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訪問看護とは?サービス内容や費用、利用条件などを解説

ショートステイで会話をしている高齢女性 #介護の知識

自宅で安心して暮らすために必要な訪問看護。病院や施設に行くのが困難な方にとっては大きな支えとなります。今回は、訪問看護のサービス内容や費用、利用条件などを分かりやすく解説します。

訪問看護とは?

訪問看護とは、看護師が自宅を訪問して、療養を必要とする方にケアを行うサービスです。

主治医が作成した指示書に基づいて健康状態を確認し、療養指導、医療処置、身体介護などを行います。24時間対応の電話相談や緊急訪問看護の体制も整備されており、利用者やご家族の相談に応じてアドバイスを提供します。

訪問看護師の役割は、利用者・家族・主治医の橋渡し的な存在として、また地域に関わる他の機関との連携をスムーズに行う調整役としても重要です。

似たような名前のサービスが他にもありますが、その違いは以下をご覧ください。

名称概要
訪問看護医療関係者が自宅を訪問し、健康悪化の防止と回復を目的として、治療や世話を行う
在宅看護ご家族がかかりつけ医などと相談して、在宅で看護やケアを行う
訪問介護ホームヘルパーなどが自宅を訪問して日常生活をサポートするが、サービスに医療ケアの行為は含まれない

 

訪問看護の目的

訪問看護は、要介護者が住み慣れた地域や家庭で療養生活を送れるように支援する制度で、日常生活と療養生活を通して、利用者に適した医療ケアを提供しています。医療依存度が高い方だけでなく、比較的お元気な方の健康の相談に乗ったり、リハビリを提供することで自立した日常生活を目指す支援も行っています。

介護保険で訪問看護を利用できる対象者

訪問看護の対象者は、介護保険・医療保険・自費で利用する場合で条件が異なります。

▼適用条件や違いについて詳しく知りたい方はこちら↓
訪問看護を医療保険で利用する条件や制限ってなに?介護保険との違いもご紹介

介護保険の訪問看護は、以下の方が対象です。

  • 65歳以上の要支援・要介護認定を受けている方(第1号被保険者)
  • 40~64歳で、介護保険法で指定された16の特定疾病が原因で要支援・要介護認定を受けている方(第2号被保険者)

また、介護保険の訪問看護を利用するには、医師が作成する訪問看護指示書が必要です。
主治医からの指示書に基づき、居宅介護支援事業所のケアマネジャーがケアプランに訪問看護を組み入れ、訪問看護ステーションがその計画に沿って訪問看護を提供します。

 

訪問看護のサービス内容

笑顔の高齢者女性と介護士の女性(訪問介護・在宅介護)

訪問看護のサービス内容と自宅を訪問してくれる専門職員について解説します。

訪問看護のサービス内容

訪問看護は、日々の健康管理からターミナル(看取りを含む終末期)ケアまで幅広いサービスを提供しています。

訪問看護で受けられるサービスは、以下の通りです。

  • 療養生活相談・支援
    食事や栄養管理、口腔ケア、排泄ケア、体位交換、床ずれ(褥瘡)予防などのケアと指導、評価などを行う
  • 病状や健康状態の管理と看護
    バイタルチェックや問診で健康状態に変化がないかチェックし、必要なアドバイスと予防的な支援をする
  • 医療処置・治療上の看護
    主治医の指示のもと、点滴やカテーテル管理、インスリン注射などを行う
  • 苦痛の緩和と看護
    痛みや倦怠感などの緩和を行う
  • リハビリテーション
    身体機能や呼吸機能、嚥下機能などの回復のためのリハビリを行う
  • 家族の相談と支援
    在宅介護で困っていることなどを聞き、アドバイスや必要な支援をする
  • 住まいの療養環境の調整と支援
    手すりや段差解消などの住宅改修や、必要な福祉用具などについてアドバイスを行う
  • 地域の社会資源の活用
    保険、医療、福祉の制度の紹介や導入、各種サービス提供機関との連絡や調整を行う
  • 認知症の人の看護
    服薬管理や周囲とのコミュニケーションを支援する
  • 精神障がい者の看護
    心身の健康状態を観察し、必要なサービスを提供する
  • エンドオブライフケア
    在宅での看取り、利用者・家族の精神的な支援を行う
  • 在宅移行支援(外泊中の訪問看護など)
    入院先で退院後の在宅療養の準備や指導を行う

出典:厚生労働省「訪問看護活用ガイド 改訂版

 

訪問看護に来てくれる専門職

訪問看護で訪問してくれる専門職は、看護師、准看護師、保健師、助産師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの有資格者です。

これらの専門職は利用者の状況に応じて選ばれ、かかりつけ医の指示に基づいてケアマネジャーや訪問介護員、その他関係機関などと連携して支援を行います。

 

訪問看護を提供している機関

訪問看護サービスを提供している機関は、以下の5種類があります。

訪問看護ステーション保健師や看護師が管理しており、地域に開かれた独立した事業所。様々な専門職の職員を揃えており、利用者の主治医の所属機関に関係なくサービスを提供している(系列機関もある)。利用者が多く、気軽に利用できる。
保険医療機関訪問看護サービスを提供する病院や療養所、クリニックなど。これらは介護保険法の「みなし指定訪問看護事業所」として扱われ、介護保険・医療保険が利用可能。
定期巡回・臨時対応型訪問介護看護介護保険制度の地域密着型サービスの一つで、有事の際にも対応してくれる訪問看護。24時間体制で定期巡回の訪問介護と訪問看護を提供している。
看護小規模多機能型居宅介護訪問介護や訪問看護、通所介護や宿泊サービスなどを提供する、介護保険制度の地域密着型サービス。患者の状況に応じた幅広いサービスを提供する。
民間の訪問看護サービス民間企業が医療保険制度・介護保険制度外で提供するサービス。利用料金は各企業で異なり、各種保険は適用されないため自己負担が必要。公的保険では対応が難しい遠距離外出支援や受診時の同行などのサービスを提供している企業が多い。

 

訪問看護の費用と利用頻度

訪問看護の費用と利用頻度について見ていきましょう。

訪問看護費用の目安

訪問看護の費用は、訪問時間の長さと利用回数により異なります。

また、お住まいの地域やサービス提供体制、サービス内容によっても利用料が異なります。

介護保険で訪問看護を利用する場合の自己負担割合は原則として1割ですが、負担する方の所得によっては自己負担額が2~3割になることもあります。

訪問看護ステーションにおける1回あたりの基本料金(1割負担の場合)を例示します。

看護師による訪問20分未満:313円
30分未満:470円
30分以上1時間未満:821円
1時間以上1時間半未満:1,125円
理学療法士、作業療法士
言語聴覚士による訪問
20分:293単位
※1日3回以上(60分以上)利用の場合、×0.1した費用が必要

 

訪問看護の利用頻度

介護保険において、訪問看護の利用回数には制限はありませんが、月間の上限は介護保険の支給限度額によって設定されます。訪問看護が必要な方は複数の介護保険サービスを利用しながら月間費用を抑えるため、週1~2回の利用が一般的です。

介護保険の訪問看護を利用する場合の利用頻度は以下のようになります。

利用可能な回数利用回数に制限なし

個人ごとの居宅サービス計画(ケアプラン)によって利用回数が設定される

利用可能な時間数一回の訪問時間は次のうちのいずれか

①20分未満

②30分未満

③30分以上60分未満

④60分以上90分未満

(看護師・准看護師の場合)

 

訪問看護の利用方法

介護サービスのっ利用料金を計算する家族

介護保険における訪問看護の利用までの一般的なプロセスは、以下の通りです。

  1. 相談
    利用者はケアマネジャーへ、どのような看護が必要なのかを相談する。ケアマネジャーは訪問看護ステーションなど提供事業者へ連絡しサービスの提供の調整を行う。
  2. 訪問看護指示書発行の申請
    サービス提供事業者(またはケアマネージャー)が利用者の主治医(かかりつけ医)へ連絡し、「訪問看護指示書」の発行を依頼。医師は訪問看護指示書を事業所へ送付。
  3. 契約・初回訪問
    ケアマネジャーはケアプランを作成。利用者と事業者は正式契約を行う。
  4. 初回訪問日は、ケアマネジャーを介して日程調整をしてもらうのが一般的。
  5. 2回目以降の訪問
    契約内容に沿って、定期的な訪問と必要に応じたケアを受ける。緊急時の対応もあり。
  6. 訪問看護の契約終了
    利用者の状態により、看護を終了することも可能。再度必要になった場合、再開の依頼はケアマネジャーへ。

 

訪問看護利用時の注意点

以下に訪問看護を利用する際の注意点をまとめました。

  • 訪問看護を利用するには、介護保険の手続きや申請が必要です。要介護認定を受けるまでに1ヶ月近くかかることもあるため、早めに行動することが大切です。
  • 訪問看護では、買い物や掃除、洗濯などの日常生活のサポートは行わないため、そうしたサービスが必要な場合は別途ヘルパーの支援を受ける必要があります 
  • 病院や事業所によって休みやサービス提供時間が異なりますので、事前にサービスの提供時間を確認しましょう。 
  • 支給限度額が要介護度ごとに設けられています。支給限度額を超えた場合は全額自己負担となるので注意が必要です。

 

まとめ

訪問看護には利用者の健康状態に合わせた様々なサービスがあり、資格を持った専門家がケアをしてくれます。

外出が困難な方にとっては、安心して在宅医療ケアを受けることができますが、適用される保険や介護度によりかかる費用は異なりますので、契約前にしっかり事前確認を行いましょう。

サービスの利用については、まずは主治医やケアマネジャーに相談してみてください。

 

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この記事は専門家に監修されています
 介護プロ
金山峰之(かなやま・たかゆき)

介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。
厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。
元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。

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