特養に早く入れる方法やコツはある?早期入所の裏ワザ9選を解説!

特養に早く入れる方法やコツはある?早期入所の裏ワザ9選を解説!

特養の入居判定基準

特養では、ベッドに空きが出ると次に入る入居者の優先順位を決めるため主に施設長や生活相談員、介護職員などで「判定会議」が開かれます。優先順位の詳細は、各自治体や施設ごとに多少異なるケースがあるので注意してください。
特養が何を基準に入所判定を行っているのか、その仕組みや判断基準について説明します。

厚生労働省の調査によると、特養が「優先して入所させるべき」と考える人の条件(複数回答)は、「介護放棄、虐待等の疑いがあること」が最多数で71.3%、次点が「介護者が不在、1人暮らしであること」62.2%と報告されています。

施設調査:特養が「優先して入所させるべき」と考える人の条件(複数回答)

  • 介護放棄、虐待等の疑いがあること(71.3%)
  • 介護者が不在、1人暮らしであること(62.2%)
  • 施設、病院からの退所・退院を迫られている状況であること(36.1%)
  • 要介護度が一定水準以上であること(34.3%)
  • 一次判定の点数が一定水準以上であること(26.2%)
  • 家族が入所の必要性を強く訴えていること(24.3%)
  • 認知症による常時徘徊等の周辺症状があること(17.4%)
  • 一次判定と二次判定の合計が一定水準以上であること(6.4%)*

*入所判定の際、一次判定・二次判定の2段階で採点、評価を実施している施設がある

特養が入所優先の判断基準としているのは、上記のように、緊急を要するケースであることが分かります。入居希望者の方やその支援者(介護家族・ビジネスケアラー)の方が上記のような状況に当てはまっている場合は、申請時にしっかりアピールしておきましょう。

出典:厚生労働省「特別養護老人ホームにおける待機者の実態に関する調査研究事業 ~待機者のニーズと入所決定

 

特養に早く入居できる裏ワザ9選

笑顔の高齢者女性と介護士の女性(訪問介護・在宅介護)

特別養護老人ホームは原則「要介護3以上の高齢者」向けで、手厚い介護サービスや生活支援を提供する施設です。

月々の入所費用も安いため、他の老人ホームと比べると人気が高く、入居待ちが長くなってしまうのが現状です。
そんな特養に、少しでも早く入居できる秘訣や裏技について解説します。

こまめな空室情報収集を

常に満室状態が続いている特養。まずは、こまめに情報収集を行って各施設の状況をチェックし、空きが出た際に素早く対応できるようにしましょう。

確認は電話で直接問い合わせるか、インターネット上で空室情報を確認できる施設もあるので、その場合はできるだけ毎日チェックしてみてください。

また、空室情報に精通しているケアマネジャーもいるため、ケアマネジャーへの相談や問合せも忘れずにしておきましょう。

ユニット型が狙い目

特養の居室タイプには、「従来型」と「ユニット型」の2種類があります。

特養の月額料金の目安

従来型 ユニット型
費用目安

(自己負担1割)

個室:9.6万円~10.4万円

多床室個室:8.6万円~9.4万円

個室:12.3万円~13.1万円

個室的多床室11.3万円~12.1万円

上の表のように「個室か多床室か」「従来型かユニット型か」の違いで、月に数万円程度の金額差があります。このため、人気が高いのは従来型で、料金の高いユニット型の方が競争率が低い傾向となっています。

経済的に余裕のある方は、ユニット型を選ぶと早期入所がしやすくなるでしょう。

なお、多床室の場合は、プライバシーが確保しにくいというデメリットもあるため、費用だけに重点を置かず、利用者ご本人の意向も大切にして検討を。

複数の特養施設へ登録を

特養への入居申し込みは、複数の施設を同時に登録することが可能です。特に競争倍率が高い地区では、入所の確率を少しでも高めるために、複数の登録は必須です。

ただし、地域によって申込数制限が設けられていることもあるので、入居希望の施設がある自治体に確認しておいてください。

入所が決定した際は、他の施設への申請を取り消すことも忘れずに行いましょう。

申し込み理由欄は思いが伝わる記載を

入所申請の際、必要書類の「申し込み理由」または「特記事項」記載欄は、丁寧にしっかりと書き込みましょう。

入居の決定は申し込み順ではなく、申請者それぞれの緊急性が優先度に大きく影響します。例えば在宅介護を続けることが困難である状況や、金銭面での困りごと、生活環境が不十分であることなど、入居の必要性をしっかりに伝えることで、施設側へ緊急性を理解してもらいやすくなります。
また、食事や排泄のサポートや、痰の吸引などの医療ケアに関してまで、必要な内容について詳しく記載しましょう。
入所を希望される方が、普段からどのくらい介護サービスを利用しているのかを伝えるこために、「日常生活動作(ADL)確認表」をケアマネージャーに依頼してを添付してもらうことも効果的です。

詳しい内容を記載することで、施設側も入所される方の状態を把握しやすくなり入所の優先順位があがるかもしれません。
記入欄の書き込みは簡単に済まさないよう、心がけておきましょう。

ショートステイを連続で利用

特養の多くは、ショートステイ(短期入所生活介護)の利用が可能です。ショートステイは、施設の雰囲気や入居イメージを掴むのにも役立つうえ、頻繁に利用することで施設側にも利用者と家族の状況を把握してもらいやすくなり、緊急性のアピールにも繋がります。

ショートステイは最大30日間連続で利用できますが、最大日数を利用した後に一度帰宅をし、再度ショートステイをする連続利用「ショートのロング」という使い方が可能です。

ショートのロングで職員とも顔なじみになり、施設側と良好な関係を築けると、空室情報を教えてもらえることも期待できます。

入所したい施設の介護サービスを利用

ショートステイのほかにも、特養では各種介護サービスを行っている施設もあります。入所を希望している施設の介護サービスがあれば、積極的に活用していきましょう。

ショートステイの利用ケースと同様に、介護サービスを通じて施設側と顔なじみになり、在宅介護の大変さを理解してもらえるきっかけができます。

家族全員が就労し優先度を上げる

日本では現在、介護離職が社会問題となっています。厚生労働省も介護離職の防止を推進しているため、特養では共働きの家庭は「介護者不在により優先度が高い」とみなされる傾向にあります。

逆に、働いていない家族が一人でもいる場合、日中に支援する人手があると判断され、優先順位は下がります。

可能であれば、家族全員がパートも含め何かしらの仕事に就いている状態にすると、緊急度が上がり、入居の優先順位を上げることができます。

体調や家庭環境の変化を細かく報告

特養の入居待機期間の間に、入居予定者の体調や身体状況、家庭の環境が変化するケースは多々あります。入居申請後に、以下のような変化があった場合には、必ず報告をしておきましょう。

  • 認知症や新たな症状が出てきた、または悪化した
  • 要介護度が上がった
  • 家族が介護できなくなった等の家庭環境の変化

申請後に状況変化があった場合の報告義務はなく、特養から待機中に聞かれることもありません。こうした状況変化をその都度こまめに報告することで、優先度が変わる可能性もありますので、忘れずに行ってください。

探すエリアを拡大する

特養の待機者数は、人口が密集した都市部では非常に多くなりますが、郊外や地方など少し離れた地域だと待機者数は少ないこともあります。希望する施設の待機者が多い場合は、探す地域を思い切って広げてみるのも手段の一つです。

ケアマネジャーに、どこの地域であれば待機人数が少ないか聞いてみて、再検討をしてみるのもいいかもしれません。

ただし、「地域密着型の特養」の場合は住民票がないと入所できないため、注意が必要です。住所に関係なく自由に場所を選べる「広域型の特養」を探すようにしましょう。

 

特養の入居待ちの平均期間

考えている高齢女性

厚生労働省の公表したデータによると、現在特養の待機者数は27.5万人と報告されています。

特養の入所までの待機期間は、早くて1ヶ月、平均1〜2年とも3年とも言われていますが、地域や施設によって大きく異なるため、一概には言えません。

特養の入居待機期間が長くなる原因として、人気が高く申請者の数が多いことや看取り対応可能な施設であるため空きが出にくいことが挙げられます。

入居を希望する地域の特養の待機期間についての情報は、地域包括支援センターや各施設へ問い合わせをしてみてください。

参考:厚生労働省 Press Release「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)に関する調査結果を公表します

 

特養の入居待ちのあいだは?

特別養護老人ホームは、老人ホームのなかでも入所待ち期間が長い施設です。そのため、入所できるまでの介護体制についても考えておくことがとても大切になります。入居待ち期間は前述にもありましたが、「在宅介護をする」「ショートステイを利用する」意外に、「民間施設に入居する」といった方法で乗り切りましょう。

利用できる民間機関
・有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅
有料老人ホームは、施設によって受け入れ対象はさまざまですが、自立から要介護5まで幅広い介護度合いに対応しています。特別養護老人ホーム入居対象外の方、長期の入居待ちが予想される方でも入居ができて、必要に応じて介護サービスの利用も可能です。

・認知症対応型共同生活介護
通称「グループホーム」と呼ばれ、その名の通り「認知症の状態」にあることが入居条件となります。特養と根本的に違うのは、食事の提供方法と医療職の配置義務で、特養の食事は、いわば給食型(提供される仕組み)ですが、グループホームは原則、買い出し・調理・食事までをスタッフと入居者が共同で行う仕組みです。

・介護老人保健施設
通称「老健」と言われる施設です。老健は、「居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者に対し…日常生活上の世話を行うことを目的とする施設」と定義されており、長期入所を目的とした施設ではありません。しかし、特養待機者を受け入れている施設もありますので、選択肢のひとつとして見学をして話を聞いてみるとよいでしょう。

・ケアハウス
ケアハウスには、2種類あります。一つは自立した生活に不安のある60歳以上の方が利用できる施設で、介護が必要な状態になると退去の可能性があります。もう一つは特定施設入居者生活介護の指定を受けている施設で、介護が必要な状態になっても介護を受けることができます。また、看取りに対応している施設もあります。

 

まとめ

特養の入居は、申し込み先着順ではなく、緊急性の高さで優先度が決定されています。どのくらいの待機期間で入居できるのかは、地域や施設により様々であるというのが現状です。

優先度を高めるための対策は、支援者(介護家族・ビジネスケアラー)の方にとって仕事と介護の両立も必要となり、ストレスや介護負担を抱えがちになります。入居待機期間中は、介護サービスを存分に活用し、ケアマネジャーへの相談もまめに行っていきましょう。

ただ入居の順番を待つだけではなく、今回ご紹介した入居を早めるための秘訣・裏ワザをできる範囲で実践してみてください。

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この記事の監修者

回答者アイコン金山峰之(かなやま・たかゆき) 介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。 厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。 元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。

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