介護保険制度には介護が必要な方々を支援するための給付金があります。
要介護4で受けられる給付金とその費用、自己負担額はどれくらいになるのでしょうか?また、減額や控除にはどんなものがあるのでしょうか?
要介護4でかかる費用の目安を解説していきます。
要介護4は、日常生活を一人で送ることが困難な状態で、支援者(介護家族・ビジネスケアラー)にとっての負担も非常に大きくなります。
要介護4の方は、日常生活の全てにおいて常に介護を必要とします。要介護4の状態として以下のようなものが挙げられます。
要介護4は介護に要する時間も長くなるため、通所型介護サービスの利用や施設入居を利用する方が多くなります。
要介護4について、詳しくはこちらをご覧ください。
要介護度は、1日のうちでどの程度の介護が必要かという介護の必要度合いを判定するために厚生労働省が定めた「要介護認定等基準時間」を基準に認定されます。
要介護4の要介護認定等基準時間は「90分以上110分未満」です。
また、認知症の進行程度を判断するために「日常生活自立度」という指標もあります。認知症の周辺症状がみられ、進行が進んでいる場合は要介護4と判定される可能性が高くなります。
要介護認定を受けると、介護サービスに必要なお金の援助が得られます。
月々利用できる介護サービス費用には上限額(区分支給限度基準額)が設定されていて、要介護度が上がる毎に増額されていきます。
要介護4の区分支給限度額は、1ヶ月あたり309,380円です。
利用する際は所得に応じて1割〜3割を自己負担します。
サービスの利用料金が上限額を超えた場合、その超過分は全額自己負担となります。
要介護4の区分支給限度額 | |||
309,380円 | |||
自己負担の割合 | 1割 | 2割 | 3割 |
自己負担額 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 |
「高額介護サービス費制度」とは、介護において自己負担の割合が多い方に適応される制度です。
1ヶ月に支払った利用者負担の合計が負担限度額を上回った場合、超過分が払い戻されます。この高額介護サービス費の払い戻しを受けるためには、自治体への申請が必要です。
高額介護サービス費制度の自己負担上限額
区分 | 月額の自己負担上限額 |
課税所得690万円以上 (年収およそ1,160万円以上)の世帯 |
140,100円 |
課税所得380万円~690万円未満 (年収およそ770万円~1,160万円未満)の世帯 |
93,000円 |
市町村民税課税~課税所得380万円未満 (年収およそ770万円未満)の世帯 |
44,400円 |
世帯全員が市町村民税非課税の世帯 | 24,600円 |
世帯全員が市町村民税非課税の世帯のうち 前年の課税年金収入額+その他所得の合計が80万円以下の個人 |
15,000円 |
生活保護受給者の個人 | 15,000円 |
要介護4になると、おむつの利用も増え、介護者の経済的負担も大きくなるため、各自治体によって「紙おむつ給付」や「おむつ代助成制度」が設けられています。
自治体により助成内容は異なっており、現物支給の場合もあれば、購入したおむつ代に対して助成金がもらえる場合もあります。事前に各自治体へ確認するようにしましょう。
「障がい者控除」は、障がいのある人やそのご家族が所得税や住民税の税額控除を受けられる制度です。
障害者控除の対象となるには、要介護認定だけでなく、市町村長などの「障害者控除対象者認定書」を受ける必要があります。
利用を希望する場合は、各自治体に確認し申請を行いましょう。対象者とそれぞれの控除額は以下のようになっています。
対象者 | 控除額 |
障害者(障害者手帳を持っている方) ※等級により例外もある |
270,000円 |
特別障害者(身体障害者手帳の等級が1~2級の方、寝たきりで常時介護が必要な方) | 400,000円 |
同居特別障害者(特別障害者と同一生計の配偶者または扶養親族と同居している人) | 750,000円 |
「住宅改修補助制度」とは、バリアフリーや手すりの設置など、自宅で介護をするために必要なリフォームに補助が受けられる制度です。
支給額は、被保険者1人あたりの上限を20万円とし、所得に応じて1~3割が自己負担になります。その上限額を超えた場合は全額自己負担となります。
また、この上限額は分割での利用も可能なので有効に活用しましょう。
受給の条件は以下となります。
・住宅リフォームを行う利用者が、要介護認定で要支援、要介護の認定されている。
・リフォームを行う住宅が、利用者の介護保険被保険者証の住所と同じ、かつ実際に利用者が住んでいる。
・利用者が入院、福祉施設入居などで自宅を離れていない。
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要介護4と認定を受けた方は、全ての介護保険適用のサービスを利用することが可能です。自宅で受けられるサービスや、施設へ通ったり宿泊して利用できるサービスの他、福祉器具レンタルや購入、リフォーム補助なども受けられます。
要介護4で受けられるサービスについて、詳しくはこちらをご覧ください。
介護老人福祉施設や有料老人ホームといった施設入居をする場合には、基本的に「施設利用費」と「介護サービス利用費」の2つの費用がかかります。
施設によってサービス加算費用やオプション費などが必要であったり、料金形態や金額は様々なので、利用前に確認が必要です。
特別養護老人ホームの場合は、部屋タイプ別に異なる「住居費」、「食費」や「日常生活費」、介護度別に異なる「施設介護サービス費」などが必要です。
24時間体制の介護付き有料老人ホームを利用した場合の目安
費用の種類 | 負担費用の目安(月額) |
施設利用費(家賃・管理費・食費など) | 220,000円 |
介護サービス利用費(1割負担の場合) | 22,140円 |
総額 | 242,140円 |
※介護保険1割負担の場合
参照元:「そよ風」の例 https://www.sykz.co.jp/media/what-is-nursing-care-4/
特別養護老人ホーム(特養)で従来型個室を利用した場合の目安
費用の種類 | 負担費用の目安(月額) |
施設利用費(住居賃・食費など) | 784,800円 |
介護サービス利用費(1割負担の場合) | 23,400円 |
総額 | 103,890円 |
出典:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
要介護4は、常時介護を必要とする状態で、認知症が進んでいる場合もあるため、自宅での介護ではご家族の負担はかなり大きなものとなります。そのため施設入居をする方も増えますが、費用面での負担は施設介護の方が在宅介護よりも大きくなります。
金山峰之(かなやま・たかゆき) 介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。
厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。
元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。