みんなどうしてる?仕事と介護の両立「リアル経験」大公開セミナー(前半)

はじめに

2025年12月23日、リクシスは、第32回『全国ビジネスケアラー会議』を開催いたしました。
これから高齢社会がより一層加速し、仕事と介護の両立が当たり前の時代がやってきます。本オンラインセミナーは、高齢化の流れが加速する日本社会において、現役世代として働きつつ、同時にご家族の介護にも携わっている「ビジネスケアラー」の方々とその予備軍となる皆様に向けたセミナーです。

今回のテーマは、「みんなどうしてる?仕事と介護の両立リアル経験大公開」。

4人に1人が後期高齢者になると言われる時代、仕事と介護の両立は誰にとっても向き合う可能性のあるテーマです。
「介護って大変そうだな」という漠然とした不安は、まだ介護と直面していない時期にこそ大きくなりがちです。しかし、介護が始まる前に準備をしておくことで、不安を小さくできるだけではなく、実際に介護が始まった時に自分自身や家族の生活が楽になるヒントも見えてきます。

今回は、チェンジウェーブグループで2,000世帯以上のご家族を対象に「仕事と介護の両立支援」に携わってきたチーフケアオフィサー・木場が、セミナー申込時に集まった全国の経験談をもとに、仕事と介護に向き合う中で見えてきた「不安や悩みの変化」を、状況の進行にあわせてフェーズごとに整理しました。

この記事では、

  • 多くの参加者が不安に感じていること
  • コメントから整理した4つのフェーズ
  • フェーズ1:予兆期(まだ大丈夫…でも心配)
  • フェーズ2:混乱期(突発・拒否・正論が通じない)

 
などのテーマでまとめています。

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①(前半)みんなどうしてる?仕事と介護の両立「リアル経験」大公開(前半)⇐このページ

②(後半)みんなどうしてる?仕事と介護の両立「リアル経験」大公開(後半)につづく

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登壇者プロフィール

木場猛(こば・たける)
株式会社チェンジウェーブグループ リクシス(※2024年1月1日の経営統合により、社名が変更となりました)CCO(チーフケアオフィサー)
介護福祉士、介護支援専門員

ヘルパー歴22年以上 介護福祉士・ケアマネージャーとして延べ2,000組以上のご家族を担当。
東京大学文学部卒業。
高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ作成や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。
3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。
セミナー受講者数、延べ約2万人超。
【新書】「仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書」(日経クロスウーマン)

 

親のこと、みんなどうしてる?

お申し込み段階で、「介護について気づいたこと」や「ヒント」、「ご自身の思い」「経験談」などを、特に条件を設けずにフリーワードで書いていただく欄を用意しました。

今回は、現場の声をそのままお伝えしたいと思い、「教科書通りにはいかないな」と感じるコメントも含めて、私自身はほとんど編集を入れていません。かなりリアルな内容になっていると思います。

 

参加者の声から見えてきた主な不安

申込時アンケート(複数選択)では、「仕事と介護の両立が不安」は多くの人が選ぶため今回は除外し、そのうえで上位を整理すると特に目立ったのは以下でした。

1位:認知症

一番多かったのは、認知症に関する不安でした。153人中69人が選んでいます。

複数選択が可能なので単純比較はできませんが、それでもやはり多いなという印象です。
経験者の方も含めて「認知症について不安がある」「関心がある」という声が非常に多く見られました。

「物盗られ妄想で泥棒扱いされてしまう」「頭では病気だと分かっていてもやはり悲しい、つらい」といったご家族の気持ちを書いてくださった方もいました。

2位:お金(資産管理・費用負担)

次に多かったのが、お金に関する不安です。

金銭管理や資産管理、そもそも「足りるのか、足りないのか」という問題ですね。

「施設に入れたら終わりだと思っていたら、そうではなかった」「実家の維持費や処分費もかかる」「最後に助けてくれるのはお金だと痛感しました」という率直なコメントもありました。

3位:見守り・緊急対応(遠距離)

3位に挙がったのが、見守りや緊急時対応についての不安です。

コメントとしてもかなり多く、「遠くに住んでいるので、普段の様子が分からないのが一番不安です」という声が代表的でした。

これまでセミナーやアンケートを何度も実施してきましたが、認知症・お金・遠距離(見守り)この3つは、ほぼ毎回上位に挙がってきます。

遠距離介護という言い方をすることもありますが、一緒に住んでいないがゆえの不安、という意味では、今回の「見守り・緊急対応」とほぼ重なっている内容だと思います。

第4位・第5位に見えた不安

4位は、「漠然とした不安」です。まだ介護が始まっていない方ほど、ここを選んでいる印象があります。

5位は、生活・家事のサポートについてでした。介護保険ではカバーしきれない部分、特に家事支援の不足に関する声です。

介護中の方からは、「具体的にここが足りない」「この部分が困っている」という、かなりリアルなコメントもありました。

例えば、

  • 親が片付けられなくなり、物をなくすことが増えた
  • 火災や事故が心配になってきた

こうした声からは、介護認定を受けるほどではないけれど日常生活ではすでに困りごとが出てきている、いわば「介護の手前」の状態で悩んでいる方が多いことが分かります。

その他に挙がった不安

6位以降も、コメントを紐づけていくと、さまざまなテーマが出てきました。

  • 高齢者の契約、相続、遺言といった法的な話
  • 古い実家の処分や相続手続きの問題

このあたりは私の専門ではありませんが、ビジネスケア会議ではテーマ別に扱ってきた回もありますので、気になる方はぜひアーカイブをご覧いただければと思います。

また、親御さんのメンタルケア、そして介護する側であるご自身のメンタルの問題も挙げられていました。

耳が良いために親族の何気ない発言が本人に聞こえてしまい、それが生きる気力に影響してしまう、というケースもあります。

住まいや施設について、「いつ、どう考えたらいいのか分からない」「施設探しの進め方が分からない」という声は7位に入っていました。

9位まで書き出していますが、いずれも一定数の声があり、「これが正解」というよりも、それぞれが現実的な悩みだと感じます。

 

コメントから見えてきた4つのフェーズ

介護の状況や立場はさまざまですが、気持ちの動きや出来事の流れを追っていくと、大きく4つのフェーズに分かれていました。

1.予兆(まだ大丈夫…でも心配)
2.混乱期(突発・激動)
3.転換期(仕組みで支える)
4.安定期(長期化・重度化・看取り)

必ずこの順番で進むわけではありません。落ち着いたと思ったら、また混乱期に戻ることもあります。それでも、多くのコメントを並べると、こうした流れが見えてきました。

 

フェーズ1:予兆期(まだ大丈夫…でも心配)

予兆期は、親御さんはまだ元気そうに見えるけれど、帰省したときのちょっとした変化に気づき始める時期です。

  • 以前より痩せた気がする
  • 外出が減っている
  • 家でYouTubeばかり見ている
  • 片付けができなくなっている

ただ、「介護」という言葉を出すと、「プライドを傷つけてしまいそう」「関係が気まずくなりそう」と感じて、なかなか踏み込めない時期でもあります。

このフェーズで多かったのは、「波風を立てずに、水面下で準備を進める」という工夫でした。

 

事例① 遠距離の不安を「デジタル」と「会話」で解消

この方は、遠距離に住む両親がいる「予備軍」段階で、見守りや家族LINE、情報共有などがポイントになっていました。

「まだ本格的な介護は始まっていないが、遠方にいる分将来が気になる」そんな状況の中で、帰省時に“以前より痩せた”ことに気づいたそうです。高齢期は、半年で2kg以上の体重減少が一つの目安になるので、「痩せたかも」と思ったら体重を聞いてみるのはおすすめです。

また、父はフルマラソンからウォーキングへ移行。自然な変化とも言えますが、プロテインや低カロリー食品へのこだわりが強く、「もっと食べた方がいい」と言いにくい難しさもありました。母はYouTube中心で閉じこもりがち。まだ介護ではないものの、心配の種がいくつもある、というリアルな声でした。

一方で、すでに小さな準備を始めています。スマホの緊急連絡先を登録してもらい、家族LINEで「誰を登録したのか」を確認すると、「妹にお願いした」と返答があり、いざという時に誰が動くのかが自然と見える形になりました。

ただし、お金の話は切り出しにくく、親族も多いため将来像が複雑で、具体的に考えづらいという悩みも残っています。

こうした「親自身の気づき」や「家族の会話」が生まれる行動が、結果的に準備を進めるきっかけになります。まずはデジタルを使った小さな一歩から、という事例でした。

 

事例② 揉めないために必要なのは、事前の「意思決定者」選び

この方は、親族が多く、いざ介護が必要になった時に、「意思決定する人が不明確だと、話がまとまらない」と感じていました。

たとえば、父母の介護が始まると、子ども、孫、それぞれが「こうした方がいい」と意見を出します。しかし、まとめ役がいないと、それ自体が揉める原因になってしまう。本来は本人の意思が最優先のはずですが、現実には家族が決める場面が多い、という指摘です。

また、「介護は家族がやるもの」という思い込みも強く、第三者に任せることに申し訳なさを感じてしまう人が多いとも感じているそうです。メディアで“大変そうな介護”ばかりが目に入ることで、不安が増幅してしまう側面もある、という声でした。

理想は意思決定者を明確にすることですが、実際には簡単に決まらないことも多い。それでも、「この人かな」という当たりをつけておくだけでも違う、というのが、この事例からのメッセージでした。

 

事例③ 遠距離だからこそ「マネージャー視点」で備える

この方は東京で働いており、70代後半の義理の両親が地方で暮らしています。義父は過去にがんを経験し、現在は落ち着いているものの糖尿病の心配あり、義母は足が悪く、老朽化した家での転倒や骨折が不安な状況です。

経験者の話を聞く中で介護に疲弊しながらも、職場や専門家、親族と連携しながら何とか乗り越えてきた事例に触れて強く印象に残ったそうです。

「誰もが直面する可能性のある介護だからこそ、できるだけ多くの事例を知っておきたい。
自分の生活を守りながら変化に対応できるよう、事前にシミュレーションしておきたい」

そんな思いから、自分がすべてを抱える“プレイヤー”ではなく体制を考える“マネージャー”でいたいという考えに至った、という事例でした。

 

予兆期の重要アクション

まだ介護が始まっていない方なので、「こういう事例でした」というよりは、今の時点でのお気持ちを言葉にしてくださったという内容になります。

この段階でできることとして、資料では「デジタル武装」と「チーム醸成」という表現を使っています。まだ介護サービスに頼れる段階ではないからこそ、事前にシミュレーションをしておくことや、使えるツールを知っておくことが大事だという話です。

たとえば、LINEグループを作って家族間の連携を取ること。「誰に連絡するのかを可視化しておく」「あらかじめグループを作っておく」といったことは、いざという時の助けになります。

スマホの緊急連絡先登録もその一つで、こうした取り組みは「介護」と言わなくても、親御さんと関わり始める最初のきっかけになります。

また、「知識は武器になる」という声もありました。介護保険の仕組みや、地域包括支援センターなど、最初に頼れるところを知っておくだけでも気持ちはだいぶ違ってきます。

実家の近くにどんな施設や介護サービスがあるのか、具体的に使う予定がなくても、「こういう選択肢がある」と知っておくこと自体が大切です。

アクションとしては、記事やセミナー内容を家族にシェアしたり、「他の家ではこうしているらしいよ」と一言添えて伝えるきっかけに使うという声もありました。

さらに、「キーパーソンを決めておく」「誰が意思決定をするのか」「本人の意思表示をどう確認していくのか」を、できる人は考えておくとよいという内容です。

特に、資産があるご家庭などは、早めに一度考えてみてほしい、というまとめになっています。

 

フェーズ2:混乱期(突然の出来事・拒否・混乱)

ここからが、いちばん大変そうなフェーズです。
実際にはもう少し前から始まっていたのかもしれないけれど、明確に「これは介護だ」と意識せざるを得ない出来事が起こるタイミングです。

転倒や病気の発覚、急な認知症状の出現など、避けられない出来事がきっかけになることが多くあります。

この時期の特徴は、「正論が通じない」「よかれと思って提案してもまだ大丈夫と拒否される」「家族間の意見もまとまらない」といった、とにかく心が揺れ動くという点です。

コメントをまとめていくと、このフェーズでいちばん大事なのは、「解決策を急ぐことではなく、まず自分を守ること」というところに行き着きました。

 

事例④「まだ大丈夫」と言い張る父との攻防 拒否を乗り越えた鍵は「自尊心への配慮」

73歳で一人暮らしのお父さま。体力の衰えを自覚しながらも「まだ大丈夫」と言い続けていたそうです。

何度も話し合いを重ねて地域包括支援センターに相談し、介護申請に進むまでにかなり時間がかかったという声がありました。

その中で学んだのは「正面から説得しないこと」「本人の自尊心に配慮した伝え方」が重要、という点だそうです。

実際に見守りが入るようになると、本人も安心感を持つようになったという話でした。

「困ってからでは遅い」という言葉がありますが、まさに動き出すまでが一番エネルギーを使うところだな、という印象です。

 

事例⑤ 繊細すぎる母への対応に苦慮、認知症初期

認知症が始まり、一人暮らしのお母様。もともとは社交的で明るい性格だったのに、他人の一言が気になって何日も悩み続けてしまう。

こうした変化に「どう対応すればいいのか分からない」という声もありました。

認知症や高齢期では、「できないことが増える」「失う体験が重なる」いわば全員が「何かを失って傷ついている」状態になります。

拒否として出る人もいれば、落ち込みとして出る人もいる。出方が違うだけで、根っこは同じだと感じます。

このケースでは、家族だけで受け止め続けるとどうしても限界が来るという点が浮き彫りになりました。

 

事例⑥ 娘に頼りきりの親、公的サービスを拒否

デイサービスや訪問看護などの公的サービスを嫌がり「家族にやってほしい」と強く依存してくる親御さんのケースもありました。

このタイプは「迷惑をかけたくない」ではなく、「家族じゃないと嫌」という感情が強いことがあります。

一度すべて抱え込んでしまうと、あとから手放すのがとても難しくなります。

コメントからは、地域包括支援センターやケアマネージャー、訪問看護など、すでに関わっている第三者をきっかけに、少しずつ人を増やしていくことの大切さが伝わってきました。

 

事例⑦ 認知症の「物盗られ妄想」との戦い

認知症初期の「物盗られ妄想」。頭では病気だと分かっていても、家族が泥棒扱いされるのはやはりつらい。腹が立つ、悲しい、距離を置きたくなる自分がいる。そうした正直な感情がたくさん書かれていました。

「きれいごとでは済まない」まさに、その一言に尽きる内容です。

長期化する介護の中で、自分自身の体調や将来への不安、「いつまで働かなければならないのか」という声も重なっていました。

 

事例⑧ 目が離せない「異食」と自身の適応障害

8つ目は、異食(食べ物でないものを口にしてしまう)がある認知症の事例です。

排水用洗剤や乾燥剤を口にしてしまうため、本当に目が離せない。

在宅で介護しながら仕事をしていましたが、集中できずに本人が適応障害で休職することになった、というケースでした。

在宅勤務でも、介護と仕事を同時にこなすのは現実的に難しい。近くにいることで、逆に逃げ場がなくなることもあります。

ここまで大変な場合は、介護休暇や介護休業を使うのも立派な選択肢だと思います。

 

事例⑨ 平日休めない会社員のジレンマ 有給も限界

施設に入所して日常生活の負担は減ったものの、通院の付き添いやケアマネージャーとの打ち合わせは家族対応。

平日対応が多く有給も限界で働き方そのものを見直すか悩んでいる、という声もありました。

このケースでは、介護タクシーや付き添いサービスなど、外部サービスを一度試してみるという方向性が示されました。

毎回家族が休むより、「お金はかかるけれど外に出す」という選択が、結果的に仕事と生活を守ることにつながる場合もあります。

 

混乱期の重要アクション

混乱期において最も大切なのは、「親をどうするか」よりも、自分が潰れないことを最優先にするという視点です。無理を続けると、心身の負担は確実に積み上がっていきます。

この時期は、正論でぶつかっても状況が好転しにくく、自尊心への配慮が欠かせません。説得しようとするよりも、言い方を工夫したり第三者から伝えてもらったりする方が、結果的にうまく進むケースが多くあります。

特に「死にたい」といった言葉を、家族だけで受け止め続けるのは非常につらいものです。こうした場面こそ、専門職や第三者に関わってもらい、家族だけで抱え込まない体制をつくることが重要です。

実践的なアクションとしては、相談窓口や友人、専門家など、家族以外の人と話し、客観的な視点を得ること。必ずしもプロでなくても、自分の生き方を知っている人との会話が、混乱期の心の支えになることがあります。

 
⇒ みんなどうしてる?仕事と介護の両立「リアル経験」大公開(後半)につづく

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