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介護保険の認定調査でのコツはある? 正しく認定してもらうために心がけておきたいこと

介護保険要介護・要支援認定申請書 #介護の準備

介護保険の認定調査は、要介護認定を受けるために必要な訪問調査で、申請者のご自宅や施設などを訪れて、調査員が様々な調査を行います。

どのように評価されるのか不安になったり、うまく答えられずに緊張してしまったり、できないことをがんばってやってしまったり….認定調査日にまつわる後悔談や失敗談は少なからずあります。

今回は、そんな介護保険の認定調査で後悔しないよう、当日までに準備しておくべきことや心がけておきたいこと、家族ができるコツなどを紹介していきます。

 

介護認定調査とは?

介護認定調査とは、要介護・要支援認定の申請をした後に行われる調査のことで、「訪問調査」と呼ばれることもあります。原則として申請後1〜2週間以内に、自治体からの調査員や委託を受けた地域のケアマネジャーがご自宅や入居されている施設などを訪れ、全国共通の調査票をもとに申請者の心身状態を確認します。

 

調査票は、74項目に及ぶ基本調査と特記事項からなっており、調査員は項目ごとに状態の評価をしていきます。一般的な調査所要時間は、約1時間。

 

この認定調査時の結果は、後に行われる要介護度の区分判定に重要な役割を持っています。

誤った要介護認定が出てしまうと、必要とする介護サービスを受けることができなくなるケースも生じます。適切な介護度判定をしてもらうためにも、認定調査日は調査員にしっかりと現状を把握してもらう必要があります。

 

調査員の方のヒアリング方法には個人差がありますし、人間同士なので相性の良し悪しもあります。申請者とそのご家族は、初めて出会う調査員に対し、約1時間という短い時間の中で正確に状態を伝える努力が求められます。

 

介護保険の認定調査のコツ

家族が高齢な親に立ち会う様子

認定調査で大切なのは「現在の状態を知ってもらう」ということです。そのために、当日はどんなことを心がけておくと良いのでしょうか?知っておきたい認定調査のコツを見ていきましょう。

 

必ず家族が立ち会うこと

介護認定調査当日は、申請者ご本人だけではなく、ご家族もできるだけ立ち会いましょう。

例えば認知症の場合は、ご本人が質問に対して正確に答えられなかったり自覚がなかったりする可能性があります。また、ご本人の認識とご家族の間に認識のズレがある場合もあります。ご家族が同席していれば、思い出せないことはアシストし、違っていることは訂正することができます。

 

さらに、認定調査では「どれだけ介護が必要か」を測るために、実際の介護状況をよく知る支援者(介護家族・ビジネスケアラー)からの情報も大変重要です。客観的な立場から、現在の介護の状況を伝えるよう心がけてみてください。

もちろん、家族が全て同席することは難しい場合もあるでしょう。初回はともかく、介護認定更新時の認定調査で家族の立ち会いが難しい場合は、ご本人の普段の様子をよく知ってくれているケアマネジャーや介護専門職などに立ち会いを依頼することもできます。事前に相談してみると良いでしょう。

 

現在の身体状況を正直に伝えること

高齢者の方の中には、体裁を気にしたり頑固になってしまい、普段はできないことを「できる」と言ってしまったり、無理にがんばってやってしまったりする方もいらっしゃいます。事実とは異なる回答を重ねると、介護状態が軽いと判断されてしまう可能性もあるので、プライドや体裁を気にせず、できないことは「できない」とありのままを正直に伝えましょう。

逆に、介護度を上げてもらおうとして大袈裟に状況を伝えてしまうと、もうひとつの判定要素となる医師の意見書と内容が合わなくなり再審査となる場合もあるので、オーバーな表現も控えましょう。

 

また、認知症の方や高齢者の方の中には症状に波があり、調査時に症状が現れないということもしばしば起こります。同席されているご家族の方は、調査時に見られない普段の症状もしっかり伝えてください。

 

困っていることを具体的に伝えること

調査員へ「介護が必要で困っている」と言うだけでは、なかなか現状が伝わりません。ご本人が困っていること、支援者(介護家族・ビジネスケアラー)が困っていることを、できるだけ具体的に説明できるよう心がけてください。

 

具体例としては、「足が弱くなって、トイレも手すりがないと立ち座りができない」「介助がないと自分で起き上がることが難しくなった」「バスタブが跨げなくなって家族がいつも支えている」「1日のうち10回くらい同じことを聞くようになった」「自宅が狭くて車椅子が使えない」などです。

誰がどんな介護をしているのか、どんなトラブルがあるのかなど、頻度や具体例があると調査員が現状を把握しやすくなるだけでなく、基本チェック項目以外の特記事項欄に記載してもらいやすくなります。

 

調査時は、緊張や不安でとっさの質問に答えられなかったり、伝えたかったことを言い忘れていたりしがちです。認定調査の時間は短いので、時系列に沿った行動のメモや介護記録を、前もって準備しておくと便利です。

 

調査内容を理解しておくこと

認定調査時のチェック項目は、74項目に及びます。質問形式で返答するものや、実際に動いて動作確認されるものもあります。

当日にどんなことを聞かれるのか知っていれば、気持ちに余裕ができ、返答も的確かつスムーズに行えます。

 

例えば「座位保持ができますか?」と聞かれた時、とっさに思いつくのは座れていることに対して「できます」「できません」のどちらかになりがちです。しかし気持ちに余裕があると、「座ることはできているけど、手で支えて座っていることが多いです」という具体例を伝えることができるようになります。

 

調査日までに実際の調査票へ1度目を通して返答のシミュレーションをしておきましょう。
調査票の詳細については後述していきます。

 

介護保険の認定調査でやってはいけないこと

今後の介護生活のことを考えると、より多くの介護サービスが利用できるよう、なるべく高い介護度で認定されたいと思ってしまうかもしれません。だからといって、実際の状況よりも悪く説明したり大袈裟な表現をしてしまうと、逆効果となることがあるので、注意しておきましょう。

 

実際の介護度よりも高い認定を受けると、介護サービスを過度に受けることになり、自力で行動することが減ってしまいます。結果的に、かえって早く介護度や認知症が進行したり、身体機能が低下することもあるのです。

 

現状に適した介護サービスを受けるために、認定調査では間違った判定を導くような言動をしてはいけません。

 

主治医の意見書について

医者・医療・病院・診察

認定調査時の結果は、一次判定の材料となります。続く二次判定では、一次判定の結果と医師の意見書と調査員の特記事項を元に、認定調査委員による話し合いが行われ、介護度区分が決定します。

 

医師の意見書は、二次判定時の要素として重要な役割を持っています。そのため、普段から申請者ご本人の状態をよく知り、なおかつ支援者(介護家族・ビジネスケアラー)の方の介護状況を理解しているかかりつけ医に書いてもらうことが大切です。

医師の意見書を書いてもらう際には、ご本人の身体状況を診てもらうだけではなく、ご家族も同席し、どんな介護サービスを必要としているのか、現在のどんな介護をしていてどんな苦労があるのかをしっかり伝えましょう。

 

医師の意見書の作成時でも、ご家族のサポートは必要不可欠です。

 

介護保険の認定調査内容

認定調査は、自治体の職員もしくは委託された地域のケアマネジャーが全国共通の認定調査票を元に調査を行います。

認定調査票の主な内容

調査カテゴリー主な質問項目
概要調査
  • 現在受けているサービス内容の確認
  • 現在の環境状況の確認 (家族の有無や居住空間、傷病、既往歴など)
基本調査
  • 身体機能・起居動作(20項目)
  • 生活機能(12項目)
  • 認知機能(9項目)
  • 精神・行動障害(15項目)
  • 社会生活への適応(6項目)
  • 過去14日に受けた特別な医療について(12項目)

身体状況を評価する実際の基本調査票も見ておきましょう。

74項目全ての調査票は、こちら(厚生労働省「改正後(新)認定調査票(概要調査票)」)からダウンロードしてご確認ください。

また、特記事項に関する調査票は以下のような内容です。

特記事項の調査票は、こちら(厚生労働省「認定調査票(特記事項)」)からダウンロードが可能です。

 

まとめ

  • コツその1:認定調査日はご家族が立ち会うこと
  • コツその2:現在の身体状況はもちろん、当日出ていない症状も正直に伝えること
  • コツその3:困っていることを具体的に説明するためメモを残しておくこと
  • コツその4:認定調査票を確認し、当日聞かれる事項の返答シミュレーションをしておくこと

 

介護保険サービスを利用するために必ず通らなければならないのが、要介護認定を申請した後の認定調査を受けることです。

適切な介護度の判定を受けるには、申請者ご本人だけでなく、ご家族のアシストが鍵を握ります。認定調査日は、できるだけご家族同席のもと、正直にありのままの現状を伝え、介護記録メモや聞き取り項目を知っておくなどの事前準備をしておくことがポイントです。

 

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この記事は専門家に監修されています
 介護プロ
金山峰之(かなやま・たかゆき)

介護福祉士、社会福祉士、准看護師。福祉系大学卒業後、20年近く在宅高齢者介護に従事。現場専門職の傍、介護関連の講師業(地域住民、自治体、国家公務員、専門職向け等)や学会のシンポジスト、介護企業向けコンサルティング事業、メーカー(ICT、食品、日用品等)へシニア市場の講演などを行っている。
厚生労働省関連調査研究事業委員、東京都介護人材確保関連事業等委員など経験。
元東京都介護福祉士会副会長。政策学修士。

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