公式サイトはこちら https://styleoftokyo.jp/ |