サービス付き高齢者向け住宅(以下:サ高住)は、入居者の自由度が高い高齢者向け住まいを指します。基本的には自立した方が対象ですが、介護が必要な方も利用可能です。
安否確認や生活相談のサービスが受けられ、施設によっては生活支援やリハビリが提供されます。
ここでは、そんなサ高住について、今回詳しく解説します。
対象は60歳以上の方や要介護認定を受けた60歳未満の方とし、バリアフリーが完備された高齢者の「住まい」のことを、「サ高住」と言います。
厚生労働省で定められているサ高住の設備基準は以下の通りです。(※1)
サ高住には、介護サービス事業者の職員をはじめ、医師や看護師、介護支援専門員などが常駐。人数や各専門スタッフの分野は、施設により異なります。
入居者は自由度の高い生活を送りながら、住まいのスタッフによる生活相談や安否確認のサービスを受けられるため、安心感があります。また、外出時の付き添いや食事の提供など、住まいによってさまざまなオプションがあります。
介護が必要になっても、居住しながら外部サービスを受けられるので、退去の心配がなく安心です。
入居先を決めたら、多くの場合は賃貸借契約を結びます。
賃貸借契約は「建物賃貸借契約」と「終身建物賃貸借契約」の2通りがあります。
入居者が死亡した場合、遺族は相続の形で契約の引き継ぎが認められています。そのため、入居者が亡くなった場合、配偶者や親族は、故入居者の契約を引き継いだ入居が可能です。
認可の基準が厳しいため、建物賃貸借契約のある住宅数は少ないのがデメリットです。
契約は原則終身制です。建物賃貸借契約と異なり、契約の引き継ぎを前提としていません。そのため、入居者が死亡した時点で自動的に契約は終了します。
親族は契約を相続できませんが、夫婦で入居していた場合は、入居者の死亡後でも配偶者はそのまま入居の継続が可能です。
サ高住は、「一般型」と「介護型」の2種類に分かれます。
自立した生活ができる方や介護度の低い方を対象としています。介護が必要になったときは外部の介護サービスを利用します。
自分のペースで生活ができます。外出や施設内イベントへの参加・他の利用者と過ごせるなど、自由な行動が可能です。
しかし、要介護度が悪化した場合、退去となる可能性があります。
介護型は、特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設のみ実施されます。
要介護・要支援の認定を持つ介護ケアを必要とする方が対象のため、要介護度が高くても入居が可能。食事や入浴介助のほか介護・看護サービスなど、有料老人ホームと同等のサービスを受けられます。
月費用は、要介護度に応じて一定の介護サービス費を支払います。そのため、どれだけサービスを利用しても費用は一律です。
介護度が進んだ場合でも安心して暮らせますが、外出や面会に制限を設けている場合が多く、一般型より自由度が低いのがデメリットです。
なお、サ高住では、一般型を採用している場合が多く、介護型の割合は約9%(2018年国土交通省)と、普及率が少ないのが現状です。
入居時に必要となる費用は主に、「初期費用」と「月額費用」です。
上記の費用は、一般型と介護型によって費用が大きく異なります。
サ高住は、敷金がかかります。敷金は一般的な賃貸住宅と同じく、退去時に掃除や修繕をする際に必要な費用です。
一般型よりも、介護体制が充実している介護型の方が、費用が高くなる傾向です。
主な月額費用の内訳は、以下の通りです。
居住費は、部屋の広さや設備、地域などにより大きく変わります。特に都市部では、郊外より居住費が高くなりやすいです。
一般型の場合は、家賃と管理費で5~25万円程度。食費や光熱費は別途費用がかかります。介護サービスは外部契約のため、介護保険料は利用した分の支払いが必要です。
介護型は食費を含めると15~40万円程度。介護度に応じて支払います。特定施設の認定を受けているため、専門スタッフによる介護サービスの利用が可能です。
各住まいで金額が異なるため、資金計画をする際は、月額費用や別途費用の内訳をよく確認しましょう。
サ高住は、自由度の高さが特徴です。そのため、受けられるサービスは安否確認や生活相談などの「基本的なもの」と、リハビリやレクリエーションなどの「オプション・個別契約をするもの」があります。
それぞれのサービスについて、詳しくご紹介します。
サ高住で受けられるのは、「安否確認」と「生活相談」のサービスです。上記のサービスは、どこのサ高住を契約しても、必ず利用できます。
「見守りのサービス」とも言われます。スタッフによる定期訪問で居住者の様子を確認。訪問時間や頻度は、住まいによって異なります。スタッフが不在の夜間帯などは、通報システムなどを利用し対応します。
高齢者の中には、夜中や明け方になって急に体調を崩す方も。体調面に問題がないかを定期的に確認し、トラブルの際は速やかに対応します。
異変にすぐ対応してくれるため、居住者はもちろん、家族も安心して利用できますね。
生活の中で起こるさまざまな困りごとについて相談ができるサービスです。介護福祉士や看護師など、各方面のケアに詳しい専門資格を保有したスタッフが対応。介護の内容や心身の悩み・不安について相談することで、解決へと働きかけてくれます。
各施設ごとにさまざまなオプション・サービスが用意されています。生活面を支えるものや最期に関わるものまであり、別途費用を支払うことで利用が可能です。
買い物の代行や病院の付き添い、掃除・洗濯など、入居者の日常生活をサポートします。また、食事の提供もあるため、毎日の献立を考えたり調理をしたりする手間が省けます。
注意不足によるさまざまな事故も防げ、より安心感のある生活が可能です。
高齢者1人では難しい食事や入浴食事、排泄などの介助をします。介護度やからだの状況に合わせて、外部の訪問介護サービスを契約し利用可能です。
体の機能を維持・回復させるためのリハビリや、たん吸引などの医療行為も外部の訪問リハビリや訪問看護を契約して受けることができます。
介護型のサービス付き高齢者向け住宅の場合は、週に数回レクリエーションがある場合も。住まいによって、提供される回数やレクリエーションの内容は異なります。
介護型で、24時間看護師が常駐していたり協力医との連携が整っている場合は、対応可能な項目です。
一般型では、24時間対応の訪問看護サービスや訪問診療などを組み合わせた場合に対応可能となりますが、多くの費用が必要です。
サ高住は、「60歳以上の高齢者または60歳未満で要介護認定を受けている方」が入居対象となります。条件に当てはまる場合は、入居の検討をしてみましょう。
また、自己管理や自立した生活が可能か・認知症はないか・感染症に罹患していないかなど、独自の項目を設けている住まいもあります。同居人の条件を満たせば、夫婦以外でも入居が可能。
同居できる方の条件は、主に以下のいずれかに当てはまる場合です。
興味がある住まいを見つけたら、入居条件をしっかりと確認しましょう。
入居にあたり、連帯保証人や身元引受人を必要とする住まいがほとんどです。連帯保証人がいない場合は、「高齢者住宅財団の家賃債務補償制度」を利用する方法があります。身寄りがあっても身元引受人がいない場合は、各住まいに相談しましょう。
入居後に、長期の入院や身体状態の悪化を理由に退去を求められることは、原則としてありません。しかし、認知症の症状が進行したり日常的な医療ケアが必要になった際は、十分な対応ができない場合があります。
サ高住は、介護や生活支援など必要なサービスを選択して生活を送る「住まい」です。
対して有料老人ホームは、寝たきりになった場合に介護の補助があるなど、介護に特化した「施設」です。
主に、介護を必要とする方が介護サービスや生活支援を受けて暮らすホームを「介護付き有料老人ホーム」と言います。
一方、サ高住は、主に介護を必要としない自立可能な高齢者に向けた住居です。
「サ高住」と「住宅型有料老人ホーム」は混同されやすいです。共通点は、主に介護を必要としない方を対象にした施設であり、介護サービスを利用した分だけ費用が発生すること。
サ高住は、国土交通省により管轄されています。賃貸住宅のため、入居一時金や月額費用が高め。
対して住宅型は、厚生労働省により管轄されている介護施設。入居一時金や月額費用は、サ高住に比べて低く設定された施設が多いです。
なお、どちらも介護サービスは併設や外部の事業所からのサービス提供となります。
関連記事:有料老人ホームとは?施設の種類や入居条件についてわかりやすく解説
サ高住は、安否確認と生活相談サービスを受けながら安心して生活ができます。そのため、1人暮らしに不安のある高齢者の方におすすめです。賃貸住宅のため、有料老人ホームや介護施設に比べて自由度の高い生活が送れます。
対象となる入居者が自己で管理できる場合は一般型、身体状況に不安がある方は住宅型がおすすめです。
認知症の進行や医療的ケアが必要になった場合、住み替えを検討しなくてはいけない場合もあります。
サ高住を検討する際は、複数の施設を見学し説明を聞きましょう。入居者の状況に合った住まいを選ぶことが大切です。
サ高住は、一般型や住宅型などによって内容が異なります。また、各施設ごとにさまざまなオプション・サービスを実施しています。
入居者の自由を尊重できる契約が多いのは、嬉しいポイントです。
それぞれに合う住まいを選ぶためにも、施設状況や費用、サービスを選択する際は、スタッフとよく相談して決めましょう。
参考:高齢者住宅協会 サービス付き高齢者向け住宅 情報システム https://www.satsuki-jutaku.jp/system.html
木場 猛(こば・たける) 株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー)
介護福祉士 介護支援専門員 東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 国内ビジネスケアラーデータ取得数最多の仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ監修や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。 3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。
著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』
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