介護保険サービスを受けるために必要な、要支援・要介護認定。どれだけ介護を必要としているのか?という「介護の手間」を時間換算し、介護の度合いが7段階に分別されています。
介護度により、どんなことが異なるのか、サービスや費用の違いを説明していきます。
「要支援」と「要介護」の違いは?
要支援、要介護とは「介護の必要度合い」をあらわしたものです。介護保険サービスを利用する際には、この、要支援または要介護の認定が必要になります。
要支援と要介護では、身体の状態、利用できるサービスなどに違いがあり、厚生労働省で説明されている、自立・要支援・要介護それぞれの状態について詳しく見ていきましょう。
自立とは?
「一人で日常生活を送ることができ、介護や支援を必要としていない状態のこと」です。
自立の状態でも介護サービスは利用できますが、要支援・要介護認定を受けていないと利用できないサービスがあったり、費用が全額自己負担になったり、利用に制限が出てきます。
要支援とは?
「日常生活を送るうえで、多少の支援が必要な状態」を要支援といいます。
例えば、トイレや入浴は一人でできるが掃除はできない、立ち上がる際に何らかの支えを必要とすることがある、などの状態です。要支援は、「要支援1」と「要支援2」の2段階に分類されます。
要介護とは?
「日常生活の基本動作においても、自分で行うことが困難であり、何らかの介護を要する状態」を要介護といいます。
例えば、入浴時に自分一人で体を洗えず入浴介助が必要、寝返りができないなどの状態です。要介護は1~5の5段階に分類されています。
要支援・要介護の状態とサービスの分類
要支援と要介護、それぞれの状態と利用できるサービスを大きく分類すると下記のような区分になります。
|
利用できるサービス |
サービスの手続き方法 |
段階 |
状態 |
軽い |
非該当 |
非該当 |
自立 |
食事や排泄、入浴など、基本的に一人で生活でき、介護や支援がなくても日常生活全般の行為が可能。 |
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓ |
介護予防サービス
(要介護状態になることを予防) |
地域包括支援センターで介護予防ケアプランの作成を依頼 |
要支援1 |
食事や排泄、入浴など、基本的に一人で生活できるが、部分的な介助が必要。 |
要支援2 |
介護サービス
(日常生活を送るための必要な介護) |
担当ケアマネージャーにプラン作成を依頼 |
要介護1 |
基本的な動作が困難で、日常生活全般において介護が必要。思考力や理解力の低下。 |
要介護2 |
要介護3 |
要介護4 |
重い |
要介護5 |
介護度別の身体の状態例
次に、介護認定の目安となる身体の状態を、介護段階ごとに見ていきましょう。
段階 |
要介護認定の目安となる身体の状態 |
要支援1 |
社会的支援を必要とする状態。
日常生活上の動作について、ほぼ自分で行うことができるが、複雑な動作に部分的な支援が必要
【具体例】
・排泄や食事:ほとんど一人でできる
・日常生活の行動能力:何らかの支えを必要とすることがある |
要支援2 |
生活に支援を要する状態。
要支援1に比べ自分でできることが少なくなり、支援とともに一部介護が必要な状態。
【具体例】
・排泄や食事:ほとんど一人でできる
・日常生活の行動能力:わずかに低下し、何らかの支えが必要となる |
要介護1 |
部分的な介護を要する状態。
立ち上がりや歩行が不安定で、生活の一部で介護が必要な状態。
【具体例】
・排泄や食事:ほとんど一人でできる
・日常生活の行動能力:一部に手助けが必要になる
・立ち上がりや歩行;何らかの支えが必要となる
・認知度:問題行動や理解の低下が見られることがある |
要介護2 |
軽度の介護を要する状態。
立ち上がりや歩行ができないことが多く、日常生活全般に部分的な介助が必要な状態。
【具体例】
・排泄や食事:何らかの介助を必要とすることがある
・日常生活の行動能力:全般に何らかの介助が必要になる
・立ち上がりや歩行;何らかの支えが必要となる
・認知度:問題行動や理解の低下が見られることがある |
要介護3 |
中度の介護を要する状態。
立ち上がりや歩行が自力では困難で、日常生活全般で 24時間介助が必要な状態。認知症の症状が見られる。
【具体例】
・排泄や食事:ひとりでできない
・日常生活の行動能力:身の回りの世話がひとりでできない
・立ち上がりや歩行;複雑な行動がひとりでできないことがある
・認知度:いくつかの問題行動や理解の低下が見られることがある |
要介護4 |
重度の介護を要する状態。
立ち上がりや歩行が自力ではほとんどできず、介護なしには日常生活を送ることができない。認知症の症状が見られる。
【具体例】
・排泄や食事:ひとりでできない
・日常生活の行動能力:ほとんどひとりでできない
・立ち上がりや歩行;ほとんどひとりでできない
・認知度:多くの問題行動や理解の低下が見られることがある |
要介護5 |
最重度の介護を要する状態。
寝たきりの状態で日常生活全般全てにおいて介助が必要な状態。
【具体例】
・排泄や食事:ほとんどできない
・日常生活の行動能力:ほとんどできない
・立ち上がりや歩行;ほとんどできない
・認知度:多くの問題行動や理解の低下が見られることがある |
※上記は一般的な例で、全ての方に一致するものではありません。
しかし、一人ひとりの身体の状態が異なるため、より詳しい認定基準については現在は公表されていない状況です。認定基準についてもっと詳しく知りたい場合は、要介護認定申請時に市区町村の窓口で確認、または要介護認定後にケアマネジャーに確認するのがよいでしょう。
関連記事:要介護認定とは?仕組み・申請方法や認定基準・要介護と要支援の違いまでを解説
要支援2と要介護1の分かれ目になる基準
「要支援2」と「要介護1」の基準の境目は非常にわかりにくいですが、どちらに該当するかが非常に重要になってきます。要支援か要介護かで、受けられる介護サービスや支給限度基準額に大きな違いが出てくるからです。
「要支援1」と「要介護1」を分類する基準は、大きく分けて以下の2つです。
・認知症の有無
・状態の安定性
それぞれを詳しく見ていきましょう。
認知症の有無
基準の1つ目は「認知症の有無」です。認知症の疑いが高い場合は「要介護1」に分類されます。
認知症の状況をI~Mの7段階で評価する「認知症高齢者の日常生活自立度」で、認知症の度合いが高い場合は、要介護に判定される可能性が高くなります。
状態の安定性
基準の2つ目は「状態の安定性」です。かかりつけ医など医師の判断で、今後、身体の状態が大きく変化し、介護量の増加につながる可能性がある場合は「要介護1」に分類されます。
この2つの基準のうちどちらか一方でも当てはまれば「要介護1」と判定される可能性が高くなります。要介護度は、最終的に介護認定審査会で決定するため、絶対の線引きはありませんが、判定の目安になるため覚えておきましょう。
介護度別 利用できるサービス
要介護度の段階によって、受けられるサービスの内容が異なってきます。
利用できるサービスの一例をご紹介します。
サービス内容 |
要支援1~2 |
要介護1~5 |
訪問介護 |
○ |
○ |
訪問入浴 |
○ |
○ |
訪問看護 |
○ |
○ |
訪問リハビリテーション |
○ |
○ |
夜間対応型訪問介護 |
× |
○ |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 |
× |
○ |
通所介護(デイサービス) |
○ |
○ |
通所リハビリテーション(デイケア) |
○ |
○ |
地域密着型通所介護 |
○ |
○ |
認知症対応型通所介護 |
○ |
○ |
小規模多機能型居宅介護 |
○ |
○ |
看護小規模多機能型居宅介護 |
× |
○ |
短期入所生活介護(ショートステイ) |
○ |
○ |
短期入所療養介護(医療型ショートステイ) |
○ |
○ |
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) |
× |
△(要介護3から利用可) |
介護老人保健施設 |
× |
○ |
介護療養型医療施設 |
× |
○ |
介護医療院 |
× |
○ |
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) |
△(要支援2から利用可) |
○ |
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 |
× |
○ |
地域密着型特定施設入居者生活介護 |
○ |
○ |
福祉用具貸与 |
△(介護度によって貸与できない福祉用具もある) |
△(介護度によって貸与できない福祉用具もある) |
特定福祉用具販売 |
○ |
○ |
介護度別1ヶ月あたりの支給限度額の違い
要支援・要介護の認定を受けた方が、介護保険サービスを利用できる限度額を「支給限度額基準」と言います。要介護度別に支給限度額が定められており、金額が異なってきます。
段階 |
支給限度基準額(1ヶ月あたり) |
自立 |
0円 |
要支援1 |
50,320円 |
要支援2 |
105,310円 |
要介護1 |
167,650円 |
要介護2 |
197,050円 |
要介護3 |
270,480円 |
要介護4 |
309,380円 |
要介護5 |
362,170円 |
支給限度内のサービスであれば、費用の1~3割を負担することで利用が可能です。要支援1の場合、50,320円までのサービスであれば、1~3割の負担で利用ができるということです。
まとめ
要支援と要介護、言葉は似ていますが、利用できるサービスも支給額も大きく異なります。
どの介護段階に当てはまるのか、利用者やその家族だけでの判断は難しいため、介護認定調査を受けてどの程度の状況なのか、判定してもらうのがいいでしょう。実際の身体の状態や介護の状況より軽く判定されてしまうと必要な介護サービスを受けられなくなってしまう可能性もあります。
介護認定調査の際には、身体の状態と毎日の介護の様子を正しく調査員に伝えることが重要です。
この記事の監修者
木場 猛(こば・たける) 株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー)
介護福祉士 介護支援専門員 東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 国内ビジネスケアラーデータ取得数最多の仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ監修や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。 3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。
著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』
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