介護サービスを受けるにあたって必要な要介護認定の申請。自分の親が病気やけがで介護が必要な状態になってはじめて検討する人も多いのではないでしょうか。この記事では、要介護認定の仕組みや受けるための申請方法の流れについて、わかりやすく説明しています。
65歳以上になると交付される「介護保険被保険者証」を持っているだけでは介護保険サービスは受けられません。必要なサービスを受けるにあたって、支援や介護が必要な状態であるかどうか、どの程度必要であるかの判定を行うのが要介護認定です。
判定は「非該当(自立)」と「要支援」、「要介護」に分けられます。それぞれの違いと区分は次のとおりです。
要支援 | 要介護 | ||
区分 | 非該当(自立) | 要支援1.2 | 要介護1~5 |
状態の違い | 日常生活は自立。 | 日常生活動作はほとんどひとりで行えるけれども、入浴、洗濯、掃除などの一部の支援が必要 | 寝たきりや認知症などで、自身で日常生活動作を行うことが難しく、常に介護が必要 |
表1 要支援と要介護の違い
要介護および要支援は介護保険制度における介護サービスを利用できますが、介護保険の給付範囲内で利用できる金額はそれぞれの判定によって異なります。
また、要支援は介護予防サービスとなり、入所サービスは利用できないなど、区分によって利用できるサービスなどが異なります。
主治医(かかりつけ医)の意見書および、心身の状況に関する基本調査をもとにコンピューターによって行われる一次判定と介護認定審査会での二次判定とで認定されます。
一次判定では次の5つの基準によって、どのくらいの介護時間が必要かという要介護認定等基準時間が算出されます。算出された時間と認知症加算の合計で判定が出る仕組みです。
判定により、「非該当(自立)」「要支援1.2」「要介護1~5」の8つに分けられます。要支援よりも要介護、さらに数字が大きくなるほど介護度は重くなります。
各区分の状態や支給限度基準額などは次のとおりです。
日常生活の状態 | 利用できるサービス | 要介護認定等基準時間(または相当すると認められる状態) | 支給限度基準額(月) | |
非該当 | 自立 | 介護予防・生活支援事業サービス | なし | 0円 |
要支援1 | 一部支援が必要 | 介護予防サービス | 25分以上32分未満 | 50,320円 |
要支援2 | 部分的な介助が必要(介護予防サービスにより機能の維持・改善が可能) | 32分以上50分未満 | 105,310円 | |
要介護1 | 部分的な介助が必要 | 介護サービス | 32分以上50分未満 | 167,650円 |
要介護2 | 軽度の介助が必要 | 50分以上70分未満 | 197,050円 | |
要介護3 | 中等度の介助が必要 | 70分以上90分未満 | 270,480円 | |
要介護4 | 重度の介助が必要 | 90分以上110分未満 | 309,380円 | |
要介護5 | 全面的に介助が必要 | 110分以上 | 362,170円 |
表2 要介護・要支援早わかり表
認定を受けるためには、まずは申請が必要です。次の流れで行います。
希望のサービスを利用するまでの流れは次のとおりです。
区分 | ケアプランの作成 |
要介護 | 【介護サービス】
・自宅で介護サービスを受けたい(在宅サービス) 居宅介護支援事業者のケアマネジャー(介護支援専門員)を決定します。ケアマネジャーがケアプランを作成してサービス開始となります ・介護保険施設に入所したい(施設サービス) 希望する施設に連絡します。施設のケアマネジャーがケアプランを作成して入所となります |
要支援 | 【介護予防サービス】 ケアプランは地域包括支援センターで作成します |
非該当 | 【介護予防・生活支援事業サービス】 ケアプランは地域包括支援センターで作成します |
表3 要介護認定の区分ごとのケアプラン作成
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現在の心身の状態に適した介護サービスが利用できるように、要介護認定の有効期限が決められています。
有効期限を過ぎてしまうと、介護サービス費用が全額自己負担となってしまうため、有効期限前に更新手続きが必要です。有効期限60日前位以降から申請が可能となります。手続き完了まで時間を要するので、早めに申請しましょう。
有効期限は、原則として、初回は6ヶ月、次回は12ヶ月です。状態が安定している場合は最長4年になることもあります。状態が変化しやすい進行性の病気にかかっているときなどは有効期限が短縮されることもあります。
「病気やケガをして以前のように日常生活を送りづらくなっている」「退院して家に帰ることになったけれども、助けが合った方がいいのではないか」などの状況があったときに、親のか要介護認定を考える方も多いと思います。
この時にネックになりやすいのが、親が介護認定調査を拒否するケースです。
こういったケースの場合、大切になるのが「相手目線の伝え方」です。一方的にこちらの「受けてほしい」という要求を押し通すように言い続けても相手の心には響きません。相手がなぜ拒否しているのかを相手の立場に立って考え、気持ちに寄り添う姿勢が必要です。
伝えたい内容を相手にわかりやすいように「より具体的にわかりやすく精査する」こと、さらに、あなたが困るからではなく、I(アイ)メッセージで「私が安心するから」という伝え方をするなど、相手に合わせた柔軟な対応も必要となるでしょう。
こちらの記事で、介護認定調査を嫌がる親への具体的な伝え方を詳しく説明しています。
「介護認定調査も嫌がる親!相手目線に立って言い方を工夫する」
介護度の結果が出るまでには時間を要します。家族に支援が必要だと感じたときに、スムーズに介護サービスに移行できるように、前もって流れを把握しておくことをおすすめします。ぜひ、本記事の内容をご活用ください。
木場 猛(こば・たける) 株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー)
介護福祉士 介護支援専門員 東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 国内ビジネスケアラーデータ取得数最多の仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ監修や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。 3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。
著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』
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