介護保険サービスを利用するために必要な要介護認定に、有効期限が設けられているのはご存知でしょうか。
初めて要介護認定を受ける場合、有効期間の決め方や更新方法についてなど、何もわからないという方も多いですよね。あらかじめ仕組みを把握しておけば、慌てることなく対応することができます。
今回は、要介護認定における有効期限の種類や更新の流れについて詳しくご紹介します。
介護保険を利用して介護サービスを受けるには、住民登録がある市区町村で要介護認定を受けることが必要です。
要介護認定が無事に受理されると、介護保険被保険者証が交付されますが、認定された要介護度の下の欄にいつからいつまでという日付が記載されています。
この日付が、今回認定した枠内で介護保険サービスを受けるための有効期限です。
高齢者の心身状態は変わりやすく、以前に判定された要介護度と利用者の心身の状況に見合わないと、適切な介護サービスを受けられません。
介護を必要とする人が常に適切なサービスを受けられるように、定期的に利用者の様子を確認するため、有効期限を設けています。
要介護認定の申請区分は大きく分けて3つあります。
要介護認定で出された有効期間の日数は一律に同じではありません。
利用者の心身の状態や申請区分によって、有効期限の長さは変わります。
区分別の有効期限について詳しくみてみましょう。
申請区分 | 有効期間 | 有効期間短縮 | 有効期間延長 |
新規 | 原則6ヵ月 | 3~5ヵ月 | 7~12ヵ月 |
区分変更 | 原則6ヵ月 | 3~5ヵ月 | 7~12ヵ月 |
更新 | 原則12ヵ月 | 3〜11ヵ月 | 13〜36ヵ月※ |
※前回の介護度の場合は最大48ヵ月まで延長
要介護認定の有効期間は、原則6ヵ月です。
ただし、市区町村の介護認定審査会が認める場合に限り、3ヵ月~最大48ヵ月(4年間)の間で設定することが可能です。
有効期限満了を待たず区分変更を行った場合、有効期間は原則6ヵ月です。
心身の状態に合わせ3ヵ月〜12ヵ月の間で市区町村の介護認定審査会が定めます。
更新申請の有効期間は原則12ヶ月です。
更新時に支援度の変更(要介護→要支援など)がある場合は3ヵ月〜36ヵ月の間で設定されます。
現状と同じ内容での更新は、3ヵ月〜最大48ヵ月まで可能です。
例えば、進行性の病気(末期ガンなど)により、心身状態に急激な変化があると見込まれる場合や、反対に介護度が軽度の人は有効期限が短縮されます。
また、状態が安定していると見込まれる人や更新前と同じ要介護度の判定だった人は、有効期限が延長される傾向にあります。
要介護認定は自動更新ではありません。
継続して同じ内容で介護保険サービスを利用したい場合は、更新が必要です。
要介護認定は介護保険被保険者証(介護保険証)に記載されている有効期限を過ぎると効力がなくなります。
要介護認定の効力は、申請日にさかのぼります。
申請日が月途中の場合は申請した月とその後6ヵ月が有効期間です。
【有効期間の設定例】
要介護認定の有効期限や更新のタイミングについては、担当のケアマネジャーと事前に連絡を取って、更新の時期を共有しておくと安心です。
有効期間が終わる約2カ月前(60日前)を目安に、住民票のある市区町村から更新の案内が届きます。
引き続き介護サービスを希望する方は、認定の有効期間満了日までに更新申請書を提出してください。
更新手続き後、認定結果が届くまでは30日程度かかります。
手続きの案内が届いたら、できるだけ早めに手続きを行ないましょう。
更新を行わず要介護認定の有効期限が切れた場合、給付を受けられません。介護サービスなどの利用料は、全額自己負担(10割負担)となります。
要介護認定の有効期限が満了すると、再度新規での申請が必要です。新規申請から認定が出るまでの約30日は、見込み期間として介護サービスを利用することになります。
認定度合いが前回より低い場合、自己負担が増額することもあるため注意しましょう。
要介護認定の更新をスムーズに行うには、手続きの流れや必要書類について把握しておくことが大切です。
1,要介護認定更新申請書を提出する
2,更新審査に必要な要介護認定調査を受ける
3,かかりつけ医が「主治医意見書」を作成する
4,介護認定審査会で要支援・要介護のどの段階に該当するかを申請から原則30日以内に判定
5,自宅に新しい介護保険被保険者証が届く
要介護認定更新申請書は、各自治体の介護保険担当窓口や地域包括支援センターで配布しています。
各自治体のホームページから申請書をダウンロードして使用することも可能です。
提出する書類は、お住まいの地域によって異なるため、事前に問い合わせておきましょう。
例えば、東京都杉並区では以下の書類が必要です。
・要介護認定更新申請書…市区町村ごとに書式は異なります。
・介護保険被保険者証
・訪問調査員用連絡票
・健康保険被保険者証…第2号被保険者(40歳以上65歳未満) ※1
・本人確認書類…申請する方のマイナンバーカード、運転免許証など(郵送の場合はコピー可能) ※2
・個人番号確認書類…マイナンバーカード、通知カードなど
※1 40〜64歳の方が介護保険を利用するためには、厚生労働省が定める特定疾病の診断を受けていること、公的医療保険に加入していることが条件に加わります。(参考) https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html
※2 自治体によっては、写真無しの公的身分証明書(介護保険被保険者証、医療保険被保険者証、介護保険負担割合証)はいずれか2点必要な場合もあります。
要介護認定の更新手続きは、各自治体の介護保険担当窓口または地域包括支援センターで行います。
来所が難しい場合、郵送での手続きも可能です。
更新の手続きでご本人の来所が難しいときは、代理申請も可能です。
ご本人の意思に基づき、介護を行う支援者(介護家族やビジネスケアラー)が代理で申請ができます。
介護施設に入所している方は、入所先の相談員やケアマネジャーにお願いしましょう。
支援者が代理手続きを行う際は、委任状、印鑑、施設職員証などが必要です。必要書類は各市区町村によって異なりますので、事前に確認しましょう。
入院中は基本的に医療保険が適用されるため、介護保険は利用しません。
更新の必要性は、ご本人の病状や心身の状況によって異なります。
入院中でも退院の目処が立っていて、自宅に戻ってから介護サービスを利用するあるいは介護施設へ入居する予定がある方は、更新申請が必要です。
退院の見込みが立たない方は、介護保険の更新申請を行う必要はありません。
病院で専門的な医療ケアを受ける人や病院で看取りを希望する場合も不要です。
更新手続きには訪問調査があり、健康状態が不安定な時期に受けると、認定が出る頃の健康状態と結果が見合わない恐れもあります。
入院中に更新を行う場合は、主治医やビジネスケアラーと相談した上で決めましょう。
要介護認定を受けている方で、有効期間内に心身の状態が著しく変化した場合は区分変更の手続きが可能です。
介護保険サービスは、要介護認定の段階によって利用できるサービスの内容や支給限度額が異なります。現在の健康状態と合わないと感じるときは、次の更新を待たず区分変更を考えましょう。
区分変更を行うタイミングはいくつかあります。ただし、明らかな状態の変化以外では希望通りの認定結果にならないこともありますので注意が必要です。
病気や怪我により心身の状態が急激に悪化すると、より多くの介護保険サービスが必要となり家族の負担もかかります。
今の介護度とサービス内容が見合わない場合は、区分変更を申請し適切な介護を受けましょう。
要介護認定の度合いが現在の状態に見合っていないと、日々の生活に支障をきたします。
認定内容に納得できない場合不服の申し立てもできますが、区分変更として認定調査を行う方がスムーズな流れです。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの費用は、要介護認定の段階ごとに設定されています。
以前認定を受けた介護度よりも身体状態が回復している場合、要介護認定の区分変更をすることによって費用を抑えることもできます。
要介護認定の区分変更は以下のような流れに沿って行います。
ケアマネジャーの判断基準を公平に保つため、厚生労働省によって定められている課題分析標準項目に沿って評価を出します。
①申請書類を記入して提出
②訪問調査
③一次判定
④二次判定
⑤区分変更申請書を提出してから、1ヵ月程度で認定結果を通知
⑥ケアマネジャーから新しいケアプランを作成してもらう
区分変更を希望するときは、必ず本人と介護を行う家族が現状の課題について話し合うことが大切です。
介護保険サービスを利用している人は、担当のケアマネジャーと区分変更の具体的な内容や時期について相談しましょう。
・要介護認定は、申請区分によって有効期限が定められていている
・有効期限満了後は、自動更新ではなく定められた期間内に更新手続きが必要
・更新手続きはご本人の他に、代理申請が可能
・心身の状態と介護サービスの内容が見合わない場合は、有効期限前でも区分変更を検討する
介護保険サービスは、必要としている人が適切なサービスを受けることが重要です。
要介護認定は本人だけではなく、介護を行う家族の生活にも直結します。
有効期限内でも状況は変わりやすいため、家族や支援者と密にコミュニケーションをとり合い、快適に過ごせる環境を整えましょう。
金山峰之(かなやま・たかゆき) 介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。
厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。
元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。