在宅介護とは?受けられるサービスや限界を感じた時の対処方法など分かりやすく解説

在宅介護とは?受けられるサービスや限界を感じた時の対処方法など分かりやすく解説

「在宅介護を考えたいけど可能か分からない」
「在宅介護ってどんなサービスが受けられるんだろう」
ご自身やご家族の介護を考えた時、こんな疑問が浮かぶ方もいらっしゃるでしょう。
今回は在宅介護を受ける方が利用できるサービスを中心に、在宅介護の特徴や介護中に出てくるお悩みについても徹底解説していきます。

在宅介護とは

在宅介護とは、要介護認定を受けた方が自宅で介護を受けることを意味します。
老人ホームなどの施設ではなく、住み慣れた自分の家で暮らし続けたいと願う要介護者の方を、ご家族などが協力し介護をしていきます。
ご本人もご家族も「自宅で介護が可能なのか?」と悩んでしまうこともあるでしょう。
確かに状況によっては在宅介護を選ぶのが難しい場合もあります。
しかし、現在はサービスの内容が多様化し充実しているので、活用次第で在宅介護の負担を減らすことができます。

在宅介護で受けられる介護保険サービス

在宅介護でも様々な介護保険サービスを利用することができます。
要介護認定を受けた方の状況によって利用した方が良いサービスが変わってきますので、まずはそれぞれどのようなサービスなのか内容を確認していきましょう。
今回は分かりやすいように6つの種類に分けてご紹介します。

 

訪問型介護サービス(訪問型看護サービスも含む)

訪問型介護サービスは、要介護認定を受けている方の自宅に訪問介護員(ホームヘルパー)や看護職員、介護士などが訪問し提供するサービスです

訪問型介護サービス サービス内容
訪問介護

(ホームヘルプ)

訪問介護員(ホームヘルパー)が要介護認定を受けた方の自宅を訪問して、買い物や掃除などの生活支援・食事や排泄の介助などの介護を行う。

ホームヘルパーが支援を行う範囲は法律で決められているので、ご家族の洗濯や掃除など直接ご本人に関わらないことなどできないことがある。

訪問入浴介護 看護職員と介護職員が利用者の自宅を訪問して、持参した移動式浴槽を用いて入浴などを行う。

体を拭く清拭や部分浴のサービスも提供する。

訪問看護 看護師などが利用者の自宅を訪問して、主治医からの訪問看護指示書に基づき、医療処置、カテーテルなどの医療機器の管理、診療の補助、病状のチェック、在宅での看取りなどを行う。

訪問看護指示書がないと受けられないサービスで、訪問介護よりも医療の専門的なケアに重きを置く。

訪問リハビリテーション 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などが利用者の自宅を訪問して、リハビリテーションを行う。

歩行訓練や離床促進など機能回復のための訓練を行うだけでなく、失語症の方に向けた機能改善、自宅の環境整備やその助言も提供する。

居宅療養管理指導 医師・歯科医師・薬剤師・栄養士など専門職が自宅を訪問して、病気の予防、診察などの医学的管理、軽病に関する医師の管理、口腔ケア、栄養指導など、医療的な管理や指導を行う。
夜間対応型訪問介護 ホームヘルパーが夜間帯に利用者の自宅を訪問して、定期巡回または随時巡回を行う。

緊急の場合には利用者が通報できる仕組みがあり、通報を受けるたびに訪問してくれるサービスもある。必要な時は訪問介護と同じような支援を受けられる。

※要支援1〜2の方は受けられない

※地域密着型サービスのため事業所がある市区町村に住民票がある方のみ受けられる

定期巡回・随時対応型訪問介護看護 ホームヘルパーと看護師が連携して、利用者の自宅への定期的な巡回や随時通報への対応など24時間365日必要なサービスを必要なタイミングで柔軟に行う。

緊急の場合には利用者が通報できる仕組みがあり、すぐに駆けつけてくれるサービスがある。

※要支援1〜2の方は受けられない

※地域密着型サービスのため事業所がある市区町村に住民票がある方のみ受けられる

 

通所型介護サービス

通所型介護サービスとは、要介護認定を受けている方が施設に通うことで受けられるサービスのことです。

通所型介護サービス サービス内容
通所介護

(デイサービス)

通所介護の施設(デイサービスセンターなど)にて、食事や入浴などの生活支援、生活機能向上のための機能訓練、口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供する。

定期的に利用することで、利用者の気分転換や介護者の休息のために役立つ。

※要支援1〜2の方は受けられない

※要支援1〜2の方は2017年4月より「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」にて通所介護を受けることができる

通所リハビリテーション(デイケア) 通所リハビリテーションの施設(老人保健施設、病院、診療所など)にて、食事や入浴などの生活支援、生活機能向上のための機能訓練、口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供する。

施設内に医師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護職員などがいて、デイサービスよりも医療ケアに重きを置く

地域密着型通所介護 通所介護の施設(デイサービスセンターなど)にて、食事や入浴などの生活支援、生活機能向上のための機能訓練、口腔機能向上サービスなどを提供する。

看護職員が常駐していることも多い。

※要支援1〜2の方は受けられない

※地域密着型サービスのため事業所がある市区町村に住民票がある方のみ受けられる

療養通所介護 常に看護師による観察が必要とされる難病・認知症・脳血管疾患後遺症などの重度要介護者、またはがん末期患者を対象に、生活機能向上のための機能訓練、口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供する。

※要支援1〜2の方は受けられない

※地域密着型サービスのため事業所がある市区町村に住民票がある方のみ受けられる

認知症対応型通所介護 認知症の利用者が通所介護の施設(デイサービスセンターやグループホームなど)に通い、生活支援、生活機能向上のための機能訓練、口腔機能向上サービス、認知症の専門的ケアなどを日帰りで提供する。

※地域密着型サービスのため事業所がある市区町村に住民票がある方のみ受けられる

 

宿泊型介護サービス

宿泊型介護サービスは、要介護認定を受けた方が緊急時や家族の事情などによって一時的に施設に入所するサービスです。入居者と同じサービスを受けることができます。

宿泊型介護サービス サービス内容
短期入所生活介護(ショートステイ) 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などが日常生活上の支援や機能訓練などを提供する。

1日からでも入所することが可能で、連続利用日数は30日まで。

短期入所療養介護

(医療型ショートステイ)

医療機関・介護老人保健施設・介護医療院が日常生活上の世話、医療、看護、機能訓練などを提供する。

医療的な側面が強いので、自宅での生活に不安がある方が利用する場合が多い。

1日からでも入所することが可能で、連続利用日数は30日まで。

 

訪問・通所・宿泊の複合型介護サービス

これまでご紹介した、訪問型・通所型・宿泊型が複合したサービスもあります。

複合型サービス サービス内容
小規模多機能型居宅介護 ひとつの施設を拠点とし、利用者の選択に応じて訪問・通所・短期入所サービスを組み合わせ、日常生活上の支援や機能訓練を提供する。

柔軟なサービスが受けられるが、このサービスを受けている時には、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・福祉用具以外のサービスは利用できない。

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス) ひとつの施設を拠点とし、利用者の選択に応じて訪問・通所・短期入所サービス、更に看護職員による訪問看護を組み合わせ、日常生活上の支援や機能訓練を提供する。

医療と介護がより必要な方が対象。

柔軟なサービスが受けられるが、このサービスを受けている時には、訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・福祉用具以外のサービスは利用できない。

 

福祉用具、住宅改修サービス

要介護者認定を受けた方が、ご自宅で日常生活を送るために必要な環境を整えるサービスもあります。

その他サービス サービス内容
福祉用具貸与 利用者の希望や生活環境をふまえて適切な福祉用具を選ぶための援助・取り付け・調整などを行い、福祉用具を貸与する。

車いすや介護ベッドなど大きなものをレンタルすると負担を大きく減らすこともできる。

特定福祉用具販売 利用者が入浴や排泄に用いるものなど共有しづらいもので購入を検討しているものを販売する。
住宅改修費支給 利用者の自宅で介護に必要な小規模の改修(手すり、段差解消など)を行う。

費用の負担の7〜9割が保険で支給されるが、支給額の上限が20万円で工事の前に申請が必要。

 

ケアマネージャー

ケアマネージャーが、要介護認定を受けた本人やその家族の希望や現在置かれている環境を加味して、ケアプランを作成します。その後サービスの利用状況を確認して、プランに基づいた適切なサービスが行われるように事業者との調整も行ってくれます。

*詳しくはこちらから→ケアマネージャーとは?

 

在宅介護で受けられる介護保険外サービス

介護保険適応外のサービスは全額自己負担です。金額はもちろん上がってしまいますが、より幅広いサービスが受けられたり、緊急時も頼りになったりと役立つ時があります。主なサービスの内容としては、紙おむつの支給や外出支援、寝具の洗濯、理髪サービスなどです。市区町村の事業所やNPO法人、ボランティア団体が行っているものもあるので、事前に調べておきましょう。

また、市区町村の事業所では「介護予防・日常生活支援総合事業」を行っています。
2017年4月から実施されている予防介護事業で、訪問型サービスと通所型サービスがあります。要支援認定1〜2の方と65歳以上の誰でも利用することができ、高齢者や要支援認定を受けた方の自立をサポートする事業です。生活支援やデイサービスなどのサービスを受けることができます。

 

在宅介護で受けられる医療サービス

自宅にいながら診察を受けることができる在宅医療についても、在宅介護の際に必要になってくるサービスでしょう。本人や家族から依頼を受けた医師が自宅を訪れ診察や健康観察を行う往診や、診察計画に基づいて定期的に医師や看護師が定期的に自宅を訪れ検診や健康観察を行う訪問診療など、公的医療保険で受けることができます。

また、1ヶ月の医療費の自己負担額が限度額を超えた場合、高額療養費制度を申請することで超過分の払い戻しを受けられます。限度額は本人の年齢や所得に応じて変化するのであらかじめ調べておくと良いでしょう。

 

介護保険サービスを受けるまでの流れ

在宅介護で介護保険サービスを受けるためには、必ず「要介護認定」を受ける必要があります。介護保険サービスを受けるまでの大まかな流れは下記の通りです。

  1. 要介護認定の申請(申請には「介護保険被保険者証」が必要です)
  2. 認定調査・主治医意見書(申請者意見書作成料の自己負担はありません)
  3. 審査判定
  4. 認定(申請から認定の通知までは原則30日以内に行われます)
  5. サービスの選択
  6. 介護サービス計画書(ケアプラン)の作成
  7. サービス利用開始

介護保険サービスを利用するためには、必ず要介護認定が必要なので申請を忘れずに行いましょう。

*詳しくはこちらから→介護保険サービスとは? 内容と種類を解説!

 

在宅介護を検討するタイミング

現在は様々なサービスが充実しているので、在宅介護を選択肢のひとつにすることも可能になってきています。在宅介護をやっていこうと決めるタイミングはいつなのか、それも悩みどころですよね。

在宅介護保険サービスは、要介護認定の申請からサービスの利用開始まで約1ヶ月ほどかかってしまいます。そのことを念頭において検討していきましょう。

 

*詳しくはこちらから→【Q&A】もし、高齢の家族が入院したらどうする?退院後、在宅介護が始まるかもしれないときに準備しておくべきこととは

 

在宅介護の限界を感じた時に

在宅介護は本人や家族だけで頑張らず、サービスをうまく利用していくことが非常に重要です。それでも、毎日の介護に限界を感じてしまう場合も出てくるかもしれません。

その時に行ってほしいのは、ケアプランの見直しです。

ケアマネージャーに、現在の本人や家族の状況を相談し、より最適なプランへと改善していくことがとても重要になります。介護の負担が大きすぎる場合、サービスを追加することも検討もしていきましょう。

適切なケアプランを相談していくために、日頃からケアマネージャーに状況を報告しておくことも大切です。

介護を行う側の負担を減らすレスパイトケアという考え方も広まってきていて、介護を行う家族の立場に立ったプランを考えてくれます。ケアプランの見直しにも通じることですが、周りにいらっしゃる介護経験者の方や訪問サービスのスタッフの方々、各市区町村の相談窓口など、話しやすい方に相談してみることもとても大切です。愚痴や悩みは話しづらいこともあるかもしれません。ですが、ひとりで抱え込むのではなく、周りの方に話すことで精神的負担が軽くなり、リフレッシュ効果を得られる可能性もあります。

*こちらも参考に→親に合う介護施設をどう探す?

 

まとめ

  • 在宅介護で受けられる介護保険サービスには、訪問型・通所型・宿泊型・各種複合型サービスと福祉用具・住宅改修サービス、ケアマネージャーによるケアプラン作成のサービスがある。
  • 介護保険サービス以外にも、市区町村の事業所で介護予防・日常生活支援総合事業が行われていたり、介護保険外サービス、医療サービスもある。
  • 介護保険サービスを利用するには要介護認定が必要。
  • 介護保険サービスを利用するには1ヶ月ほどかかる。
  • 在宅介護に限界を感じた時には、ケアマネージャーにケアプランの見直しを相談したり、第三者に相談することが大切。

 

在宅介護は本人にも家族にも負担が大きいイメージがあるかもしれません。
ですが、今は様々なサービスが充実しています。当事者だけで抱え込まず、必要に応じてうまく利用することで、自宅に住み続けられる可能性があります。

介護を受ける方もそのご家族も、自分たちにとってベストな環境を作るためにも、サービスの内容をしっかり確認しておいてくださいね。

この記事の監修者

回答者アイコン木場 猛(こば・たける) 株式会社チェンジウェーブグループ リクシスCCO(チーフケアオフィサー) 介護福祉士 介護支援専門員 東京大学文学部卒業。高齢者支援や介護の現場に携わりながら、 国内ビジネスケアラーデータ取得数最多の仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」ラーニングコンテンツ監修や「仕事と介護の両立個別相談窓口」相談業務を担当。 3年間で400名以上のビジネスケアラーであるご家族の相談を受けた経験あり。セミナー受講者数、延べ約2万人超。 著書:『仕事は辞めない!働く×介護 両立の教科書(日経クロスウーマン)』
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