要介護4とはどんな状態?受けられるサービスや平均介護期間について解説

要介護4とはどんな状態?受けられるサービスや平均介護期間について解説

要介護4は、介護なしには日常生活を送ることができない、介護認定の中でも重度の状態とされています。

要介護4で利用できるサービスや制度はどんなものがあるのでしょうか?また、介護に必要な費用の目安など知っておきたいポイントを解説していきます。

支援される側も支援者(介護家族・ビジネスケアラー)側も、介護疲れで思い詰めてしまわないよう、積極的にサービスを利用していきましょう。

要介護4とは?

要介護4とは、食事や排泄、入浴などの日常生活において全面的な介助が必要な状態です。具体的に状態や症状を見ていきましょう。

要介護4の認定基準

要介護4と認定される基準は「要介護認定等基準時間が90分以上120分未満相当」であることです。

「要介護認定等基準時間」とは、厚生労働省が定めたもので、日常的な身体介助や歩行、機能訓練など介護にかかる時間の度合いを表したもの。

また、病気が原因で要介護4と認定される場合もあります。例えば、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、パーキンソン病などで常時介護が必要になった場合は、40歳以上からでも要介護認定を受けることができます。

要介護4の状態

自力で立つ、歩く、座った状態を保ち続けることができない状態です。

食事や入浴、排泄、着替えなど日常の動作で全面的な介助が必要。昼も夜も常に介護が必要な状態のため、在宅介護だけでは難しい場合が多くなってきます。

徘徊や妄想などの周辺症状認知症の症状による問題行動がみられるケースも増えてきます。思考力や理解力が低下することで、家族や周囲の人たちとのコミュニケーションが難しくなることも。

身体能力の低下から、車椅子の使用が必要になる方も要介護4から増えてきます。

 

要介護4と5の違い

要介護4と5の大きな違いは「寝たきりの状態が悪化しているかどうか」「一定の意思疎通ができるかどうか」です。

要介護4も5も、どちらも寝たきりの状態ではあるものの、要介護4は一部の動作は自力で行うことができますが、要介護5は自力で行えることがほとんどありません。

また、要介護4は一定の意思疎通はできますが、要介護5は意思疎通ができないケースも多いです。

要介護4 要介護5
●立ち上がり、食事、入浴、トイレ、着替えなどの日常の動作で全面的な介助が必要。

●昼夜問わず常に介護が必要。

●認知症の症状(妄想、徘徊など)による問題行動が見られる。

●思考力、理解力の低下により、意思疎通が見られる。

●食事、入浴、トイレ、着替えなど、生活全般での介助が必要。

●歩行や寝返りが自力でできず、一日中寝たきりの場合が多い。

●嚥下機能(噛む、飲む)の低下で、固形物の食事が困難。

●認知機能の低下が見られ、意思疎通ができない場合が多い。

 

要介護4の生活はどうなる? 

前述の通り、要介護4は介護負担が非常に大きい段階です。介護される側も、支援者(介護家族・ビジネスケアラー)側もどちらも負担が大きいため、一人暮らしはもちろん在宅介護だけでは難しい場合が多くなります。

平均的な介護期間や介護時間、施設を利用している割合などから、要介護4ではどのような生活になるのか見ていきましょう。

平均寿命と健康寿命の関係ついて

平均的な寿命・余命と健康寿命から推測する介護期間

日本人の平均的な介護期間はどれくらいなのか?厚生労働省「平均寿命」と「健康寿命」のデータから推測することができます。

厚生労働省の『健康寿命の令和元年値について(2019年)』によると、現在の日本人の平均寿命は男性が81.41歳、女性が87.45歳。
一方で、「健康上の問題を抱えることなく日常生活を送れる期間」とされている健康寿命は、男性は72.68歳、女性は75.38歳です。

この平均寿命から健康寿命を引くと、理論上の介護期間を推計することができます。

男性の場合:平均寿命81.41歳 - 健康寿命72.68歳=介護期間8.73年

女性の場合:平均寿命87.45歳 - 健康寿命75.38歳=介護期間12.06年

また、公益財団法人 生命保険文化センターの『生命保険に関する全国実態調査(2021年度)』のデータによると、実際の平均介護期間(現在介護中の方は介護を始めてからの経過期間)は、約5年1ヶ月です。

理論上の介護期間とは大きく異なる結果ですが、内訳を見ると4年以上介護を必要とされた方は約5割、6ヶ月未満の方は3.9%、10年以上の方は17.6%となっており、介護期間は年齢や病状によって様々で、個人差があることが分かります。

いずれのデータも平均値ですので、あくまでも参考の目安としてください。

1日の平均的な介護時間

一般的に、要介護3から介護に必要な時間が急激に増えていきます。これは、排泄や食事、身の回りの世話、立ち上がりや歩行がひとりでできなくなるためです。

厚生労働省『国民生活基礎調査の概況(2019年)』の調べから、要介護4で介護に半日以上を要している方は、半数以上の54.4%に登り、ほとんど終日を要している方は45.8%を占めてます。

介護環境や症状・状態によって介護時間には個人差がありますが、介護時間が大幅に増える要介護4では、本人だけでなく支援者(介護家族・ビジネスケアラー)のケアも必要になってくるでしょう。

無理のない介護を続けるためにも、介護サービスの利用は欠かせません。

要介護4では多くの方が施設を利用 

では、長時間の介護が必要になる要介護4は、どれくらいの方が介護施設の入居をしているのでしょうか?

生命保険文化センターの調査によると、要介護4の場合、約63%の方が介護施設に入居しています。

▼要介護4の介護環境の割合
 施設(病院、介護老人福祉施設、有料老人ホームなど)・・・63%
 在宅(自宅、親や親族の家)・・・33%
 その他・・4%

要介護3以上の方から、特別養護老人ホーム(通称:特養)への入居も可能になります。民間の有料老人ホームよりも費用が安く、介護サービスも充実している特養は、入居待ちも多いほどに人気が高い施設です。

要介護4でのサービス利用状況 

では、要介護4の方が、どれくらいの割合でどんなサービスを利用しているのでしょうか?厚生労働省「国民生活基礎調査 (2019年)」の調査によると、

要介護4の場合、「サービスを利用したことがある」のは全体の約82%、「サービスを利用したことがない」のは約18%

そのうち「サービスを利用したことがある」方が利用したサービスの割合(複数回答・介護保険制度とその他のサービスの総数)から見ると、最も利用されているのは訪問系の介護サービスとなっています。

訪問系サービス:約84.5%
通所系サービス:約50.3%
短期入所サービス:約25.6%
居住系サービス(グループホーム):約15.3%
小規模多機能型サービス等:約3.9%

(出典;厚生労働省「令和元年国民生活基礎調査https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003441852)

訪問介護・通所介護・短期入所(ショートステイ)などのサービスをどのように組み合わせていくか、ご家庭の環境や介護される方の状態にあわせ、検討していきましょう。

要介護4の場合は一人暮らしすることは可能?

要介護4は日常生活全般で介助が必要なため、一人暮らしは、非常に難しいとされています。

ショートステイや訪問介護などを毎日複数回利用していたとしても、それ以外の時間を一人で生活することが難しいため、急な体調変化やトラブルへの対応ができません。健康面・安全面の点から見ても、一人暮らしはかなりリスクが高いと言えるでしょう。

 

要介護4で受けられるサービス

高齢者の介助をする介護士

要介護4では介護保険サービスを利用して、以下のサービスを受けることができます。

内容 サービス名
自宅で受けられるサービス 訪問介護(ホームヘルプ)
訪問入浴
訪問看護
訪問リハビリ
夜間対応型訪問介護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
自施設に通う 通所介護(デイサービス)
通所リハビリ
地域密着型通所介護
療養通所介護
認知症対応型通所介護
訪問・通所・宿泊が合わさったサービス 小規模多機能型居宅介護
看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
短期間の宿泊 短期入所生活介護(ショートステイ)
短期入所療養介護
施設入居 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
介護老人保険施設(老健)
介護療養型医療施設
特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホームなど)
介護医療院
小規模施設に入居 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
地域密着型特定施設入居者生活介護
福祉用具の使用 福祉用具レンタル
特定福祉用具販売

 

要介護4で利用できるサービスの利用回数の目安

介護サービスは、区分支給限度額という上限額の範囲内で利用することができます。

限度額を超えてサービスを利用した場合は自己負担となりますので、利用回数を調整する必要があります。

要介護4の区分支給限度額で利用できる介護サービスの利用回数の目安は以下の通りです。

・訪問介護:週6回
・訪問看護:週2回
・通所介護、通所リハビリ:週2-3回
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護:毎日1回
・福祉用具レンタル:車いす、特殊寝台・特殊寝台付属品

要介護4で受けられる給付金制度

要介護認定を受けると、介護サービスを利用する際に限度額の範囲内で負担額の一部が援助されます。支給限度額(保険給付)は、要介護度に応じて上限が定められていて、要介護4の場合の支給限度額は、1ヶ月あたり最大で30万9380円です。

介護サービス利用料は、所得に応じ1割〜3割が自己負担となります。

要介護4では、サービス利用料が1ヶ月30万9380円の上限額を超えた場合、その超過分は全額自己負担となります。

要介護4の区分支給限度額
309,380
自己負担の割合 1割 2割 3割
自己負担額 30,938円 64,612円 92,418円

介護費用を軽減するために、要介護4で受けられる給付金制度・控除制度には、主に以下のようなものがあります。

・高額介護サービス制度
・障がい者控除
・紙おむつ給付とおむつ代助成制度
・住宅改修補助制度

要介護4の給付金制度について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

まとめ

・要介護4は、食事や排泄、入浴などの日常生活において全面的な介助が必要な状態です。ご本人にも支援者(介護家族・ビジネスケアラー)にとっても、介護時間や費用において、かなりの負担がかかってきます。

ご家族だけで介護を行おうと無理をするのではなく、ケアマネジャーや自治体に相談し、第三者の力を借りることをおすすめします。 

・要介護4は特養への入居が可能です。
・介護保険制度は1ヵ月あたり309,380円まで利用できます。
様々な給付金制度、控除制度が受けられるため、ケアマネジャーや自治体に早めに相談をしましょう。

 

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この記事の監修者

回答者アイコン金山峰之(かなやま・たかゆき) 介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。 厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。 元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。

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