デイサービス(通所介護)を運営するには、介護保険法や省令などによって、適切な人員の配置と必要な資格が定められています。
今回の記事では、デイサービスの人員基準とされている「管理者」「生活相談員」「看護職員」「介護職員」「機能訓練指導員」それぞれの役割・必要人数などについて解説していきます。
デイサービス(通所介護)は、自宅で生活している介護が必要な方が、日帰りで施設に通いながら介護ケアや生活支援を受けられる介護保険サービスで、食事や入浴の介助、機能訓練、レクリエーションなどが提供されています。
そのため、運営するにあたり、利用者への適切なプログラムや質の良いサービスを提供するためのスタッフが必要となり、厚生労働省により決められた「通所介護の指定基準」を満たさなくてはなりません。
デイサービスの人員基準とは、適切な介護サービスを提供するため必要な、施設における最低限配置すべき職種、資格、人数などの要件です。
例えば、利用者15名までは介護職員1名を配置、利用者が20名の場合は2名が必要といったように、人員基準は施設の規模・利用者数に合わせ、厳格に定められています。
デイサービスの開業・運営には、このような人員基準のほかにも、運営基準、設備基準を満たしておく義務があります。
デイサービスの人員基準
職種 | 人員基準 | 資格要件 |
管理者 | 1人(常勤) | 特になし |
生活相談員 | 1人以上 | 社会福祉士 精神保健福祉士 社会福祉主事 介護福祉士 など ※資格要件は自治体により異なる場合があります |
看護職員 | 1人以上 | 看護師 准看護師 |
介護職員 | 1)単位ごとにサービス提供時間に応じて配置 利用者数が15人の場合:1人以上 利用者数が16人以上の場合: 計算式「(利用者数-15)÷5+1」人以上2)事業所の単位ごとに常時1名 |
特になし |
機能訓練指導員 | 1人以上 | 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 看護師 准看護師 柔道整復師 あん摩マッサージ指圧師 など |
※生活相談員または介護職員のうち1名以上は常勤 参考:厚生労働省「通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護」
管理者は、通所介護の施設全体を統括する責任者です。役割は、事業所全体の運営計画やスタッフの配置、予算管理から、介護サービスの質の向上や利用者の安全確保など、多岐にわたります。そのため、通常は常勤の専任者を1人配置することが求められます。
ただし、人員基準を満たしている場合は、同じ敷地内の事業所で他の職務を兼務することも認められています。
管理者になるために特別な資格はありませんが、管理職として適切な業務を行うには、介護や福祉に関する知識や経験が必要とされます。自治体によっては独自の資格要件を設けていることもあります。
生活相談員は、利用者やそのご家族が介護に関する悩みを相談できる存在であり、必要に応じて専門的なアドバイスや情報を提供したり、介護計画の立案や調整をしたりして、適切なサポートが受けられるよう支援します。
また、自治体やケアマネジャーを通じて他職種と連携したりする役割も担当します。
厚生労働省の人員基準では、「生活相談員又は介護職員のうち1人以上は常勤」と規定されていますので、必ずしも全員が常勤である必要はありません。
生活相談員になるための資格要件は、社会福祉士や介護福祉士、精神保健福祉士、社会福祉主事などの資格を持つことが一般的です。一部の地域では他の資格要件が異なる場合もあります。
看護職員は、利用者の健康管理や医療的なケアを担当する重要な役割を果たします。利用者の健康状態を把握し、日々の健康管理やバイタルチェック、体調管理を行います。医師の指示のもとで、薬の管理、傷の処置などの専門的な医療処置を提供します。
必要に応じて、医療機関と連携し、適切な医療情報の提供や救急時の対応を行います。
人員基準は、利用定員が10名を超える事業所では1名以上の配置と規定されていますが、必ずしも常勤である必要はありません。利用定員が10名以下の事業所では「看護職員又は介護職員のいずれか1名の配置で可」とされています。
看護職員としての資格要件は、一般的に「看護師、准看護師」の資格を持つことが求められます。
介護職員は、利用者の日常生活動作や健康状態を把握し適切な介助を行い、安心できる環境を提供する重要な役割を担います。利用者の入浴・食事・排泄・着替えなどをサポートし、生活の質の向上を図ります。移動のサポート、服薬管理、口腔ケア、体位変換などの身体介護を提供します。
また、機能訓練の補助など、利用者の自立支援にも努めます。
人員基準は、利用者数が15名までの事業所では、1名以上の配置が定められています。1人の介護職員が複数の利用者を同時に担当する状況を防ぐため、利用者数が16名以上の場合は「(利用者数 – 15) ÷ 5 + 1」という計算式によって必要な人数が算出されます。
介護職員としての資格要件は特にありません。利用者のケアプランに基づき、生活相談員や看護職員と連携して、継続的な個別のケアを行います。
機能訓練指導員は、利用者の身体機能の改善もしくは現状維持、そして減退防止を目的とした機能訓練を実施します。機能訓練プランに基づいて、利用者の心身状態に合わせて運動やリハビリテーションを指導します。運動の実施方法や姿勢の改善、器具の使用方法なども教えます。
また、訓練の進捗や効果を定期的に観察して評価を行い、必要に応じてプランを調整し、利用者のニーズに合ったサービスを提供します。
人員基準は、利用定員に関係なく、1名以上配置することが規定されています。
機能訓練指導員になるための資格要件は、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、准看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師のうち、いずれかの有資格者であることです。
通所介護の人員基準は、事業所の利用定員数によって異なります。
利用定員が10名以下の小規模デイサービスの場合、看護職員または介護職員のいずれか1名以上配置すればよいとされています。
管理者、生活相談員、機能訓練指導員は利用定員に関係なく、指定された資格のいずれかの所有者を1名以上配置する必要があります。
利用定員数10人以下の場合 | 利用定員数10人以上の場合 | 利用定員数20人以上の場合 | 利用定員数30人以上の場合 | |
管理者 | 1名(常勤) | 1名(常勤) | 1名(常勤) | 1名(常勤) |
生活相談員 | 1名以上 | 1名以上 | 1名以上 | 1名以上 |
看護職員 | いずれか1名以上 | 1名以上 | 1名以上 | 1名以上 |
介護職員 | 1名以上 | 2人以上 | 4名以上 | |
機能訓練指導員 | 1名以上 | 1名以上 | 1名以上 | 1名以上 |
デイサービスを運営するには、厚生労働省が定める「通所介護の指定基準」を守る必要があります。人員基準で指定された、管理者、生活相談員、介護職員、看護職員、機能訓練指導員を配置しなければなりません。
職員の配置人数は利用定員や当日の利用者数によって変わることがあるため、基準について正確に理解しておくことが必要です。この人員基準を満たせない場合は、事業所の指定取り消しや減算、期限付きサービス停止など、厳しい処分を受けることがあります。
なお、デイサービスの人員配置や資格については、自治体独自の基準を設けている場合があります。詳しく知りたい方は、お住まいの自治体へ問い合わせをしてみてください。
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金山峰之(かなやま・たかゆき) 介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。
厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。
元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。