「介護生活に役立つものがもっと手軽に手に入らないかな?」
――そんな思いを抱いたことのある方は多いのではないでしょうか。
自治体によっては、火災警報器や電磁調理器といった“日常生活用具”を支給したり、高齢の方へタクシーチケットを給付する制度がありますが、そうした給付がない地域でも、より身近で頼れる「貸し出し制度」が存在します。それが「社会福祉協議会によるレンタル事業」です。
全国の自治体にあり、地域に根差した福祉サービスを提供している「社会福祉協議会」(通称「社協(しゃきょう)」)では、車いすや歩行器、介護ベッド、さらには福祉車両などを、介護に必要な用具を必要とする方に貸し出すサービスを行っている場合が多くあります。
「購入するほどではないけれど、少しの間だけ使いたい」「一時的に必要になった」といった方にとって、とても心強い制度です。
今回は、このサービスの概要と利用時の注意点についてご紹介します。
各自治体にある「社会福祉協議会」では、福祉用具の貸し出し制度を設けている場合があります。
貸出期間は短期利用が前提で、1ヵ月から半年程度と自治体によって異なります。もちろん、2〜3日などのごく短期間の利用でも可能です。
貸し出される品目は自治体によって異なります。主な貸し出し用具は以下の通りです。
車いすは多くの自治体で貸し出しが行われていますが、地域によっては、
などを貸し出しているところもあります。
また、使用済みの福祉用具を清掃・整備して再活用するリサイクル事業として実施されている地域もあります。
この制度の魅力は、
という点です。
多くの社会福祉協議会では、福祉用具の貸し出しを基本的に無料、またはごくわずかな費用で提供しています。特に「まだ介護保険は使えないけれど、ちょっと手助けがほしい」という方には、とてもありがたい仕組みです。
この制度はあくまでも「一時的な利用」が前提です。長期使用を考えている場合には、福祉用具専門相談員や理学療法士などの専門家による適切な選定が重要です。体に合わない用具を長期間使い続けると、逆に身体を痛めてしまうこともあります。
また、すでに介護保険を利用している場合には、介護保険による用具貸与が優先されるケースもあります。
社会福祉協議会では、車椅子やストレッチャーのまま乗車できる福祉車両(リフト付きワゴン車)も、無料で貸し出しを行っていることがあります。ご家族でのドライブや外食の機会にぜひ活用してみてください。
利用にあたってのポイント:
これらの福祉用具や福祉車両は、たとえば以下のようなシーンで役立ちます。
これらのサービスは地域によって内容や条件が異なります。具体的な利用については以下のステップで進めるのがおすすめです。
社会福祉協議会は、行政や自治会、民生委員、ボランティアなどと連携しながら、地域福祉の向上に取り組んでいる公共性の高い民間団体です。
介護保険などの制度の狭間にいる方々にも支援が届くよう、全国の自治体に設置され、誰もが安心して暮らせる地域づくりを目指しています。
福祉用具の貸し出しをはじめとした、生活に寄り添ったさまざまな支援を提供しているため、「困ったときに頼れる場所」として、知っておいて損はありません。
困ったときにはぜひ一度、お住まいの地域の社会福祉協議会に問い合わせてみてください。
岩瀬 良子(いわせ・りょうこ)
介護支援専門員(ケアマネジャー)・介護福祉士
京都大学卒業後、介護福祉士として、介護老人保健施設・小規模多機能型居宅介護・訪問介護(ヘルパー)の現場に従事。その後、育休中に取得した介護支援専門員の資格を活かし、居宅ケアマネジャーのキャリアを積む。「地域ぐるみの介護」と「納得のいく看取り」を志している。
介護プロ編集部