#家族介護のコツ

介護体験エッセイ第12回【伝え方の工夫1】介護認定調査も嫌がる親!相手目線に立って言い方を工夫する

#家族介護のコツ

第十二回

「ビジネス思考」で介護を乗り切る体験エッセイ『今日も私はシゴトを辞めない!』

「突然親が倒れた! シゴトと介護の両立はできるのか!?」

母も父も突然倒れ、いきなり同時多発介護になった独身ワーキングウーマン・中村美紀50歳。

まるでわからない介護なのに、父母の容態が変わるたびに次々と起こる問題に、仕事一筋の経験を活かした「ビジネスフレームワーク」を使って、なんとか解決策をひねり出し、乗り切っていくコミカルな体験物語。

【伝え方の工夫】大変な親の介護。家族や親族の協力を仰ぐには、どのように伝えればいい?

人の協力は簡単に得られない「伝え方」が大事だと学ぶ

然親が倒れ、介護になってから約3年が経ちました。
時が経つのは早いものです。
思い返すと、両親ともに介護になってしまったのもあり、何度か「もうダメだ〜」と思うことがありました。
「介護は一人で抱え込まないことが大事」とはよく言われます。専門家に頼るのはもちろん、親族や家族の協力を得られるに越したことはありません。
仕事中心の生活を送っている私は、それまで親族や家族ともやや疎遠でしたが、今では積極的に働きかけ、協力を仰いで乗り切っています。特に親の容態が変わると、日常生活への影響が大きく、自分ひとりで対応しようとするとすぐ潰れそうになるので、もう必死です。
「使えるものは身内でも使う」精神で、身内を巻き込んで、這って前に進んでいる感じです。もちろん、巻き込まれた親族や家族が、全て受け入れてくれるわけではありません。断られたり、協力してくれたり。
その中で大事だと身に染みているのが「伝え方」です。

今回は、私が失敗の中から学んだ「伝え方」についてお伝えしようと思います。
 

「相手の立場に立って伝えないといけない」

ケース① 細かく指示を伝える

手術後の母に大きな麻痺が残り、介護施設に入居する、となった時のこと。入院先の病院から、入居する介護施設をなるべく早く決めて欲しいと言われ、「ひとりで探して決めるのはムリ〜」と焦り、姉に協力を仰ぎました。
姉は「協力するよ」と言ってくれたものの、しばらくしても動いてくれる気配なし。「なんで動いてくれないの〜」と姉に聞くと、「何すればいいのかわからない」という返事でした。
えー!
仕事脳の私は、ゴールが設定されれば、自分なりに自由に解決策を見つけて動くのが好きなのですが、姉は違った!歴30年のベテラン主婦です。細かい指示が欲しかったようです。
すぐに、行政サイトに掲載されている介護施設一覧と、いくつかの有料老人ホーム検索サイトの情報を伝え、「通える距離で、支払えそうな金額設定の介護施設を、5~10ピックアップして欲しい」と、行なって欲しい作業を具体的に伝えました。
それからの姉はすごかった。資料請求を行い、該当する施設が多い中で自らの判断基準を設定し、10前後の介護施設候補をパッとあげてくれました。姉が施設を選んだ理由も聞いて納得。私は「自分の伝え方が悪かった」と反省しました。

ケース② 一番してほしいことをきちんと伝える

両親の介護で精神的に追い詰められ、私自身が体調を崩してしまったときのこと。
睡眠にも食事にも支障が出てきて「ひとりで乗り越えるのはムリ〜」となり、近所に住む叔母に協力を仰ぎました。叔母は「協力するよ」と言ってくれたものの、泊まりに来て数日世話を欲しいと伝えると「それは嫌」という返事。「なんで〜」と聞くと「人の家に泊まるのが嫌い」とのことでした。
えー!
そこで、一番して欲しいことは「泊まること」ではなく「食事の世話」だと切り替え、「食事のケアだけでもなんとかならない?」と伝えてみました。すると「それならいいよ」と受け入れてくれました。叔母は家に来ると、私の様子をみて「思ったよりヒドイ」と思ってくれたのか、結局泊まって世話をしてくれたのです。
▲私は国家資格キャリアコンサルタント兼キャリアカウンセラーでもあります。「話すこと」はプロのはずなのに。反省です。

「伝え方」を「話し手」「受け手」「会話内容」で整理する

私は国家資格キャリアコンサルタントであり、キャリアカウンセラーの資格も有しています。
クライアントと呼ばれる相談者との会話については、「話し手目線(私)」「受け手目線(相談者)」「会話内容」と分けて学んでいきます。この考え方を参考に、なぜ失敗し、なぜ協力を得られたのか、私なりに考えてみました。

「話し手目線の工夫」

「何を」お願いしたいのか、はっきりさせないと理解してもらえないことがわかりました。合わせて「なぜ」お願いしたいのか理由も伝えることで、納得感を得られるように伝えるのも大事だと気づきました。

「話す内容の工夫」

相手に「できそう」と思ってもらうよう、作業イメージが湧く程度の具体化が必要と学びました。

「受け手目線の工夫」

何をすればいいのか具体的にイメージはわかるものの、「それは嫌」と思われるケースもあります。その場合を想定して、相手に合わせて変えるスタンスを持ち、最終的には、「話し合って決める」といいのだろうと思いました。
▲失敗を繰り返した結果、「結局は自分の伝え方次第」と思えるようになりました。

人だもの。やっぱり「伝え方」って大事 

前提として、協力を得られるかどうかは、親本人がそれまで家族や親族にどう思われていたかによって大きく左右される、という部分があるのも無視できません。
その点では、親のために協力を仰いだ際の家族や親族の反応によって、それまでの親の生き様が垣間見える、とも言えます。
私の場合は、親への協力を得られやすい場合は「親を助けて」、親への協力を得られにくい場合は「私を助けて」と、なんとか協力を得られるように工夫して伝えました。
また、「(親のために)協力したい」と思ってくれているのに、私の伝え方で断られるのは、親に申し訳ない、と必死でした。結局、失敗から学んだこの「伝え方の工夫」は、介護に限らず人と協働するシーンでは有効だと気づき、仕事にも活かしています。介護経験が仕事に活かせるなんて。経験全て勉強なり、です。
 これで、ひとまずシゴトを辞めなくてすみそうです。
ひとつひとつ山を乗り越え、今日も、心の中で叫びます。
「こうして私はシゴトを辞めない!」
 

まとめ

  1. 介護は一人で抱え込まないよう、周りの協力を仰ぐことが大事。専門家はもちろん、家族や親族の協力が得られると尚心強い。
  2. 身内の協力を仰ぐときに問われるのは、それまでの関係性。自分だけでなく、それまでの親の印象で協力が得られるか否かが決まることも。
  3. そうだとしても、少なくとも「伝え方」で失敗はしたくない。なるべく協力を得られるよう工夫できることはしたいところ。
  4. 「伝え方」は「話し手」「受け手」「話す内容」で分けてとらえると整理しやすそう。
  5. 「人は人と関わって生きていく」と考えると、自分なりの「伝え方」を工夫して損はないはず。そう思って必死に失敗から立ち上がろう(と自分に言い聞かせる)
▼関連記事:「ビジネス思考」で介護を乗り切る体験エッセイ『今日も私はシゴトを辞めない!』
【現状把握】親の「ヒト事情(交友関係)」を把握する
 
●筆者プロフィール
中村美紀
クリエイティブコンサルタント・編集ディレクター
(株)リクルート フロム エーおよび(株)リクルートに20年在籍。「フロム・エー」「タウンワーク」「とらばーゆ」「注文住宅」など、副編集長・デスクとして10以上のメディア実績を持つ。2012年に独立。紙・WEBメディア設計、編集コンテンツ企画制作、クリエイティブ研修講師、クリエイティブ教育・組織コンサルタントなどで活動中。国家資格キャリアコンサルタント、米国CCE,Inc. GCDF-Japanキャリアカウンセラーでもある。
HP https://miki-nakamura.com/
介護ブログhttps://oyakaigo.miki-nakamura.com/
この記事は専門家に監修されています
 介護プロ
木場 猛(こば・たける)

株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー)
東京大学文学部卒業。2001年の在学中から現在まで22年以上にわたり、介護士・ケアマネージャーの現場職として、2,000世帯以上のご家族を担当し、在宅介護、仕事と介護の両立支援に携わる。
著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』https://amzn.to/3ryjZNg

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